体操競技 主要な大会と競技種別

体操競技

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/13 00:30 UTC 版)

主要な大会と競技種別

国際大会

地域大会

この他に、アジア競技大会などの国際総合大会において体操競技が設けられている。

国内大会

Category:日本の体操競技大会も参照

外国人選手を招聘する大会

この他に、ジュニア・学生・社会人向けの大会が行われている。

競技種別

団体総合
1チームから複数名が演技し、その合計得点を競う。演技者数・採用演技数等はルールによって変動する。
個人総合
男子は6種目・女子は4種目を1人の選手が演技し、その合計得点を競う。
種目別
1種目ごとの演技の得点を競う。

技と難度

難度

体操競技難度は技や運動の難しさの程度を言う。跳馬を除き、男子はA~I、女子はA〜Jまであり、それぞれ0.1~0.9または1.0点が配点されている。男子は10個の技の点の合計が、女子は8個の技の点の合計が難度点(Difficulty Value)になる。演技価値点すなわちDスコア(Difficulty)は難度点と構成要求(最大2.0)と組み合わせ加点の合計からなる。また、跳馬においては各技に得点が配点されており、それがDスコアとなる。本来難度はA~Cの3段階に分類されていたが、技術の進歩により1985年にはD難度、更に1993年にはE難度が導入された。しかしそれらをも上回るものが出てきたため、1998年から一時的にスーパーEが導入された後、2006年の規則改正に合わせてF難度、G難度が導入された。さらに2013年から採用される採点規則において、女子には新たにI難度が創設された。現在では難度が高い技ほど得点がのびやすいため難度の高い技を行う選手が増加している。

日常会話で使用され、「とっておきの大逆転技」という意味で用いられるウルトラCであるが、1964年東京オリンピック前に体操競技の難度を示す言葉として造語されたものである。発案者には諸説あり、『ブリタニカ国際大百科事典』の「小項目事典」では「最初に使ったのは国際体操連盟 FIG男子技術委員も務めた金子明友、普及に力を尽くしたのが東京オリンピック日本体操チーム総監督の佐々野利彦といわれる。」と記し[3]デイリースポーツ社史の『デイリースポーツ三十年史』では体操競技の強化委員を務めた上迫忠夫が五輪前年の強化合宿で取材に答えて発して報じたものを初出とする[4]。上記のように当時の難度はA,B,Cしかなく、当時の最高難度であったC難度よりもさらに難しい技という意味で使用されたとされるが[3]、上迫はむしろ「本来C以上のものもCに含まれていた」ため、そのようなものを区別するためにこの言葉で表現したという[4]

技と技名・新技

体操の技名は基本的に演技内容を粛々と述べただけのもの(例としてムーンサルト:鉄棒またはゆかにおける後方2回宙返り1回ひねり下り)であるが、FIG(国際体操連盟)の定める国際大会で過去実施されたことのない新技を事前に申請した上で発表・成功すると、その技の通称として実施者の姓が技名として認定される。多くの技がこの名前で呼ばれ、ロサンゼルスオリンピック森末慎二が発表した平行棒での後方棒上かかえ込み二回宙返り腕支持はモリスエと呼ばれるなどしている。同一の人名の技が同名でその種目に存在する場合はそれぞれA,B,C...やII,III,IV...と語尾につけられる(例:シュテクリB・ゲイロードII)。

新技を申請しFIGの定める国際大会で新技を成功させれば、コバチやトカチェフといった自らの姓がついた技を新技につけることができるのだが、もしも新技を失敗してしまうと、今後は誰がその同じ新技を国際試合で成功させようとも、その技に人の姓がつけられることはなくなる。ex:伸身トカチェフ ただし、2016年リオデジャネイロオリンピックでは、ブレットシュナイダーの平行棒の技と、イーゴリ・ラディビロフの跳馬の4回宙の2つの技について、オリンピックでは成功しなかったが、後に同じ選手が挑戦して成功させれば名前がつく可能性があるとなっている。[5]

また、現在では新技に名前を付けるためにはC難度以上として認定される必要があり、B難度以下の技で新技申請を行っても名前がつくことはなくなっている。[6]

