蕎麦 蕎麦麺の分類

蕎麦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/18 07:38 UTC 版)

蕎麦麺の分類

製法による分類

大きく分けて人手による手打ち蕎麦と機械製麺に二分されるが、工程によっては手打ち風または手打ち式と名乗る事が出来る。ただし、ここでは便宜的に製麺業における分類に従っているが蕎麦屋には規格がない。

手打ち製麺(手打ちそば)
機械で製麺されるものに対して手作りで製麺される蕎麦。公正競争規約においては混練工程のみ機械で行うことが出来る。手打ち蕎麦を製麺する専門的な技術を習得した者を蕎麦職人(そばしょくにん)と呼ぶことがある。
機械製麺(手打ち風そば/手打ち式そば)
延し工程が単純なロールではなく包丁状の刃により麺が切り出されるなど、手打ちの工程を機械作業に置き換えた製麺機で作られた蕎麦。加水率が手打ちに近く柔らかい傾向がある。
その他の機械製麺
生地を筒状の型に入れ「ところてん/パスタ」のように押し出して製麺する等の工程で作られる製麺機で作られた蕎麦、と「素麺/冷麦」のように延ばしてから切る乾麺の蕎麦。加水率が手打ちより少なめで硬くなる傾向がある。
(参考)生めん類の表示に関する公正競争規約
第4条(特定事項の表示基準)
生めん類に、次に掲げる文言を使用する場合は、当該各号に掲げる意味により使用するものとする。
(1)「手打」
製めんに際し、原料に加水して麩質(グルテン)が形成するように混練し、熟成させた後、延棒で圧延し、包丁でめん線状に裁断すること及び熟成させた後、手作業によりめん線状に延ばし一定の長さに切断することであって、その工程をすべて手作業により行うことをいう。ただし、混練工程のみ機械で行うことができる。
(2)「手打式」及び「手打風」
製めんに際し、原料に加水して麩質(グルテン)が形成するように混練し、熟成させたのち、めん体の方向が交錯するように緩慢な方法により圧延し、包丁又は手切りに近いうす刃の切刃によって裁断することであって、その工程の全部又は一部を機械作業により行うことをいう。

蕎麦粉割合による分類

蕎麦屋で利用される単位による分類

十割蕎麦(生粉打ちそば)
読みは「じゅうわりそば」。一部地域や店舗で「とわりそば」「とかちそば」と読む場合もある。
湯を加えて蕎麦粉のデンプンの糊化を促進し、生地のまとまりをよくする。別途蕎麦粉を糊化させたものをつなぎとして使用する場合もある。その他、微細製粉により手打ち十割蕎麦をつくる方法、押し出し麺により製造する方法、粗挽き蕎麦粉の水練りにより製造する熟練の手打ち製法等がある。十割蕎麦は小麦粉を「つなぎ」に使ったいわゆる二八蕎麦よりも切れやすく、江戸時代には今のように茹でる蕎麦ではなく、蒸籠に乗せて蒸し、そのまま客に供する形の蕎麦が主流だった。現在もメニューに名を連ねている「せいろそば」はその名残である。
二八蕎麦(内二八蕎麦)
読みは「にはちそば」。蕎麦粉8:小麦粉2で打った蕎麦。名称の由来は粉の割合であるという説、または江戸時代後期に値段が16文であったことから九九の二×八からきたという説がある。名称の起源としてどちらが正しいという決め手はない。
外二八蕎麦
蕎麦粉10:小麦粉2で打った蕎麦の総称。
逆二八蕎麦
立ち食い蕎麦屋、乾めん等を指す。実際に蕎麦粉2:小麦粉8かどうかとは関係なく、自虐的な文脈で使われることがある。

製麺業界における規格による分類

大きく分けて、生めん、乾めん、即席めんの3つの区分ごとに異なる基準が存在する。蕎麦粉の割合が30%を割り込む事によって、名称を変える必要があるもの、割合の表示が必要になるもの、販売できないもの、差はあるが制約が出てくる点は共通している。※ただし、実際の製品には添加物が加わるので誤差が出てくる。

