自動装填装置 要塞砲

自動装填装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/23 07:56 UTC 版)

要塞砲

自動装填には動力が必要になるので、本来なら野戦にはむかない装備である。艦艇や戦車なら動力を得ることはたやすいし、また、内燃機関の装備が容易な現代では動力の有無はあまり問題にならないが、そうでは無い時代には大きな問題となった。このため機力装填装置を備えられる陸砲は設備が完備した要塞に備えられた要塞砲が多かった。同時に要塞は機動性を備える必要が無く、威力の増大を求めて弾薬が巨大化していったため、砲弾の装填を機力で行う必然性があったといえるだろう。

日本の要塞には軍縮で退役した戦艦艦砲を砲塔ごと再利用した要塞砲があったが、当然これらには装填装置が最初から備わっていた。

自走砲

榴弾砲

バンドカノン155mm自走榴弾砲
弾薬を7発1組のクリップで纏めて運用する独自性の強い装填方式をとっており、1クリップ48秒という発射速度と、給弾の自動化を実現している。
AUF1(AMX-30 GCT)
AMX-30の車体にGCT(Grande Cadence de Tir)システム搭載したもの。
GCTシステムは射撃に関わる装置が全て砲塔内に収まっており、砲塔が巨大化している。これは、車体は砲塔を載せられるものであればどんな車両でも流用できるという柔軟性を持つ。8発/minで射撃可能。
75式自走155mmりゅう弾砲
自動装填装置はリボルバー式マガジンを使用。マガジンへの装弾数は18発だが、装薬は人力での別途装填であるため、厳密には自動装填ではない。6発/minで射撃可能。
2S19 MSTA-S
T-80の車体に、榴弾砲の射撃に必要な装置を全て収めた砲塔を搭載したもの。7発/minで射撃可能。
99式自走155mmりゅう弾砲
75式と違い任意の角度で自動装填が行え、99式弾薬給弾車を連結すると自動で砲弾の補給を行うことができる。6発/minで射撃可能。
PzH2000
ヴェクマン社が開発した電動式の自動装填装置搭載し、即応射撃能力に優れている。8発/minで射撃可能。

低反動砲

M1128 ストライカーMGS
ジェネラル・ダイナミクス社製M68A1E4 105mm砲を搭載したストライカー装甲車カーチス・ライト社製の自動装填装置を搭載しており、10発/minで射撃可能。

迫撃砲

2S9ノーナ-S 120mm自走砲
BMD-1空挺戦闘車の派生型で、2A60 120mm直射・迫撃両用砲を搭載する。7発/minで射撃可能。

ミサイル

ミサイルの弾体は推進装置を含むために巨大であり、主に戦後に開発が進められたこともあって、当初から自動装填装置が採用されていた。アメリカ海軍テリア対空ミサイルシステムでは、ミサイルが弾薬庫から水平にランチャーに装填されるMk.10がレイヒ級ミサイル巡洋艦や「ベインブリッジ」などに装備された。

のちにはスタンダード対空ミサイルを円形のドラム型弾庫に縦に納め、ミサイルを下から弾庫上のランチャーに装填する単装のMk.13ランチャーがオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートなどに採用され、同じ機構で連装のMk.26がキッド級ミサイル駆逐艦タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦(初期建造艦)などに採用された。

なお、ランチャーと弾薬庫を一体化したタイプのVLSは、戦闘中の再装填は考慮されていないため、機構としての自動装填装置は備えられていない。

共同開発のローランド地対空ミサイルシステムは車体に予備ミサイルを搭載しており、ミサイル発射後は自動でミサイルがランチャーに再装填される。


  1. ^ ラマー(Rammer)とは砲弾を砲へ押しこむ装置、またはそのアーム部分を指す。前装式の銃砲のみならず、後装式の火砲でも用いられる。人力装填の時代にはただの木の棒だった。火縄銃などの前装銃では「かるか」、または槊杖と呼ばれる
  2. ^ Ivo Pejčoch, Oldřich Pejs - Obrněná technika 6, Střední Evropa 1919-1945 I.část, vydavateľstvo ARES, Praha 2005
  3. ^ Vladimír Francev, Charles K. Kliment - Československá obrněná vozidla 1918-1948, vydavateľstvo ARES, II. vydanie, Praha 2004
  4. ^ 斎木伸生「M4からM26へ」『PANZER』1993年2月号、54-55頁。
  5. ^ 古峰文三「ドキュメント 日本戦車開発構想史」『[歴史群像]太平洋戦史シリーズVol.34 帝国陸軍 戦車と砲戦車 欧米に比肩する日本の対戦車戦闘車両の全容』学研, 2002年, 110頁
  6. ^ 鈴木邦宏「第4章 三式、四式、五式中戦車 Chapter 4 : Type 3, 4 and 5 Medium Tanks」『ストライクアンドタクティカルマガジン2010年11号別冊2010年10月13日(水)発売・第7巻第9号(通巻48号) 日本陸軍の戦車 IMPERIAL JAPANESE ARMY TANKS 完全国産による鉄獅子、その栄光の開発史』カマド・SAT編集部, 199頁・203頁
  7. ^ 国本康文「TECHNICAL REPORT 日本の戦車砲・対戦車砲 PART-2 長砲身75ミリ戦車砲」『[歴史群像]太平洋戦史シリーズVol.34 帝国陸軍 戦車と砲戦車 欧米に比肩する日本の対戦車戦闘車両の全容』学研, 2002年, 134頁
  8. ^ なお、日本の文献ではT-64より採用されたソビエト/ロシア戦車の自動装填装置は"コルジナ"及び"カセトカ"の名称で記述されていることがあるが、これらはどれも砲弾の収納方式や装填方式からつけられた通称であり、そのような制式名称の自動装填装置が存在しているわけではない。「コルジナ(корзина)」は"籠"、「カセトカ(кассетка)は"小箱のようなもの" "個別に分けられたもの"を意味する(カセータ(кассета):の縮小辞形)ロシア語で、それぞれ「弾薬を砲塔バスケットに搭載する」「装薬カートリッジを個別に装填する」ことから生まれた通称と見られる
  9. ^ 防衛生産委員会特報 2014, p. 60.


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