正教会 教会

正教会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/25 01:14 UTC 版)

教会

全世界の組織

基本構成

正教会は上記4つの古代総主教庁(コンスタンティノープル総主教庁アレクサンドリア総主教庁アンティオキア総主教庁エルサレム総主教庁)のほか、独立正教会自治正教会の数々で構成されている[15]

基本的に総主教達は平等である[17]

独立正教会自治正教会首座主教総主教府主教大主教のいずれかがその任にあたる)は「同格者中の第一人者」として、他の主教達に比べて若干の特権を持って居る。しかし首座主教といえども、他の主教達・主教会議の同意が無ければ独断では行動できない(聖使徒規則34条)[18]

独立教会・自治教会

ニコライ堂日本正教会首座主教座大聖堂、東京都千代田区

各独立教会・各自治教会には統括する首座主教が居るが、それぞれの教会組織・首座主教に歴史的な尊敬の度合いの違いはあっても権威の優劣は存在しない。カトリック教会におけるローマ教皇をトップとするような組織構成をとらず、各地域の独立教会・自治教会が、正教信仰と使徒時代以来の教会の姿を分かち合って緩やかに結びつき、正教会としての一致を保っている[10]

各教会が区別されながら一つに一致しているのは、「区別と一致」である至聖三者三位一体の神)の姿が教会に映し出されているものと理解される[19]。こうした教会の現状は、歴史上、教会共同体が拡大するにつれ、母体となる母教会から子教会が生まれ出るというプロセスを経て形成された。「母教会」「子教会」「姉妹教会」という表現が使われる[20]

独立正教会自治正教会の中には、正教会に複数ある総主教庁からの承認が一部のみにとどまっているものがある。たとえばエストニア使徒正教会[注 3]ウクライナ正教会[注 4]は、コンスタンティノープル総主教庁からは自治正教会/独立正教会として承認されているが、モスクワ総主教庁からは承認を得られていない。逆に日本正教会はモスクワ総主教庁からは自治正教会として承認されているが、コンスタンティノープル総主教庁からは自治正教会としては承認を得られていない[15]。ただしこれらの場合、論点になるのは当該教会の地位についてであって、お互いに正教会としては承認し合い、交流も行われている(例:日本正教会の他正教会との交流)。

また、20世紀末からアンティオキア総主教庁およびロシア正教会自主管理教会という教会組織の種別が設けられている。

これらのほかに、マケドニア正教会モンテネグロ正教会など、上記の正教会の組織からは承認されていない教会組織がある。これらの教会との交流をどのようにするかについては、それぞれの正教会組織において個別に判断されており、全世界の正教会に共通する統一見解は無い。



注釈

  1. ^ 南極大陸にも正教会がある。リラの聖イオアン聖堂を参照。南極圏に範囲を拡大すればキングジョージ島至聖三者聖堂 (南極)がある。
  2. ^ ローマ・カトリックの側に立った見解においては「最も古いローマ・カトリック教会西方教会)から東方正教会が分離した」となる。正教側の見解はこれと異なっている。少なくとも歴史上、ローマ教皇が東方教会に対して西方教会に対するのと同じような権限を行使し得た史実は無い(逆に東方の総主教が西方に対して一方的権限を行使したことも無い)。平等な総主教達の中からローマ総主教(教皇)が東方から分かれて行った、というのが正教会における認識である。このように、東西教会のいずれも、自らこそを正統であると自認している。東西両教会は8世紀から13世紀にかけて長い時間を経て差異を深め分裂に至った。詳細は東西教会の分裂を参照。
  3. ^ コンスタンティノープル総主教庁庇護下の自治正教会であるエストニア使徒正教会の他に、モスクワ総主教庁庇護下に自主管理教会としてのエストニア正教会がある。
  4. ^ 2018年ウクライナ正教会・キエフ総主教庁ウクライナ独立正教会が合同して誕生した新生ウクライナ正教会が、コンスタンティノープル総主教庁から独立を承認され、2019年にコンスタンティノープル総主教庁から独立正教会としての承認を得た。
  5. ^ 正教会においては「聖書は聖伝の中核」と捉える。これに対し、カトリック教会は「聖書と聖伝を同じく尊敬すべき」とする。プロテスタントには、聖書以外の伝承も重視する者もおり一概には言えないが、傾向として基本的には「聖書のみ」の姿勢をとる。
  6. ^ 信仰について、「その人の意志による」とはしない教派もある。たとえば予定説の立場をとる者は「その人の意志による」といった文言・考えを認めない。
  7. ^ 11世紀頃には「神聖にして正統普遍なる使徒の東方教会」と称していたとする説もある[32]
  8. ^ καθολικός…「カソリコス」は現代ギリシャ語転写。古典ギリシャ語再建音では「カトリコス」。

出典

  1. ^ 至聖三者(三位一体)のイコン - 大阪ハリストス正教会のページ
  2. ^ エフェス書 1:23を根拠とする。Глава IX. Два аспекта Церкви - Очерк мистического богословия Восточной Церкви - Владимир Лосскийウラジーミル・ロースキイ
  3. ^ a b 信仰-教会:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  4. ^ a b c Orthodox Ecclesiology in Outline by Fr. George Dragas
  5. ^ Γ. Η Τριαδολογική βάση της Εκκλησιολογίας (ギリシア語) C. The Trinitarian basis of Ecclesiology (英語)Σημειώσεις από τις παραδόσεις τού καθηγητού Ι. Δ. Ζηζιούλαより)
  6. ^ a b トマス・ホプコ著・イオアン小野貞治訳『正教入門シリーズ2 奉神礼』14頁・17頁、西日本主教区(日本正教会)
  7. ^ a b OCA - The Orthodox Faith - Volume II - Worship - The Sacraments - The Sacraments
  8. ^ a b OCA - The Orthodox Faith - Volume II - Worship - The Sacraments - Holy Eucharist
  9. ^ a b c 日本正教会|ハリストス正教会 The Orthodox Church in Japan
  10. ^ a b c d e f g 正教会とは:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  11. ^ 『正教会の手引き』8頁 - 11頁
  12. ^ OCA - Q&A - Greek Orthodox and Russian Orthodox - Orthodox Church in Americaのページ。(英語)
  13. ^ a b 正教会(ギリシャ正教:東方正教会)・ニコライ堂について よくある質問
  14. ^ This is not true. For example, the Russian Orthodox Church had been a metropolitanate of the Patriarchate of Constantinople for a few centuries since its establishment in 988. Eventually she received independence (autocephaly) in 1589, and it is very important to note that this independence was received in a strict accordance with the Orthodox Canon Law, which is essential for all Canonical Churches. It clearly states the difference between an autocephaly and schism. Please see Autocephaly of the Russian Church for reference.
  15. ^ a b c "The Blackwell Dictionary of Eastern Christianity" Wiley-Blackwell; New edition (2001/12/5), p169 - p170, ISBN 9780631232032
  16. ^ CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Eastern Schism
  17. ^ a b 高橋(1980) p94
  18. ^ クレマン(1977) p104
  19. ^ 『正教会の手引き』6頁
  20. ^ a b c d 高橋(1980) p80 - p82
  21. ^ 府主教ダニイル主代郁夫『2009年 復活大祭』正教時報 2009年4月号、7頁
  22. ^ a b c d e 教え-聖伝:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  23. ^ ハリストス復活!実に復活!名古屋ハリストス正教会内のページ)
  24. ^ 『正教要理』18頁 - 19頁、日本ハリストス正教会教団 昭和55年12月12日第1刷
  25. ^ Scripture and Tradition | Antiochian Orthodox Christian Archdiocese
  26. ^ 『正教要理』2頁 - 5頁、日本ハリストス正教会教団 昭和55年12月12日第1刷
  27. ^ 『正教要理』20頁、日本ハリストス正教会教団 昭和55年12月12日第1刷
  28. ^ カレンダー>2023年 斎の期間”. 日本ハリストス正教会教団 東京復活大聖堂公式サイト. 2023年7月17日閲覧。
  29. ^ First among Equals; Greek Orthodox Archdiocese of America
  30. ^ Bases of the Social Concept of the Russian Orthodox Church
  31. ^ Politics in Orthodox Christianity
  32. ^ 尚樹啓太郎『ビザンツ帝国史』1999年 東海大学出版会 P522より
  33. ^ 高橋保行『ギリシャ正教』(講談社学術文庫)、1980年。ISBN 4-06-158500-2
  34. ^ a b c d OCA - The Orthodox Faith - Volume I - Doctrine - The Symbol of Faith - Church
  35. ^ パーヴェル・エフドキーモフ著、古谷 功訳『ロシア思想におけるキリスト』129頁 - 130頁(1983年12月 あかし書房)ISBN 4870138093 においてアレクセイ・ホミャコーフ1804年 - 1860年)の考察として記述
  36. ^ かたち-聖職者と修道士:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  37. ^ 高橋(1980) p82 - p84
  38. ^ トマス・ホプコ著・イオアン小野貞治訳『正教入門シリーズ2 奉神礼』25頁、西日本主教区(日本正教会)
  39. ^ a b c Ιερά Παράδοση - OrthodoxWiki
  40. ^ Sfânta Tradiție - OrthodoxWiki
  41. ^ a b OCA - The Orthodox Faith - Volume I - Doctrine - Sources of Christian Doctrine - Tradition
  42. ^ a b Священное Предание 《Закон Божий》
  43. ^ The Attributes of the Church, by St. Justin Popovich - ArchangelsBooks.com
  44. ^ Introduction: What Is The Greek Orthodox Church? Greek Orthodox Archdiocese of America
  45. ^ Священное Предание (АЗБУКА ВЕРЫ、司祭:オリェグ・ダヴィデニコフ)
  46. ^ Tradition in the Orthodox Church; Greek Orthodox Archdiocese of America
  47. ^ 教え-生神女マリヤ、聖人、聖師父:日本正教会 The Orthodox Church in Japan






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