惑星軌道の永年変化 惑星軌道の永年変化

惑星軌道の永年変化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/04 03:38 UTC 版)

惑星軌道の永年変化

VSOP82

ピエール・ブレタニョン英語版1982年、VSOP82として知られるこの理論の最初期版を完成させた。 しかし、長周期の変動により、この理論は100万年ほど(もっと高い精度ではたった1000年)先までしか適用できないと考えられている。

どんな理論でも、主な問題は摂動の大きさが惑星の質量の関数なことである[注 2]。惑星の質量は、各惑星の月の周期や、惑星近傍を通過する宇宙機の重力による軌道変化を観測することで求められる。観測が増えるほど、精度は増していく。短周期(2、3年以下)の摂動は非常に簡単かつ精度よく求めることができる。しかし、精度のよい観測が行なわれてきた期間はまだまだ短いため、長周期(数年から数世紀)の摂動についてはほぼ定数と見分けがつかない程度のデータしかなく、これを予測することはより難しい。しかし、千年紀単位で最も重要になってくるのはこれらの項である。

悪名高い例は、 the great Venus term [訳語疑問点]と the Jupiter-Saturn great inequality [訳語疑問点]である。これらの惑星の公転周期をみていると、地球の公転周期の8倍が金星の公転周期の13倍とほぼ等しく、木星の公転周期の5倍がおよそ土星の公転周期の2倍であることに気付くかもしれない。

VSOP82の実用上の問題は、長い級数が軌道要素についてのみ与えられているため、そこまでの精度が必要ない場合に、どこで級数を打ち切ってよいのかが分かりづらいことだった。VSOP87では、惑星の位置についての級数も与えられているため、この問題は解決されている。

VSOP87

VSOP87では、特に上述の長周期項への取り組みの結果、精度は向上しているが計算手法そのものはあまり変っていない。VSOP87は水星、金星、月-地球系の重心についてJ2000.0の前後4000年にわたって誤差が 1 以内の精度を保証している。同じ精度が木星と土星についてはがJ2000.0の前後2000年、天王星と海王星については前後6000年にわたって保証されている。

この精度と、自由にアクセスできることも相俟って、VSOP87は現在最も普及した惑星軌道計算ソースである。たとえば、CelestiaOrbiterにも用いられている。

他にも、極座標系だけでなく直交座標系も扱えるようになっている。摂動論では伝統的に惑星の基本軌道を下に示す6つの軌道要素[注 3]で表わす。

摂動がなければこれらの軌道要素は定数となるため、摂動の基本項とするのに理想的である。摂動を取り込むと、これらはゆっくり変動し、できるだけ多くの摂動を計算に取り込むことが望ましい。ある時刻の軌道要素が結果として得られ、これから惑星の位置を直交座標系(X,Y,Z)なり球面座標系(黄経、黄緯、日心距離)なりで計算できる。これらの日心座標はたとえば地心座標などの他の視点に容易に換算できる。座標変換には直交座標 (X,Y,Z)を用いればベクトル加算で平行移動(例えば日心から地心へ)が、行列乗算で回転(黄道座標から赤道座標)が計算できるため、多くの場合で便利である。

VSOP87は6つの表にまとめられている。

  • VSOP87
    • J2000.0を分点とする[訳語疑問点]日心黄道座標軌道要素
      • 各惑星の先述した6つの軌道要素。軌道が時間と共にどのように変化していくかを見るのに利用される。
  • VSOP87A
    • J2000.0を分点とする[訳語疑問点]日心黄道直交座標
      • VSOP87Bと同様、地心座標を得たり、惑星の位置をプロットしたりするのに利用される。
  • VSOP87B
    • J2000.0を分点とする[訳語疑問点]日心黄道球面極座標
      • VSOP87Aと同様、地心座標を得たり、惑星の位置をプロットしたりするのに利用される。
  • VSOP87C
    • 瞬時の平均春分点を分点とする[訳語疑問点]日心黄道直交座標
      • VSOP87Dと同様、地心座標や出没・南中時刻、ある地点における地平座標の計算に利用される。
  • VSOP87D
    • 瞬時の平均春分点を分点とする[訳語疑問点]日心黄道球面極座標
      • VSOP87Cと同様、地心座標や出没・南中時刻、ある地点における地平座標の計算に利用される。
  • VSOP87E
    • J2000.0を分点とする[訳語疑問点]重心黄道直交座標[注 4]

  1. ^ ここでいる「長さ」は黄経、つまり惑星がその軌道にそってどれだけの角度進んだかの意味を意味し、 q は時間分の角度である。「長さ」が360°進むのにかかる時間は公転周期に等しい。
  2. ^ 他の因子にも依存するが、質量がボトルネックである。
  3. ^ 運動方程式は二階の微分方程式のため、積分定数に相当する初期条件が2つ必要となり、これが3次元方向それぞれについて必要なため6つになる。
  4. ^ 太陽系の重心を基準とする座標


「惑星軌道の永年変化」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「惑星軌道の永年変化」の関連用語

惑星軌道の永年変化のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



惑星軌道の永年変化のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの惑星軌道の永年変化 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS