沖国大米軍ヘリ墜落事件 概要

沖国大米軍ヘリ墜落事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/08 06:21 UTC 版)

概要

2004年(平成16年)8月13日午後2時15分頃、アメリカ軍普天間基地所属の大型輸送ヘリコプターCH-53Dが訓練中にコントロールを失い、沖縄国際大学1号館北側に接触、墜落、炎上した。搭乗していた乗員3名は負傷したが、1号館内にいた大学職員20数名、他民間人に負傷者は出なかった。この墜落事故により同大学は電話インターネット回線等を切断され、また接触した1号館はローターによる損傷と炎・ススによる被害を受け、またその周辺の木々も焼かれてしまった。このため一号館は、翌2005年平成17年)7月30日までに取り壊され(その後汚染土壌も除去された)、2006年平成18年)11月11日に再建工事が竣工した。

沖縄県で住宅地にアメリカ軍のヘリコプターが墜落したのは1972年昭和47年)の復帰後初めてのことであった。近くの民家やガソリンスタンド保育所などにヘリコプターの部品が落下したこともあり、事故に対しては宜野湾市をはじめとした沖縄県内の各方面から非難が相次いだ。

墜落直後の米軍の対応

事故直後、消火作業が終わった後にアメリカ軍が現場を封鎖し、事故を起こした機体を搬出するまで日本の警察消防行政・大学関係者が現場に一切立ち入れなかったことは反発を招いた。この米軍と日本政府の対応は、日米地位協定締結とともにつくられたいわゆる「合意議事録」の、場所を問わずに米軍の財産に対する捜査権が日本にないとする決まりによるものであった[1]。さらに当該機のローターブレードには氷結などによる亀裂・劣化を検出するために放射性物質であるストロンチウム90が1個ずつ(CH-53Dのローターブレードは6枚なので合計6個)のステンレス容器に納められており、そのうちの1つが今回の事故で機体の燃焼により損壊し放射能汚染を引き起こした疑いが持たれている[2]。ただし、米国大使館は報道機関に対して、ストロンチウム90は機体の燃焼、熔解で気化した可能性が高いと回答している。そして、アメリカ軍によって土壌や機体は回収されてしまったことで詳細を解明することは困難になった。

事故原因

日米合同の事故分科委員会は、「回転翼の後部ローターを接ぐボルトに重要な部品を装着していなかった整備ミスが事故発生の原因である」との調査報告書を提出した。

アメリカ側は整備員がヘリコプターの回転翼の角度を調節する駆動部と油圧システムとを接続するボルトに装着すべき割りピンの取り付けを怠ったため、飛行中にそのボルトが抜け落ち、後部の回転翼が操縦不能に陥ったと説明している[3]


  1. ^ 前泊博盛; 明田川融; 石山永一郎; 矢部宏治 (2013). 本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」. 創元社. pp. 34,88~94. ISBN 9784422300528 
  2. ^ 京都大学の小出裕章助教による主張。
  3. ^ ヘリ墜落、整備ミスが原因[リンク切れ]
  4. ^ 伊勢崎賢治; 布施祐仁 (2021). 文庫増補版 主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿. 集英社. pp. 124~129. ISBN 9784087443127 
  5. ^ 防衛省 (2007)『防衛施設庁史』pp.330~333 防衛施設庁史編さん委員会 (国立国会図書館デジタルコレクション)
  6. ^ “日米政府「迅速な立ち入り」合意 米軍機事故で指針改定 米側裁量は残る”. 琉球新報. (2019年7月26日). https://ryukyushimpo.jp/news/entry-960651.html 
  7. ^ “日米ガイドライン改正で米軍機事故現場に日本側の立ち入り可能に”. 産経新聞. (2019年7月25日). https://www.sankei.com/article/20190725-2TROIP2WVFL5ZLDP4MGUXDTJ24/ 






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