交代行列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/13 23:44 UTC 版)
対応する双線型形式
任意の体 K 上の n次元ベクトル空間 V において、V の基底を固定すれば、V 上の双線型形式 φ は適当な n次正方行列 A によって φ(v,w) := v⊤Aw と表されることを思い出そう。
V 上の双線型形式 φ: V × V → K が
- 交代形式であるとは、非零ベクトル v を任意として交代性:φ(v,v) = 0 を満たすことを言う。
- 歪対称形式であるとは、ベクトル v, w を任意として歪対称性:φ(v, w) = −φ(w, v) を満たすことを言う。
V 上の交代形式(resp.歪対称形式)は、基底を一つ固定すれば、交代行列(resp.歪対称行列) A を用いて上記の形に表され、逆に Kn 上の交代行列(resp.歪対称行列)A は交代形式(resp.歪対称形式)(v,w) ↦ v⊤Aw を定める[注釈 1]。
A が交代的ならば、任意の実ベクトル x に対して x⊤Ax = 0 が成り立つ。実際、x⊤Ax はスカラー値ゆえ転置と自身とが一致するが、同時に積の転置法則と A の交代性から
が成り立つ。またこの逆も成り立つ。実際、A が交代的でないならばその対称成分が 0 でない固有値 λ を持ち、λ に属する正規化された固有ベクトルを v とすれば v⊤Av = λ が成立する。
注釈
- ^ a b c 本項において(何も言わなければ)、係数体の標数 は 2 でない (1 + 1 ≠ 0) と仮定する。標数が 2 のとき、任意のスカラーは自身を反数として持つので、任意の歪対称行列は対称行列の概念に一致する。歪対称行列に付随する双線型形式は歪対称形式であり、標数 2 のときは対称形式になる。一方、付随する双線型形式が交代形式であるような行列を「交代行列」と呼べば、標数 2 のとき「交代行列」は歪対称(=対称)行列と異なる。
- ^ 標数が 2 の体上では 1⁄2-倍写像が定義されないから、対称成分・歪対称成分ともこれでは定義できない。以下は標数が 2 でない任意の体上で成り立つ議論であることに注意せよ。
出典
- ^ Reyment, Jöreskog & Marcus 1996, p. 68.
- ^ Eves 1980.
- ^ Cayley, Arthur (1847). “Sur les determinants gauches [On skew determinants]”. Crelle's Journal 38: 93-96. Reprintend in Cayley, A. (2009). “Sur les Déterminants Gauches”. The Collected Mathematical Papers. 1. p. 410. doi:10.1017/CBO9780511703676.070. ISBN 978-0-511-70367-6
- ^ 佐武 1974, p. 81.
- ^ 佐武 1974, p. 189.
- ^ Fomin, Sergey; Zelevinsky, Andrei (2001). "Cluster algebras I: Foundations". arXiv:math/0104151v1。
交代行列と同じ種類の言葉
- 交代行列のページへのリンク