系 (自然科学) 熱力学的な分類

系 (自然科学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/17 20:58 UTC 版)

熱力学的な分類

熱力学の観点では、系は外界との間で許されるエネルギーの移動の形態から分類される。 熱力学において考察されるエネルギーの移動の形態は、仕事、および物質(質量)の移動に伴うエネルギーの移動である。ここでいう仕事とは、ピストン-シリンダ系のような変位の積として表される機械的な仕事だけではなく、電気的なエネルギーの移動など、熱力学に依らずに考察が可能なエネルギーの移動である。質量の移動とは、例えばガソリンエンジンであれば、燃焼室へのガソリン空気の吸入や、燃焼後の排気などである。ガソリンなどの燃料は、化学的なエネルギーを内在しており、燃焼に伴ってそれが放出される。すなわちガソリンの吸入はエネルギーの流入である。 燃焼という急激な化学反応を伴う状況に限らず、部屋の換気でも室内外の温度や湿度の異なる空気の交換に伴いエネルギーが移動する。

外界との間で物質の移動を許す系は開放系(開いた系、open system)、物質の移動は許さない系は閉鎖系(閉じた系、closed system)と呼ばれる。閉鎖系のうち物質の移動に加えて熱によるエネルギーの移動も許さない系は断熱系adiabatic system)と呼ばれる。さらに断熱系のうち、物質の移動や熱に加えて、仕事によるエネルギーの移動も許さない系、つまり、あらゆるエネルギーの移動を許さない系は孤立系isolated system)と呼ばれる。 外界とのエネルギーの移動に制限がある系では、その制限に応じた法則が成り立ち、孤立系ではエネルギー保存則、断熱系ではエントロピー増大則、閉鎖系では質量保存則[注 1]が成り立つ。

系が熱を交換する外界は熱浴(heat bath)と呼ばれ、質量を交換する外界は粒子浴(particle bath)と呼ばれる。

容器につめられた気体集合の場合もあれば、特定の溶液を受けた・与えた物体または細胞内、機関内などの場合もある。

開放系
閉鎖系
  • 大きな水槽の中に沈めた、栓の閉まったフラスコ
  • 温室
  • 特定ののみを外界と受けたり与えたりする物体
断熱系
  • 断熱材で覆われたフラスコ

注釈

  1. ^ 相対論的な質量のエネルギーへの転換は考えない場合に限る。
  2. ^ 生物の場合、熱力学的に見ると全て開放系に属しており、ホメオスタシスや運動の自律性をはじめとした生物の基本特性のうちの幾つかは、これを基礎としている[4]

出典

  1. ^ Peter Atkins; Julio de Paula 著、千原秀昭, 稲葉章 訳 『アトキンス物理化学要論』(4版)東京化学同人、2007年、37頁。ISBN 978-4-8079-0649-9 
  2. ^ 土井勝 『物理学入門』日科技連、2005年、46頁。ISBN 4-8171-9068-X 
  3. ^ 清水明 『新版 量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために―』サイエンス社、2004年。ISBN 4-7819-1062-9 
  4. ^ 生物学辞典(岩波書店


「系 (自然科学)」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「系 (自然科学)」の関連用語

系 (自然科学)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



系 (自然科学)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの系 (自然科学) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS