全国瞬時警報システム
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実証実験
2006年1月から3月にかけて、15都道府県16市町村の参加の下でJ-ALERTの実証実験が実施された。実験では、主に以下の確認が行われた。
- 都道県および市町村における緊急情報の適正受信
- 防災行政無線の自動起動
- 情報発信から放送までの所要時間
実証実験参加団体は下記の通り。
- 東京都豊島区、岩手県釜石市、北海道上富良野町、埼玉県日高市、群馬県川場村、長野県飯田市、静岡県吉田町、千葉県富浦町(現・南房総市)、福岡県前原市(現・糸島市)、愛媛県松山市、香川県宇多津町、鳥取県南部町、奈良県黒滝村、兵庫県市川町、福井県美浜町および越前市(15都道府県16市町村、実施順)
実験の際、消防庁からは弾道ミサイル攻撃情報、緊急地震速報、震度速報等が送信されたほか、複数の緊急情報を同時に送信するなどのテストも行われた。
奈良県黒滝村などでは屋外での公開実験が行われ、事前にその旨がプレスリリースされている。また兵庫県市川町では実験で伝達される情報を用いての災害図上訓練が行われ、千葉県富浦町でも実験に合わせて住民の避難訓練が行われた。
実験結果
実験では消防庁からの情報送信、地方公共団体での情報受信および防災行政無線の自動起動に成功したが、情報の受信までに1-2秒、自動起動による放送までに5-23秒を要するという結果となった。「サイレン等による瞬時情報伝達のあり方に関する検討委員会」はこの実験結果を踏まえ、放送までに時間を要する主な理由等について検討を加え今後改善していくべきポイントをまとめている[6]。
今後の課題
今後の全国的な運用に向けては、次のような課題がある。
- 防災行政無線の整備推進と情報伝達経路の拡充
- J-ALERTは同報系防災行政無線を活用する構成となっているため、その効果を最大限発揮するには当該無線の整備が必要不可欠となる。2009年3月31日現在、全国の同報系市町村防災行政無線の整備率は75.9%であり、未整備地域の解消が今後の課題とされている[20]。
- また防災行政無線の特性上、聞き手が屋内にいる場合や豪雨時、強風時などには情報が的確に伝達されないおそれがあることから戸別受信機の配備、携帯電話等へのメール配信やCATV網を使用した伝達、ワンセグ放送を通じた伝達など他の伝達経路の併用による情報伝達体制の強化も課題とされている。
- 防災行政無線の自動起動に要する時間の短縮
- J-ALERTはその趣旨から秒単位の伝達スピードが要求される情報を取り扱うことが多いが、2006年に行われた実証実験では、前述の通り情報の発信から防災行政無線による放送までに5-23秒の時間を要している。情報伝達に要する時間の短縮のため、屋外拡声子局の呼出方式の最適化、セレコール時間の短縮化、防災行政無線制御卓での情報処理時間の短縮化および合併した市町村における防災行政無線のシステム統合などに取り組むべきであるとされている。
- 他システムへの連動
- 既に地方公共団体が運用しているシステムにJ-ALERTを連動させることで、地方公共団体の全般的な危機管理能力の強化が期待できるとされている。J-ALERTとの連動が有効な例としては、主に以下のものが挙げられている。
- 職員の非常参集
- 消防機関等への一斉指令
- 非常電源の起動、など
- 導入自治体の普及率
- 防災行政無線の設置費用を除いても1自治体あたり平均700万円の費用が必要なため、2009年4月1日時点で、J-ALERTの受信システムを導入している自治体は15.7%(284市区町村)、防災行政無線などと直結させた自治体に限ると11.7%(211市区町村)に留まっていた[21]。2010年2月時点で約2割(46都道府県342市区町村)の自治体が[21]、2010年3月1日時点で導入している自治体は344市区町村(そのうち同報無線、コミュニティFM等の自動起動に対応しているのは282市区町村)[22]と徐々に整備が進められている。なお、2013年5月時点では1735自治体(全1742自治体の99.6%で、うち自動起動に対応しているのは1359自治体(78%))が導入している。
- 2009年4月には北朝鮮が長距離弾道ミサイルとみられる飛翔体を発射すると発表し、秋田県の沖合い130キロ付近を危険水域と発表した。また秋田県と岩手県の上空を通過することになり、発射が確認された場合は緊急警報を発報する必要があるが、J-ALERTによる伝達は「弾道ミサイルが日本をめがけて撃ってくる環境下で使用するもの」[21]との理由で見送られた。ただし、J-ALERTの設置自治体が1割強と低い事も理由とされている。そのため、首相官邸の危機管理センターが提供し、全国の7割の自治体で導入されている「Em-Net」(エムネット:緊急情報ネットワークシステム)を使用して伝達することになった。なおEm-Net、J-ALERTとも導入していない自治体への警報伝達はファクシミリを使用した一斉同報送信に頼る事となり、J-ALERTの導入自治体を増やすことが重要となっている。
- 2014年4月時点で全国1,741自治体の全てに導入完了、J-ALERT自動起動装置も2016年5月時点で導入が完了した[23]。
- 誤作動を起こす可能性
- 2008年3月に岐阜県大野町で、また6月30日には福井県美浜町でそれぞれJ-ALERTが誤作動を起こすというトラブルが発生した。美浜町における誤作動では防災行政無線を介して「ミサイルが着弾するおそれあり」という放送が町中に流れた。誤報に気付いた町の職員が放送を停止し、防災無線で誤報である事を知らせたが、町民からは問い合わせが殺到したという。美浜町は原子力発電所(美浜原発)を抱えており、町は「あってはならないミスだ」として原因を調査した。その結果、受信装置を修理した際の作業ミスと警報データの選択ミスが重なった事が原因と判明した[24]。さらに8月13日には愛知県庁とその出先機関20施設でもミサイル攻撃対象との警報が放送される誤作動があり、名古屋市役所での受信訓練中のミスとされた。
