数理モデル 数学的な分類

数理モデル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 14:11 UTC 版)

数学的な分類

線型か非線型か

数理モデルは多くの場合、変数を含んでいる。この変数に作用する演算子線型である場合は、モデルは線型だといわれる。線型な場合、重ね合わせの原理により、の発展を独立なモードに分解して考えることができる。要素還元的な方法が非常にうまく行くのは、モデルが線型であり、システムのふるまいが要素のふるまいに分解することができる線型な場合である。その基礎には線型演算子スペクトル分解がある。例えば、弦の振動や熱の拡散過程の場合、熱の分布をフーリエ変換し、それぞれの波数のモードに分解すれば、各々独立に方程式に従うので相互作用を無視することができる。たくさんのばねとおもりをつなげたような系を考えてもやはり線型連立常微分方程式となり、同様である。

一方、非線型の場合は、方程式が非常にシンプルな場合でも系の発展にカオスなどの複雑な状況が生じることがあることが知られている。非線型の微分方程式は一般的には解析的に解けない。(cf.可積分系ソリトン)

決定論的か確率過程か

システムの発展を記述するときに、その発展が直前の状態によって完全に決定されるような決定論的な枠組みを用いるか、発展に確率的な要素を取り込むかの違いがある。常微分方程式偏微分方程式によるモデル化は決定論的なものにあたる。(解の存在と一意性が保障されているような)微分方程式で記述すれば、状態の発展は初期値のみによって決まる。一方、マルコフ過程確率微分方程式マスター方程式での記述は、確率的な過程を取り込む場合にあたる。

動的か静的か

時間による発展を取り込むか取り込まないかで、動的か静的かに分類される。例えば典型的な動的なモデルとして、微分方程式差分方程式によるものが挙げられる。また静的なモデルとして、系の状態を最適化問題の極値として与えるものを指し示すことができる。


注釈

  1. ^ 生物においては数理モデルは全く使えない」ということではない。例えばホジキンハクスレイ方程式英語版のような華々しい例外は存在する。

出典

  1. ^ 『情報 : 東京大学教養学部テキスト』 川合慧編、東京大学出版会、2006年。ISBN 4-13-062451-2
  2. ^ 小形正男 『振動・波動』 阿部龍蔵・川村清監修、裳華房〈裳華房テキストシリーズ : 物理学〉、1999年。ISBN 4-7853-2088-5
  3. ^ 大野克嗣『非線形な世界』東京大学出版会、2009年、127頁。ISBN 978-4-13-063352-9 
  4. ^ 蔵本由紀・蔵本由紀『散逸構造とカオス』岩波書店 (2000) ISBN 978-4000067508
  5. ^ 牧島邦夫・小森尚志訳 『協同現象の数理 — 物理,生物,化学的系における自律形成』 東海大学出版会 (1981) ISBN 4486005228, Synergetics: An Introduction Nonequilibrium Phase Transitions and Self-organization in Physics, Chemistry and Biology
  6. ^ 高木隆司訳 『自然の造形と社会の秩序』 東海大学出版会 (1987) ISBN 4486008464, Erfolgsgeheimnisse der Natur: Synergetik, die Lehre vom Zusammenwirken.





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