井山裕太
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エピソード
- 井山の利き手は右手であるが、碁を打つ際には左手で打っている。これは井山が祖父に碁を教わっていた頃、祖父から「左手で打つと脳にいい」と言われて始めたという説が流布している[53]か、実際にはアトピー性皮膚炎で右手に痛みがあったため左で打つようになった[54]。
- 前世代の第一人者である平成四天王の4名とは、タイトル戦で幾度となく激突しており、その多くで勝ち越している。
- 平成四天王と代わるように台頭してきた3名の次世代のトップ棋士「令和三羽烏」にとっても井山はタイトル戦の高い壁として立ちはだかった。
- 少年少女囲碁大会全国大会で最年少タイ記録である小学2年生で優勝したが、この時決勝戦で争った当時6年生の万波奈穂は、優勢で打ち進めていたにも関わらず終盤にポカをしてしまい逆転負けという結果にショックを受けていた。その時、井山少年が万波に「お姉ちゃんごめんね。お姉ちゃんの勝ちだったよ」と話しかけ、万波は「あまりのかわいさに負けたくやしさも吹き飛んだ」と回想している。なお、井山自身はこのやり取りを覚えていないとのこと。[59]
- 今でこそ読みの力を大きく評価される井山だが、意外にも碁を覚えてから長らくの間、詰碁の勉強は殆ど全くやっておらず、実戦対局のみで力を付けていった。[55]
- 院生になってからも詰碁の勉強はせず、師匠の石井邦夫や当時の院生師範であった後藤俊午らからは「君の碁の力からして、読みの能力の部分だけあきらかに弱い」と言われ、もっと詰碁をしろと言われていた。
- 2001年のプロ試験で最年少入段を逃した際に、読みの力の無さを井山自身が痛感し、ようやく毎日詰碁の勉強をするようになったと語っている。
- そんな過去の自分への反省もあってか、「読みは囲碁の全ての土台で基礎力。その基礎力を鍛えるのが詰碁(要約)」「僕は詰碁に取り組むのがかなり遅かったと言わざるをえない」「プロを目指してる子は、出来るだけ早く詰碁に取り組み、読みの力を鍛えてください。」と語っている。
- 国内タイトルを保持するほど日程の関係で世界戦に出場できない状況になっていった。そこで2016年3月、国内棋戦の主催各社を回り、世界戦のために日程調整をしてもらうことになった[60]。
- 対局の手どころなどで井山は相手の石にツケて展開を作っていくことが多く、井山と親交のある伊田篤史は井山の対局を解説をした際に「井山さんは"碁はツケれば何とかなる"と思っています。」と冗談交じりに解説した。
- 関西総本部所属で大阪居住だが、多忙なため東京と名古屋にも部屋を持っている。しかし九段になりタイトルも保持したので序列が下の棋士は大阪に来てくれるようになった[61]。
- 2016年までで約10億円の賞金を獲得している[61]。
- 井山が小学生の頃にヒカルの碁の連載が始まった。井山も当時からの読者であり、ヒカルの碁がブームになるとクラスメート達から「囲碁を教えてくれ」と頼まれ教えたという。
- 以前は体力作りのためビリーズブートキャンプをしていた[61]。
- 2009年に名人奪取で九段に昇格した井山だが、その後一度も無冠にならないまま2020年に本因坊戦9連覇により60歳未満現役での二十六世本因坊呼称資格を獲得した為、国内において生涯一度も「井山九段」と表記されない事が確定した。
- 前述のとおり、2012年に将棋女流棋士の室田伊緒と結婚したが、2015年に離婚。その後、2019年7月に25歳の一般女性との再婚を発表した[63]。2021年2月には第一子となる長男が誕生した[64]。
- 2017年、インターネット囲碁サイト「野狐囲碁」に現れた「Master」と対局。その正体はAI囲碁プログラムのAlphaGoの新バージョンであり、井山を含む世界トップクラスの棋士が60局対戦し全敗したが、最も善戦したのは井山であったとされている。また、この対局で盤上に現れた形にちなみ、韓国で井山は「巨峰先生」と呼ばれた。[65]
- 囲碁界の第一人者として、将棋界のトップ棋士達と対談する事が多く、羽生善治[66][67][68]、谷川浩司[69]、渡辺明[70]、藤井聡太[71]らと対談をしている。
- 特に"7冠の先輩"でもある羽生との対談回数は多く、タイトル戦続きの過酷なスケジュールを乗り越えるためのアドバイスなどを受けている。
- 2018年の碁聖戦で初のストレート負けを喫し、タイトル戦でも苦戦が目立つようになってきた頃から、スポーツ心理学の専門家を付けて"メンタル強化"を図ったり、持ち時間の配分の意識を変えるなどの取り組みを行った。
- その結果、成績は上向いていき2021年の碁聖戦奪取の際には「課題克服を今、形にすることができ喜びを感じている」「ここ数年では最も良い状態にある。」と語っている。[72]
- 出身地の東大阪市では2016年に7冠達成などの功績から名誉市民称号が贈呈されている。[73]2018年から同市の文化振興の一環として「東大阪市囲碁フェスティバル」が開催されるようになり、「井山杯」と冠された小中学生向けの囲碁大会が開催される他、井山本人が来場する事も多く、指導対局や対談イベントなどを行っている。
