連続写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 04:59 UTC 版)
同相写像
連続写像は開集合の逆像が開集合となり、閉集合の逆像が閉集合となる写像であったが、それと対照的に「開集合の像が開集合となる」写像と「閉集合の像が閉集合となる」写像は、それぞれ開写像と閉写像と呼ばれる。つまり、開写像あるいは閉写像が逆写像を持てばそれは連続であり、連続写像が逆を持てばその逆写像は開かつ閉写像である[注 13]。このことから、位相空間の間の写像について以下は全て同値である。
このような写像は開集合系や近傍系といった位相的構造をも双方向に保つ[注 16]ため、位相同型写像、あるいは同相写像と呼ばれる。また、同相写像 f: X → Y が存在するとき、X と Y は互いに位相同型である、あるいは同相であるという[20]。
連続写像の定める位相
位相空間 X から(特に位相を考えない)集合 S への写像
が与えられたとき、S 上の終位相は、S の部分集合 A が開集合であるということを、f−1(A) が X の開集合であることと定めることにより定義される。S に予め位相が定められていたとき、f がその位相に関して連続となる必要十分条件は、もとの位相が S 上の終位相よりも粗いことである。従って、終位相は S 上の f を連続にする最も細かい位相となる。f が全射のとき、終位相は f の定める同値関係のもとでの商位相と自然に同一視される。
これと双対的に、集合 S から位相空間への写像 f に対し、S 上の始位相は、S の部分集合 A が開集合であることを、f(A) が X の開集合となることと定めることによって定義される。S にもともと位相が入っているとき、f がその位相に関して連続となる必要十分条件は、その位相が S 上の始位相よりも細かいことである。従って、始位相は S 上の位相として f を連続にする最も粗い位相となる。f が単射のとき S を X の部分集合と同一視すれば、S 上の始位相は X から定まる部分空間としての位相と自然に同一視される。
より一般に、集合 S が与えられたとき、任意の位相空間 X への連続写像 S → X 全体の成す集合を特定することにより、S に位相が定まる。双対的に同じことが X → S に対しても考えられる。これは普遍性の一例である。
脚注
文献
- 加藤文元『大学教養 微分積分』数研出版〈数研講座シリーズ〉、2019年11月1日。ISBN 978-4-410-15229-0。
- 杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会〈基礎数学〉、1985年4月25日。ISBN 4-13-062005-3。
- 松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店〈松坂和夫 数学入門シリーズ〉、1968年6月10日。ISBN 978-4-00-029871-1。
- Boto von Querenburg (2001), Mengentheoretische Topologie, Springer-Lehrbuch (ドイツ語) (3., neu bearbeitete und erweiterte ed.), Berlin [u. a.]: Springer-Verlag, ISBN 3-540-67790-9。
- Friedrich Hirzebruch / Winfried Scharlau (1971), Einführung in die Funktionalanalysis, Reihe "B. I.-Hochschultaschenbücher", Band Nr (ドイツ語), vol. 296, Mannheim [u. a.]: Bibliographisches Institut, ISBN 3-411-00296-4。 MR0463864
- Horst Schubert (1975), Topologie. Eine Einführung, Mathematische Leitfäden (ドイツ語) (4. ed.), Stuttgart: B. G. Teubner Verlag, ISBN 3-519-12200-6。 MR0423277
注釈
- ^ 実関数では単一の区間
- ^ ユークリッド空間上の関数では有界閉集合
- ^ 杉浦[2]も同じ等式で定義しているが、より一般にユークリッド空間について述べていることと、極限の定義が一般的な定義と僅かに異なる(同値ではない)ことに注意を要する。この記事での意味の等式に最も近い表現は命題6.5の d) である。
