光合成 緑色植物の光合成

光合成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/28 05:54 UTC 版)

緑色植物の光合成

現在、最も研究の進んでいる酸素発生型光合成は緑色植物の光合成経路である。緑色植物の光合成経路は基本的に全ての酸素発生型光合成に応用可能であり、上記に上げられる生物群全てに以下の経路を当てはめても良い。酸素発生型光合成経路の最大の特徴は「水分子を電子供与体として用いることができる」という点である。酸化還元電位の高い酸素原子とそれの低い水素原子の結合した安定な物質である。この「水の光分解」を開発したことが、現在の酸素呼吸型生物の発展を生んだともいえる。

チラコイド膜では、クロロフィル(光合成色素)が光エネルギーを使って水を分解、プロトン(H+)と酸素分子(O2)、そして電子(e-)を作る。このときにできた電子によってNADP+(酸化型)からNADPH(還元型)が作られる。さらに、チラコイド膜内外のプロトン濃度勾配を利用して、ATP合成酵素によってアデノシン三リン酸 (ATP) が作られる。以上が光化学反応(明反応、Light-dependent reactions)である。

次にチラコイド膜の外側にあるストロマ(葉緑体基質)で、光化学反応で作られたNADPHとATPを使って二酸化炭素を固定・還元してが作られる。この一連の反応は酵素反応(暗反応、Light-independent reactions)である。

光化学反応

チラコイド膜での光化学反応の概略図

光化学反応とは光エネルギーを化学エネルギーに変換する系である。光を必要とするため明反応とも呼ばれる。狭義には光エネルギーが関与する光化学系II英語版(PSII)および光化学系I英語版(PSI)の反応を指すが、広義には光化学反応に関わる電子伝達系のすべての反応を指す。

光化学反応は、光化学系II(PSII)、シトクロムb6f、光化学系I(PSI)の3種のタンパク質複合体で構成され、これらはすべてチラコイド膜に存在する。PSIIとシトクロムb6f の間はプラストキノン(PQ)、シトクロムb6f とPSIとの間はプラストシアニン(PC)で結ばれている。PSIIに光(hν)が当たることによってH2OからNADP+に電子が流れ(青矢印)、プロトンがチラコイドルーメンに取り込まれる(赤矢印)。また、酸素発生複合体(OEC)によって水が分解されて酸素が発生するときもプロトンがチラコイドルーメンに生成する。チラコイドルーメンとストロマの間にできたプロトンの濃度勾配の浸透圧エネルギーによってATP合成酵素がATPを合成する。ATP合成酵素は1秒間に17回転し、ADPからATPを合成しているのである。

光化学反応の収支式は以下の通りである。

生じた、NADPHおよびATPはストロマにて行なわれるカルビン回路で使用される。また生じるATP数は理論的なものであり、実際にはプロトンの漏れがチラコイド膜外に発生していると見られ、24ATPを生じているとは考えにくい。事実、カルビン回路に使用されるATP数は光化学反応で生じるATP数よりも少ない。

Z機構

電子伝達系での電子のエネルギー勾配を示すZ機構

植物では光化学反応は葉緑体のチラコイド膜で起こり、光エネルギーを使ってATPとNADPHを合成する。狭議の光化学反応は、非循環的電子伝達系と循環的電子伝達系の2つの過程に分けられる。非循環的電子伝達系ではプロトンは光化学系II内のアンテナ複合体に光が捕獲されることによって獲得される。光化学系IIの光化学系反応中心(RC)にあるクロロフィル分子がアンテナ色素から十分な励起エネルギーを得たとき、電子は電子受容体分子(フェオフィチン)に運ばれる。この電子の動きを光誘起電荷分離と呼ぶ。この電子は電子伝達系を移動するが、これをエネルギー勾配で表したのがZ機構(Z-scheme)である[8]。ATP合成酵素はエネルギー勾配を使って光リン酸化によってATPを合成するが、NADPHはZ機構の酸化還元反応によって合成される。電子が光化学系Iに入ると再び光によって励起される。そして再びエネルギーを落としながら電子受容体に伝えられる。電子受容体によって作られたエネルギーはチラコイドルーメンにプロトンを輸送するのに使われている。電子はカルビン回路で使われるNADPを還元するのに使われる。循環的電子伝達系は非循環的電子伝達系に類似しているが、これはATPの生成のみを行いNADPを還元しないという点が違う。電子は光化学系Iで光励起され電子受容体に移されると再び光化学系Iに戻ってくる。ゆえに循環的電子伝達系と呼ばれるのである。

カルビン回路

カルビン回路。

カルビン回路暗反応とも呼ばれる過程で、二酸化炭素の固定・還元を行なう炭酸固定反応である。カルビン回路は複数の酵素と中間代謝物からなる複雑な回路であるが、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RubisCO)を初発酵素とし、炭素数5の化合物リブロース1,5-ビスリン酸と二酸化炭素から炭素数3の化合物3-ホスホグリセリン酸2分子を生成する二酸化炭素の固定反応から始まる。3-ホスホグリセリン酸は還元され、グリセルアルデヒド3-リン酸を生成する。二酸化炭素の固定反応を継続するためには、産物として生じたグリセルアルデヒド3-リン酸からRubisCOの基質となるリブロース1,5-ビスリン酸を再生産しなければならない。このため、5分子のグリセルアルデヒド3-リン酸(炭素数3の化合物)が3分子のリブロース1,5-ビスリン酸(炭素数5の化合物)へ転換される。

これら一連の「二酸化炭素の固定・還元・基質の再生産」の過程がカルビン回路を構成する。従ってカルビン回路が3回転することにより、3分子の二酸化炭素が固定され、1分子のグリセルアルデヒド3-リン酸を生成する。この過程で、光化学反応によって生じたNADPHおよびATPが消費される。収支式で示すと以下のようになる。

グリセルアルデヒド3-リン酸

光化学反応を含めて光合成の収支式をまとめると以下のようになる。

この式は好気呼吸の収支式の逆反応であり、炭素消費および固定の収支が極めて巨大な生態系視野でもうまく行くことが理解できる。




  1. ^ 吉田茂男 (1997), 植物化学調節実験マニュアル, 全国農村教育協会, p. 50, ISBN 9784881370636 
  2. ^ a b c d e 『ヴォート生化学 第3版』 DONALDO VOET・JUDITH G.VOET 田宮信雄他訳 東京化学同人 2005.2.28
  3. ^ a b c 『Newton 2008年4月号』 水谷仁 ニュートンプレス 2008.4.7
  4. ^ 細辻豊二 (1986), 最新農薬生物検定法, 全国農村教育協会, p. 29, ISBN 9784881370247 
  5. ^ 小森栄治 (2006), 向山洋一, ed., 中学校の「理科」を徹底攻略, PHP研究所, p. 101, ISBN 9784569655666 
  6. ^ a b Lack, A. J. (2002), 岩渕正樹 訳; 坂本 亘 訳, ed., 植物化学キーノート, シュプリンガー・ジャパン, pp. 156-162, ISBN 9784431709787 
  7. ^ Hames, B. David; Hooper, N. M., 田之倉 優 訳; 村松知成 訳; 阿久津秀雄 訳, ed., 生化学キーノート, シュプリンガー・ジャパン, p. 391, ISBN 9784431709190 
  8. ^ Mohr & Schopfer 1998, pp. 165-168
  9. ^ Mohr & Schopfer 1998, pp. 222-226
  10. ^ Mohr & Schopfer 1998, p. 225




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