同一の人名が別々の種目につけられることもあり、山脇恭二が発表した技はあん馬での馬端から馬端への背面とび横移動、つり輪での前方かかえこみ二回宙返り懸垂があり、それぞれヤマワキと呼ばれる。

なお、塚原光男1972年ミュンヘンオリンピックで発表した鉄棒での月面宙返り下り、いわゆるムーンサルトツカハラと名付けられている。ムーンサルトの命名は、恩師である竹本正男ローマ五輪金メダリスト・元日本体育大学副学長)である。

他に、田中光1996年アトランタオリンピックに出場し平行棒においてオリジナル技「TANAKA」(懸垂前振りひねり前方かかえ込み2回宙返り腕支持:難度E)を発表し、認定されている。

2013年に白井健三が初めて成功した「後方伸身宙返り4回ひねり」が「シライ」となった。

採点方法

なお、ここで述べるルールはFIG(国際体操連盟)国際大会のルールであり、変更規則Ⅰ、Ⅱおよび各地で開催される大会にはジュニアルールなど、多くのローカルルールも存在する。ルールは4年に1度、オリンピックの翌年に改定され、現在は2017−2020年版採点規則が適用されている。

2009(2006)年以降

2006年から2008年までは技の難度、要求、加点によって決まるAスコア、実施された技の減点、不完全な技に対しては個々減点を行うなどの実施減点であるBスコアがそれぞれA審判、B審判により算出され、それぞれの合計が決定点となる。 また、2009年からはAがD、BがEと置き換えられている(difficulty、executionの頭文字) DスコアはD審判により次のように算出される。

特別要求(2.5(0.5×5))

グループがI~Vまであり(ゆかはI~IV)、それぞれのグループの技を一つでも実施すれば満たすことができる。
しかし終末技はD難度以上でなければいけない(C難度では0.3、A、Bでは0.0)
内容はたとえば鉄棒であれば、懸垂振動技、手放し技、鉄棒に近い技、背面・大逆手の技、終末技である
また、1つのグループにつき4技までしか実施してはいけない(実施しても価値は認められないが実施減点はある)

難度

技ごとにA~Jまでの難度が設定されており、A・B・C・D・E・F・G・H・I・Jの順に0.1~1.0の価値点があり、男子は終末技の他に9技まで、女子は終末技の他に7技まで、難度の高いほうから順に技を選ぶ(一つのグループで4技を超えて実施されていた場合は4技までしか取ることはできない)

組み合わせ加点

男子はゆかと鉄棒のみにあり(つり輪は2009年に削除された)、女子は段違い平行棒、平均台、ゆかにある。
男子の場合、床ではD難度以上の宙返り技と他の宙返り技を組み合わせることによって得られる。双方がD難度以上場合は0.2、片方の場合は0.1である。また、双方にまたがって加点を得ることはできない
前方2回ひねり→前宙(D+A)加点0.1
後方2・1/2ひねり→前方2回ひねり(D+D)加点0.2
テンポ宙返り→後方2・1/2ひねり→前方1/2ひねり(B+D+B)加点0.1
鉄棒の場合は離し技と離し技、離し技とその他の技の組み合わせによって得られる。

跳馬の場合

男女とも跳馬の場合は技ごとに価値点が決まっていて価値点が直接Dスコアとなる。
ちなみに2009年よりDスコアが7.0を越す技(ラディビロフ)が出てきたが現在はその危険性から禁止技となっている。