- ^ 一般に関数の極限を扱う際には x ≠ a であること、あるいは同じことだが、絶対値の条件が 0 < |x − a| < δ と正値をとること[4]が要求される。これは必ずしも f(a) が極限値 A と等しいとは限らず、そのような場合に |f(a) − A| < ε が成り立たない ε が存在して極限の議論の妨げになるためであった。しかし、連続関数は A = f(a) となるべきものであり、どのような正の実数 ε についても |f(a) − f(a)| = 0 < ε が自明に成り立つので、x = a を含めても条件が厳しくなることはない。そのため、f(x) の連続性は、「任意の正の実数 ε について適切な正の実数 δ をとることで、f の定義域に含まれて |x − a| < δ を満たす全ての x について |f(x) − f(a)| < ε が成り立つ」ことだとも言える[5]。
- ^
- ^ ここで、a の δ-近傍は (X, dX) におけるもの、f(a) の ε-近傍は (Y, dY) におけるものであることには注意が必要である。
- ^ 開集合全てでなく準開基に限ったとしても同値である。
- ^ 全近傍系の代わりに基本近傍系や開近傍系に限ったとしても同値である。例えば、距離空間においては各点のε-近傍の全体が基本近傍系となるので、ε-δ論法による定義は基本近傍系によるものだということもできる。
- ^ A = f−1(B) として f(clX(f−1(B))) = f(clX(A)) ⊂ clY(f(A)) = clY(f(f−1(B))) ⊂ clY(B) であることから両辺の逆像をとることで導かれる。逆の成立は B = f(A) として clX(A) ⊂ clX(f−1(f(A))) = clX(f−1(B)) ⊂ f−1(clY(B)) = f−1(clY(f(A))) であることから両辺の像をとることで確かめられる。
- ^ f−1(intY(B)) = f−1(intY(B)∁)∁ = f−1(clY(B∁))∁ ⊂ clX(f−1(B∁))∁ = intX(f−1(B∁)∁) = intX(f−1(B)) と導出される。逆の成立は clX(f−1(B)) = clX(f−1(B∁)∁) = intX(f−1(B∁))∁ ⊂ f−1(intY(B∁))∁ = f−1(clY(B)∁)∁ = f−1(clY(B)) と確認できる。
- ^ これは逆も真であり、ハウスドルフ空間の特徴づけになっている。
- ^ 特に Y がハウスドルフ空間であるときは、x を a に限りなく近づけるときの f の極限が f(a) であることだと言える。
- ^ 逆写像を持たない、つまり全単射でない写像においては、開写像と閉写像は一致するとは限らない。例えば、実数を終域とする定値写像は閉写像だが開写像ではない。ちなみに定値写像は、終域のいかなる部分集合も逆像は定義域全体か空集合のどちらかであり、どちらも開かつ閉集合であるから、必ず連続写像である。
- ^ 全単射である連続写像に対して、その逆写像は必ずしも連続でない。例えば、ある2点集合を共通の台集合とする離散空間と密着空間を考えると、台集合上の恒等写像は離散空間から密着空間への全単射連続写像となるが、逆は連続でない。ただし、定義域がコンパクト空間で終域がハウスドルフ空間ならば、連続全単射は閉写像でもあるので同相である[19]。
- ^ 両者は互いに逆の関係である。
- ^ 当然、閉集合系や開核、閉包も保つ
出典
- ^ a b c 加藤 2019, p. 71.
- ^ 杉浦 1985, 第I章 §6.
- ^ 杉浦 1985, 第I章 §6 命題6.5 d).
- ^ 加藤 2019, p. 62.
- ^ 杉浦 1985, 第I章 §6 命題6.5 c).
- ^ 加藤 2019, pp. 72–74.
- ^ 杉浦 1985, pp. 57–59.
- ^ 松坂 1968, pp. 178–182.
- ^ a b 松坂 1968, p. 185.
- ^ 松坂 1968, p. 240.
- ^ 松坂 1968, pp. 240–241.
- ^ a b 松坂 1968, p. 178.
- ^ 松坂 1968, pp. 175–176.
- ^ a b 松坂 1968, p. 246.
- ^ 松坂 1968, p. 212.
- ^ 松坂 1968, p. 196.
- ^ 松坂 1968, pp. 176–177.
- ^ 松坂 1968, p. 177.
- ^ 松坂 1968, pp. 216.
- ^ 松坂 1968, pp. 182–185.
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