- 2010年2月28日のチリ地震による津波の際に、津波警報や津波注意報が71市町村で誤放送されるトラブルが発生した。2009年3月に注意報の一斉解除時に誤って注意報が発表される問題が発覚してシステムの改修を行っていたが、今回新たに段階的解除時も誤報が発表される事が判明したため、2010年3月中にシステムを改修する予定である[25]。
- 2022年10月4日の北朝鮮による弾道ミサイル発射当初、本来は対象でない地域へ発射情報が出されたことについて、過去の訓練データを消去していなかったことが原因だと明らかにした[26]。
- 警報の精度および速度
- 2022年11月3日の北朝鮮によるミサイル発射の際に、上空を通過する予想時刻後に警報が出された。これについて警報の精度などに課題があることが指摘されている[27][28]。
- 2023年4月13日の北朝鮮によるミサイル発射の際に、当初は「北海道周辺に落下するとみられる」という情報を後にその可能性がなくなり訂正した。これについて、日テレNEWSは複数の政府関係者による訂正経緯の証言を伝えたが、同時に情報の伝え方の批判も報じた[29]。警報の速度に関しては2023年9月1日のシステム改修で「1分ほど短縮される」としている[18]。
日本の主な販売メーカー
注釈
出典
- ^ 内閣官房 国民保護ポータルサイト
- ^ J-ALERTの情報受信機関の拡大と地上配信の開始に向けた業務規程等の整備(平成21年1月6日) (PDF) 、総務省消防庁、報道資料
- ^ コトバンク「Jアラート」日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
- ^ a b 全国瞬時警報システム業務規程 (PDF)
- ^ 麻生 安心・安全ビジョン(平成17年5月24日) (PDF) 、総務省消防庁
- ^ a b 全国瞬時警報システム(J-ALERT)についての検討会報告書、実証実験結果及び標準仕様書(平成18年3月27日) (PDF) 、総務省消防庁、報道資料
- ^ 全国瞬時警報システム(J-ALERT)を用いた緊急地震速報の一般への伝達の試行(平成19年6月13日) (PDF) 、総務省消防庁、報道資料
- ^ Jアラート、津波で誤報 避難勧告解除直後にまた警報、朝日新聞、2010年3月2日
- ^ 津波「Jアラート」が誤報、システム不具合?、読売新聞、2010年3月2日
- ^ 全国瞬時警報システム(J-ALERT)の高度化開始及び全国的整備(平成22年12月17日) (PDF) 、総務省消防庁、報道資料
- ^ 全国瞬時警報システム(J-ALERT)の不具合に関する対応について(平成23年3月9日) (PDF) 、総務省消防庁、報道資料
- ^ Jアラートの一斉訓練、280市区町村でトラブル メーカー1社に問題か - MSN産経ニュース - ウェイバックマシン(2012年12月6日アーカイブ分) MSN産経、2012年9月16日
- ^ 【北ミサイル発射】Jアラート情報、2市村で住民に伝わらず 沖縄県 - MSN産経ニュース - ウェイバックマシン(2013年6月3日アーカイブ分) MSN産経、2012年12月12日
- ^ 政府からの「Jアラート」を携帯各社の緊急メールで配信 避難・救援・弾道ミサイル発射情報など ケータイwatch 2014年3月28日付
- ^ 北朝鮮ミサイル Jアラート、7道県16市町村でトラブル - 毎日新聞(2017年8月29日19時58分配信)
- ^ Jアラート伝達、北海道・青森6市町で不具合 総務省消防庁 - jiji.com(時事通信社・2022年10月4日20時52分配信)
- ^ Jアラート"北海道付近に落下"発表も訂正 - 日テレNEWS 2023年4月13日 10時07分配信
- ^ a b “Jアラートシステム改修 時間は1分程度短縮 隣接都道府県にも発信”. FNNプライムオンライン. 2023年9月16日閲覧。
- ^ “【速報】北朝鮮ミサイル避難の呼びかけを解除 太平洋へ通過したとみられる”. FNNプライムオンライン (2023年11月21日). 2023年11月22日閲覧。
- ^ 市町村防災無線システムの整備数、総務省 電波利用ホームページ
- ^ a b c 【北ミサイル発射】Jアラート整備へ財政支援 自治体対象に21年度補正で、産経新聞、2009年4月8日
- ^ J-ALERT概要 (PDF) 、総務省消防庁
- ^ J-ALERT概要(H28版) (PDF) 、総務省消防庁
- ^ 【詳報】ミサイル発射の誤警報、原因は修理時の作業漏れと警報の選択ミス、ITpro、2008年7月2日
- ^ 津波Jアラート、71市町村で誤放送 消防庁近く改修へ、朝日新聞、2010年3月10日
- ^ “Jアラート誤発信「過去の記録が消去されていなかった」”. 日テレNEWS24 (2022年10月5日). 2022年11月3日閲覧。
- ^ “Jアラート ミサイル通過予想時刻後に発表”. 日テレNEWS24 (2022年11月3日). 2022年11月3日閲覧。
- ^ “日本政府が“情報訂正”…「Jアラート」精度や政府内の連携の問題が浮き彫りに 北朝鮮“3発発射””. 日テレNEWS24 (2022年11月3日). 2022年11月3日閲覧。
- ^ 北ミサイル発射"Jアラート"政府「訂正ではなく新たな情報を提供 - 日テレNEWS 2023年4月13日 17時07分配信
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