生めんの分類
  • 公正競争規約[30]により定められており、蕎麦粉が30%以上使用されていないものは「そば」と表示できない。
  • 公正マークがついていない商品はこの限りではない。
  • 品質表示基準が存在しないため、公正マーク取得にこだわらなければ制約が低い。
  • 加工食品品質表示基準[31]により、蕎麦粉が5割以上のため原材料が小麦粉、蕎麦粉の順に書かれる。
そば
原料 割合
蕎麦粉 30%以上
小麦粉 70%以下
大麦そば
原料 割合
大麦粉 30%以上
蕎麦粉 30%以上
小麦粉 40%以下
大麦めん
原料 割合
大麦粉 30%以上
蕎麦粉 30%以下
小麦粉 70%以下
冷めん/温めん
原料 割合
でん粉 15%以上
小麦粉 85%以下
蕎麦粉等
(穀粉類)
小麦粉と合計で85%以下
  • 加工食品品質表示基準により、蕎麦粉が5割以上のため原材料が蕎麦粉、小麦粉の順に書かれる。
特選品
原料 割合
蕎麦粉 50%以上
小麦粉 50%以下
信州そば/出雲そば
原料 割合
蕎麦粉 50%以上
小麦粉 50%以下
乾めんの分類
  • 乾めんのJAS規格[32]による任意の格付けのほか、乾めん類の品質表示基準[33]により蕎麦粉が30%以上使用されていないものでも「そば」と表示できる。
  • 蕎麦粉が30%以上使用されていないものは使用割合を表示しなければならない。
  • JAS規格は任意の格付けなので、現実的に取得している製品は多くない。
乾めん(そば/JAS上級品)
原料 割合
蕎麦粉 50%以上
小麦粉 50%以下
乾めん(そば/JAS標準品)
原料 割合
蕎麦粉 40%以上
小麦粉 60%以下
乾めん(そば/割合表示不要)
原料 割合
蕎麦粉 30%以上
小麦粉 70%以下
乾めん(そば/割合表示必須)
原料 割合
蕎麦粉 30%以下
小麦粉 70%以上
即席めんの分類
  • 即席めんの品質表示基準[34]、即席めんの公正競争規約[35]により定められ、蕎麦粉が30%以上使用されていないものは「そば」を表示できない。
  • 公正マークがついていない商品でも、品質表示基準には従わなければならない。
  • JAS規格は任意の格付けであるが、即席めんの規格に蕎麦粉割合の規定は存在しない。
即席めん(そば)
原料 割合
蕎麦粉 30%以上
小麦粉 70%以下
(参考)蕎麦屋における蕎麦粉割合による分類
  • いわゆる蕎麦屋にも任意登録の品質基準に蕎麦粉割合の規定が存在する[36][37][38]が、登録料が必要な点と蕎麦打ちの能力とは異なるマネジメント能力が必要になる点からか普及していない[39]
標準営業約款登録店
原料 割合
蕎麦粉 70%以上
つなぎ 30%以下
めん類飲食店営業に関する標準営業約款規程集[40]
第3条(役務の内容又は商品の品質の表示の適正化に関する事項)
営業者は、提供する役務の内容又は商品の品質について、次の各号に定めるところに従い表示するものとする。
(1) そば粉の含有率の表示
営業者が提供する「そば」は、そば粉の割合は70パーセント以上とし、その旨を店頭又は店内に表示するものとする。
(2) めん及びつゆの製法の表示
営業者が提供するめん及びつゆは、自家製であることとし、その旨を店頭又は店内に表示するものとする。
(3) 主要な商品の表示
営業者は、主要な商品の内容及びカロリーを、写真又は説明文によるメニュー表等により、店頭又は店内に表示するものとする。
(4) 調理師の表示
営業者は、調理師(調理師法(昭和33年法律第147号)第2条に規定する者をいう。)を営業施設に配置するものとし、その氏名を店内に表示するものとする。

蕎麦粉の種類による分類

「さらしなそば」(2016年2月22日撮影)
更科蕎麦(さらしなそば)
ソバの実を挽くと中心から挽かれて出てくることから、後から出てくる粉に比べて、最初に出てくる一番粉が白く上品な香りを持つ。一番粉を使用した蕎麦が「更科蕎麦」である。東京などでよく食べられる。粘りがなく、つなぎをよく使う。
田舎蕎麦(いなかそば)
蕎麦殻を挽き込んだ、黒っぽい蕎麦粉により製造された蕎麦。蕎麦の香りが強く、あまりつゆをつけずに食べる。長野県や愛知県、近畿、山村でよく食べられる。つなぎに山芋などを使う。
藪系の蕎麦
抜き実の挽きぐるみ、つまり緑色の甘皮部分を挽き込んだ鶯色の蕎麦。種皮の緑色が鮮やかな「藪」系の蕎麦はその香りが高い。

蕎麦粉の「産地」(日本国内・世界)による分類

信州開田高原産・北海道産・北米産・中国産など、蕎麦粉の産地・地方・国の違い等で区分。

ソバ品種による分類

蕎麦粉の原料はソバ(学名:Fagopyrum esculentum)が通常であるが、2000年代以降は健康ブームで注目されているダッタンソバ(学名:Fagopyrum tataricum)が用いられることもある。

麺の状態による分類

生麺(なまめん)・生そば(なまそば)
そばを切った後に、打ち粉をまぶした状態で、紙包みやポリ袋、プラスチック容器などに入れて売られる。後述の生蕎麦(きそば)とは異なる。
ゆで麺・ゆでそば
生麺を茹でて、食べられる状態にし、ポリ袋に入れて売られる。ネギわさびなどの薬味つゆだしと共にプラスチック容器に入れて売られる場合もある。天婦羅油揚げを添付したものもある。
乾麺(かんめん)・乾そば
そばを風で乾かして、一定の長さの棒状に切り揃え、包装して売られる。
冷凍麺・冷凍そば
長期保存が利くように冷凍されている麺。茹でる時間も短時間で済む。業務用での流通が多い。また最近では1人前などの分量でスーパーマーケットコンビニエンスストアで売られており、つゆ・だしとセットにしたものもある。
インスタント麺・インスタントそば
カップ麺・カップそば・インスタント袋そばなどがある。
で揚げて熱湯で戻るように加工されている油揚げ麺[41]と、加熱後油で揚げず熱風乾燥させたノンフライ麺[42]がある。麺の表面に味をつけているものもある[41]