2005年以前

2005年までの採点は、A審判による価値点の算出とB審判による減点から算出される。

価値点
A審判は、構成される演技構成から、10点満点で価値点を算出する。価値点の内訳は以下のとおり。ただし、跳馬種目においては以下の法則は適用されず、一つ実施される技そのものにより価値点が決定する。内訳は2005年度版
現在では採点により公平性を持たせるためといった理由により、10点満点制は廃止されているが、サーカスにはない体操にのみ備わる独特の美しさが損なわれ、難しい技を詰め込むだけの演技になるのではと危惧される一面もあり賛否両論である。
5.0 演技実施
演技を行うと与えられる。
2.8 難度要求
C難度以下の技を実施した場合、技の難度に応じて加えられる。最高でA,B,C難度それぞれ男子は4,3,3回(女子は2,3,3回)を実施する必要があることになるが、この項目は高い難度の技で低い難度を代用することが出来る。たとえば、A,B難度の技を一度も行わないとしてもC難度の技を10回実施すれば難度要求を満たすことになる。
0.6 特別要求
各種目により、実施が義務付けられているカテゴリの技を実施すると与えられる。たとえば男子の場合5種類あり、それぞれは0.1点だが終末技には0.2点が割り当てられている。内容はたとえば鉄棒であれば、懸垂振動技、手放し技、鉄棒に近い技、鉄棒に後ろ向きで行われる技、終末技が規則により設定されている。
1.6 難度加点
D難度以上の技を実施した場合、技の難度に応じて加えられる。技の個数に制限はなく、E難度を8回実施しても、D難度を16回実施しても満たすことが出来る。
技難度
体操競技で行われる技にはそれぞれ、A,B,C,D,E,スーパーEの難度が設定され、スーパーE難度の技が一番難しいとされる。A,B,C難度の技を実施することで、難度要求の部分に0.1,0.3,0.5の加点を、D,E,スーパーE難度の技を組み込むことにより、難度加点の部分に0.1,0.2,0.3点の加点をもらうことができる。ただし、ゆかのスーパーE難度技に対する加点は優遇され、0.4点が与えられる。
組み合わせ加点
技の組み合わせによって、たとえば、B難度とC難度の技を組み合わせることにより、一つ上のD難度にランクアップすることができる。また、C難度+D難度の実施は0.1、D+D,D+E,E+D,E+Eの組み合わせを実施すると0.2の加点が難度加点部分に与えられる。組み合わせ加点においてスーパーE難度の技はE難度と同等に計算される。
跳馬種目の価値点
技そのものに価値点があり、それぞれ7~10点の価値点が設定されている。10点の技は非常に難度が高く、たとえば前方3回宙返り半ひねり(ドラグレスク)など限られたものだけである。2004年アテネ五輪団体総合決勝で日本勢が実施した側転とび3/4ひねり後方伸身宙返り1回半ひねり(ドリッグス)は価値点9.9となり、この技では10点は獲得できない。
減点
B審判は、実施された技の減点を行う。不完全な技に対しては個々減点を行い、最終的に算出される点数はA審判の出した価値点からB審判の出した減点分を合算して算出される。不完全な技が、別の技になってしまった場合の減点はA審判の裁量であり、B審判の採点はあくまでも実施された技(現実に見えた技)に対して行われる。また、女子競技の場合は芸術点の採点もB審判が行う。
禁止技・禁止行為
禁止技という物も規則により設定されており、たとえば、ゆかであれば片手倒立が禁止技とされている。この禁止技に指定されている技を行うと、減点されてしまう。また、あん馬の一部の技を除いた同一の技を3回以上繰り返す、つり輪で同じ技を3回以上演技に組み込む、ゆか種目でのラインオーバー・タイムオーバー、跳馬のラインオーバー、器具からの落下、なども減点対象となる。

注釈

  1. ^ 日本国内の調査では、1972年1月〜1974年1月の2年間に10名が事故死・13名が頸椎骨折などの重傷を負ったことが判明した(1974年7月30日読売新聞「事故防止で禁止ワザを通達」より)。国内では後に画家として知られる星野富弘が、国外では世界選手権優勝のエレナ・ムヒナ(ソ連)が、それぞれ練習中の事故で身体障害を負ったことが特に有名である。

出典

  1. ^ 1980年代に活躍したダニエラ・シリバシュ(ルーマニア)が、2002年になって現役時代の年齢詐称を告白。近年では、シドニー五輪中華人民共和国女子選手の詐称が認定された [1] 他、北京五輪でも同国の女子選手に詐称疑惑が起きた。
  2. ^ a b 1960年9月11日 読売新聞「日本体操の歩み」
  3. ^ a b "ウルトラC[体操競技]". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2022年5月21日閲覧
  4. ^ a b 『デイリースポーツ三十年史』デイリースポーツ社、1978年、P49。
  5. ^ Additionally, two elements not successfully performed in the men's competition will be published in the Men's Code of Points, though they will not be named for the gymnast who attempted them. If done well by their originators at a future competition, they may be named retroactively. 
  6. ^ 男子体操競技情報 29 号”. 日本体操協会. 2021年8月15日閲覧。


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