第X因子 生理学

第X因子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/09 22:49 UTC 版)

生理学

第X因子は肝臓ビタミンK依存的に合成される。

第X因子は、いずれもセリンプロテアーゼである内因系テンナーゼ(intrinsic Xase)または外因系テンナーゼ(extrinsic Xase)によって活性化されて第Xa因子となる。内因系テンナーゼとは、第IX因子と、その補因子である第VIII因子などが複合体を形成したものである。一方、外因系テンナーゼとは第VII因子と、その補因子である組織因子が複合体を形成したものである。したがって、第X因子は外因系と内因系の共通経路の開始点である。

第X因子はプロトロンビンを2箇所で切断する。1箇所はArg-Thrの結合であり、もう1箇所はArg-Ileの結合である。これにより、プロトロンビンは活性型のトロンビンとなる。この過程は、第Xa因子が補因子である第Va因子と共にプロトロンビナーゼ複合体を形成することで速やかに進行する。

第Xa因子は、セリンプロテアーゼインヒビターであるプロテインZ依存性プロテアーゼインヒビター(英語)(ZPI)によって不活化される。ZPIの第Xa因子に対する親和性は、プロテインZ(英語)存在下で1000倍以上になるが、第XI因子の不活化についてはプロテインZに非依存的である。プロテインZ欠損症においては第Xa因子の活性が亢進し、血栓形成傾向になる。

第X因子の半減期は40時間から45時間ほどである。

第Xa因子の構造

ヒト第Xa因子の結晶構造が最初に報告されたのは1993年である。今日では、第Xa因子と様々な阻害因子の複合体について191通りの結晶構造がタンパク質データバンクに蓄積されている。

第Xa因子の活性部位は4つのサブポケットから成り、S1, S2, S3, S4と呼ばれている。S1サブポケットは基質の選択性や基質との結合を担う部位である。S2サブポケットは小さく浅い部分であり、形態はよくわかっていないが、S4と一体化するらしい。S3サブポケットはS1の辺縁にあり、溶媒に対して露出している。S4サブポケットには3つのリガンド結合部位があり、"hydrophobic box", "cationic hole" および the water site である。

多くの第Xa因子阻害因子はL字型の構造をしている。一方の部位がS1のAsp189, Ser195, Tyr228の陰性アミノ酸残基の部位を占め、他方がS4のTyr99, Phe174, Trp215の芳香族アミノ酸残基の部分を占める。そして典型的には、両者を強固なリンカーが橋渡ししている[5]

遺伝子

ヒト第X因子の遺伝子は、13番染色体(13q34)にコードされている。




  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000126218 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000031444 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ Presentation on Direct Factor Xa Inhibitors
  6. ^ Mark Brooker (2008): "Registry of Clotting Factor Concentrates". Eighth Edition, 2008, World Federation of Hemophilia
  7. ^ BPL Announces: Strong progress on the world's first licensed Factor X product
  8. ^ Hoffman M; Monroe MM (2007). “Coagulation 2006: A Modern View of Hemostasis”. Hematology and Oncology Clinics of North America 21 (1): 1–11. doi:10.1016/j.hoc.2006.11.004. PMID 17258114. 
  9. ^ 青崎正彦 『循環器科』10号、1981年、218頁。
  10. ^ Golan, D. E. (2012). Principles of Pharmacology The Pathophysiologic Basis of Drug Therapy. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins. p. 387. ISBN 978-1-4511-1805-6 
  11. ^ Turpie AG (2007). “Oral, Direct Factor Xa Inhibitors in Development for the Prevention and Treatment of Thromboembolic Diseases”. Arterioscler Thromb Vasc Biol 27 (6): 1238–47. doi:10.1161/ATVBAHA.107.139402. PMID 17379841. 
  12. ^ Broze, G J; Warren L A; Novotny W F; Higuchi D A; Girard J J; Miletich J P (Feb 1988). “The lipoprotein-associated coagulation inhibitor that inhibits the factor VII-tissue factor complex also inhibits factor Xa: insight into its possible mechanism of action”. Blood (UNITED STATES) 71 (2): 335–43. ISSN 0006-4971. PMID 3422166. 





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