その他の分類

新蕎麦(しんそば)

秋に収穫されたソバの実を使用して、秋から冬の初頭にかけて作られた旬の蕎麦は、香りが高く、味も格別であることから新蕎麦または秋新(あきしん)と呼び、初夏から夏に収穫されたソバの実で作られた蕎麦は、秋新と類別して夏新(なつしん)と呼ぶ(ソバ#日本での栽培も参照)。夏新は新蕎麦(秋新)と比較して香りと味がやや劣るとされるが、そもそも蕎麦にとって夏は“夏蕎麦は犬さえ食わぬ”というような諺が示すように栽培技術や冷蔵技術が発達していなかった時代、端境期で保存状態も悪いため香りが抜けてつなぎの割合が増加傾向になる最も劣化する季節であった[43][44]。そこで、収穫したばかりの鮮度の高い粉を使い出来るだけ生粉打ちに近い蕎麦を提供するための工夫をしていると成分表示として謳っているのが夏新であり、秋新に匹敵するという意味はない。同じ季節に競合して提供しないものを比較する事は本質的に意味がない。さらに季節毎の品質のバラつきを抑えるための手段として、日本と気候の正反対のオーストラリアで栽培して春に収穫された蕎麦粉を用いて維持に務める店もあるほどである。秋の風物詩としての秋新の価値は変わるものではないが、そうした努力と技術革新により昔ほど品質のバラつきがなくなっているため、いざ新蕎麦を食べたときに拍子抜けする事があっても不思議ではない。製粉工程の乾燥が強すぎた蕎麦粉や、管理が悪く乾燥した蕎麦粉では秋新であっても低いレベルで品質がバラつかない事も考えられる。

陳蕎麦(ひねそば)

新蕎麦とは正反対の旬が過ぎてから端境期までの蕎麦が、栽培技術や冷蔵技術が発達していなかった時代に名付けられた。陳には「劣る、古い」という意味がある。ところが冷蔵技術の発達した昨今では、玄ソバの保存技術の革新により熟成された蕎麦として新蕎麦よりも評価する流れもあるが、もともと江戸時代の記録に「暑中寒晒蕎麦」という将軍家に諏訪の高島藩と伊那の高遠藩の2藩が献上していた夏の土用に食べる特別な蕎麦があり、歴史的にも厳格な管理の下で製造された夏蕎麦は陳蕎麦とは言えない高級品であった事が伺える[45][46]。ちなみに「寒晒し蕎麦」のように水浸漬させた玄ソバはGABA(γ-アミノ酪酸)含有量が増加するという研究結果がある[47][48]三輪素麺では、2年ものを「古(ひね)」、3年物を「大古(おおひね)」と呼び優れたものとして扱っていたが[49]、現代は蕎麦も技術の革新により実需者の意識次第で、蕎麦粉の鮮度を保つための環境が簡単に整えられるため、季節毎の品質のバラつきはなくなり新蕎麦を頂点とした時代の区別が通用しなくなってきている。

生蕎麦(きそば)

変体仮名で書かれた「生そば」の看板

生蕎麦は現在では、二八蕎麦、十割蕎麦、五割蕎麦他の「蕎麦屋の蕎麦全般」を指す[50][51]。蕎麦屋で生蕎麦の語が使われるのは、上等な蕎麦を生蕎麦と呼んでいた頃の名残である。元来は「そば粉だけで打ったそば・そば粉に少量のつなぎを加えただけのそば・小麦粉などの混ぜものが少ないそば」を意味するものだった[52][53][54][55]。しかし、江戸時代中期以降、小麦粉をつなぎとして使用し始めたことにより、二八蕎麦が一般大衆化したため、高級店が品質の良さを強調するキャッチフレーズとして「生蕎麦」を使うようになった[55][56]。その後、幕末頃には「生蕎麦」の指す範囲は拡大し、二八蕎麦にも使われるようになった。現在では、蕎麦粉の割合が明らかに低いと思われる駅前の低価格立ち食い蕎麦店等でも「きそば」のぼりは堂々と掲げられており、その意味は希薄化してしまっている。そのため、蕎麦粉だけの蕎麦を売りにしている蕎麦屋は、分かりやすく表示するため「十割蕎麦」あるいは「生粉打ちそば」という表現を用いるのが一般的である[50]。また「茹でる前の生麺」、「生麺・ゆで麺など水分を多く含んだ麺」という解釈もあるが、この場合「きそば」ではなく「なまそば(生そば)」と異称される。生蕎麦の看板や暖簾は、現代での変体仮名の用途の代表例として引用されることがある[57]




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