金山ダム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/04 06:30 UTC 版)
目的
ダムの名前は所在地であり水没地でもある「金山」の名を冠した。型式は重力式コンクリートダムの内部が空洞になっている中空重力式コンクリートダムであり、北海道では唯一のものである。この型式は当時コンクリート量の節減を狙って盛んに建設されたものであるが、型枠を作成するための人件費高騰とコンクリート価格の安値安定によって現在は施工されていない。総貯水容量は約1億5,000万トンと日本有数の人造湖で、この量は北海道全道民の生活用水を約3ヶ月分賄える量に匹敵する。
目的は治水(洪水調節、不特定利水)と利水(かんがい、上水道供給、水力発電)の五つであり、多目的ダムの中では比較的用途が広い。完成以来現在に至るまで建設大臣(現在は国土交通大臣)が一貫して管理を行う特定多目的ダムの一つでもある。
治水目的はまず洪水調節については1905年(明治37年)7月の石狩川大水害を基準に毎秒1,000トンの洪水をダムによって760トンカットし、下流には毎秒240トンを放流する。なお、1981年(昭和56年)8月の石狩川大水害を契機に空知川中流部に1999年(平成11年)建設された滝里ダムと共に現在は空知川のみならず石狩川下流部の治水も担っている。利水については空知川流域の富良野・山部地域及び石狩川流域の美唄・浦臼地域の水田20,899ヘクタールと畑地7,792ヘクタールに対し5月から8月の農繁期に最大で毎秒61.94トンを供給する。上水道目的は計画当初入っていなかったがその後の人口増加によって加えられ、滝川市に日量9,400トンを供給。そして水力発電については半地下式のダム水路式発電所である金山発電所において常時12,000キロワット、最大25,000キロワットを発電し、さらに下流にある野花南発電所(野花南ダム)や芦別発電所(芦別ダム。芦別川のダムとは異なる)、奔茂尻発電所(1992年(平成4年)12月廃止)の出力を増強させる役割を有する。
河川維持放流
治水のうち不特定利水については河川維持放流を冬季以外に行っている。これはダム完成以後発電目的のために金山発電所へダムから導水した結果、ダム直下流約1.0キロメートルが完全な無水区間となり、その下流約4.1キロメートル区間が減水区間となった。このため空知川は計5.1キロメートルがいわゆる「涸れ川」となり、漁業や河川環境に深刻な影響を与えた。このため南富良野町は空知川の無水区間解消を開発局及び発電事業を管轄する北海道電力に要望していたが、1997年(平成9年)の河川法改正で河川環境の維持が重要な法目的に挙げられたことから抜本的に迫られた。
開発局は河川法改正後の翌1998年(平成10年)7月8日、北海道電力にも協力を仰ぎ4月1日から10月31日までの毎日6:00から19:00の間、毎秒0.3トンの河川維持放流水をダム直下右岸にある常用洪水吐きより放流を開始した。これによって1967年の完成以来31年もの間涸れ川になっていた空知川5.1キロメートル区間に水流が復活したのである。さらに流量を一定させるため日中行っていた放流を夜間にも実施することになった。2000年(平成12年)より実施された夜間放流は、夏季洪水調節のために確保している空き容量から治水に支障がない程度に貯水を行い、それを河川維持放流に充填するというもので、これを専門的には「弾力的管理」と呼ぶ。この弾力的管理によって7月1日から9月30日までの間、一日中放流が可能となり空知川の河川環境維持に貢献をしている。
利水と涸れ川についてはダムと環境の問題でも特に問題視され、大井川や信濃川でも地元と管理者による対策が行われたがこの金山ダムもその一例である。
- 金山ダムのページへのリンク