注釈
出典
- ^ a b 本因坊就位式で井山が号を発表 【第71期本因坊戦就位式】
- ^ 名人戦 井山、7冠陥落 高尾返り咲く
- ^ 年間ではなく年度のグランドスラムは将棋の羽生善治が1995年度に、井山自身が2015年度に達成している
- ^ “井山名人「『魔王』にふさわしい棋士に」大三冠返り咲き”. 朝日新聞社 (2020年10月15日). 2023年8月25日閲覧。
- ^ “またも「カド番魔王」 井山裕太棋聖が一力遼九段から2勝目 囲碁棋聖戦七番勝負第5局”. スポーツ報知. (2022年3月4日) 2023年8月25日閲覧。
- ^ a b “国民栄誉賞 内閣府”. 2018年4月18日閲覧。
- ^ a b “国 民 栄 誉 賞 受 賞 一 覧”. 2018年4月18日閲覧。
- ^ “天才2棋士、破顔 羽生・井山両氏に国民栄誉賞授与”. 日本経済新聞. 日本経済新聞社 (2018年2月13日). 2020年10月20日閲覧。
- ^ 石井邦生著『わが天才棋士・井山裕太』第3章 集英社インターナショナル
- ^ a b c 『わが天才棋士・井山裕太』石井邦生 集英社インターナショナル2009年
- ^ 後に一力遼が更新
- ^ 後に芝野虎丸が更新
- ^ a b 張棋聖が4年連続で1位 日本棋院賞金ランキング 朝日新聞2011年2月10日付。
- ^ a b 井山、初の1位 張抜く 日本棋院賞金ランキング 朝日新聞2012年1月31日付。
- ^ 囲碁の井山十段と将棋の室田女流初段が婚約 産経新聞 2012年2月20日閲覧
- ^ 井山初の1億円 日本棋院賞金ランク 朝日新聞 2013年1月29日
- ^ 井山六冠、最多勝 囲碁2013年成績 朝日新聞2014年1月7日
- ^ a b c 井山六冠、賞金総額1億6千万円 囲碁界史上最高 朝日新聞2014年2月11日
- ^ 井山名人敗退、七冠独占遠のく 囲碁・十段戦 朝日新聞 2014年1月23日
- ^ 囲碁・井山棋聖が初防衛 山下九段を4勝2敗で退ける 朝日新聞 2014年3月13日。
- ^ 井山が初代覇者 棋戦優勝者選手権戦 朝日新聞 2014年3月25日
- ^ 井山裕太六冠が敗れ七冠遠のく【第53期十段戦本戦準々決勝】11/28
- ^ a b 井山裕太名人、過去最高1.7億円 5年連続の賞金王
- ^ 井山が防衛!5連覇達成で永世本因坊資格を獲得【第71期本因坊戦挑戦手合七番勝負第5局】
- ^ 井山本因坊、号「文裕」 地元・大阪で就位式
- ^ 高尾紳路九段が名人奪取 囲碁名人戦、井山の七冠崩れる
- ^ a b c 第22回 LG杯朝鮮日報棋王戦
- ^ 期せずしてこの5日前の10月12日に将棋界で七冠を達成した羽生善治が 13年ぶりに1冠に後退している。
- ^ 井山裕太がベスト4進出 国際棋戦LG杯 産経ニュース
- ^ 井山ベスト4!!!! 準決勝は柯潔と激突【第22回LG杯朝鮮日報棋王戦準々決勝】日本棋院
- ^ 中国围棋等级分(17.10.31)
- ^ 井山裕太七冠、世界最強の中国棋士破り決勝へ LG杯朝鮮日報棋王戦
- ^ 大竹英雄 日本棋院
- ^ 朝日新聞 2018年2月8日15時17分
- ^ 第42期 棋聖戦 日本棋院
- ^ 井山7冠、世界ランキング1位に敗れる
- ^ [韓国・朴九段、ワールド碁連覇 井山王座は世界一逃す]
- ^ “十段戦第3局 井山裕太十段が勝って3連覇 七冠を堅持 「運がよかった」”. 2018年4月13日閲覧。
- ^ 第73期 本因坊戦
- ^ 井山6冠に後退 碁聖戦、許家元が奪取
- ^ 井山裕太七冠陥落 碁聖戦、許家元七段が最速タイトル 産経ニュース
- ^ "井山裕太本因坊が芝野虎丸王座の挑戦を退けて本因坊10連覇 歴代最多記録に並ぶ". スポーツ報知. 報知新聞社. 7 July 2021. 2021年7月7日閲覧。
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- ^ 井山が初代覇者 棋戦優勝者選手権戦 朝日新聞2014年3月25日。
- ^ 『官報』号外第97号、令和4年5月2日
- ^ “令和4年春の褒章 受章者 東京都” (PDF). 内閣府. p. 2 (2022年4月29日). 2023年5月4日閲覧。
- ^ 公式戦のみ。女流棋戦・地方棋戦(王冠戦・関西棋院第一位決定戦など)は除く。
- ^ “左手打ちの囲碁棋士・井山裕太(23歳2カ月)が史上最年少4冠 - レフティやすおの新しい生活を始めよう!”. 左手打ちの囲碁棋士・井山裕太(23歳2カ月)が史上最年少4冠 - レフティやすおの新しい生活を始めよう!. 2021年12月1日閲覧。
- ^ a b INC, SANKEI DIGITAL (2024年4月12日). “「打ちたい手を打つ」信念貫き、2度の七冠達成 国民栄誉賞受賞の囲碁棋士・井山裕太さん 一聞百見”. 産経ニュース. 2024年4月13日閲覧。
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- ^ その後、第48期碁聖戦にて井山に一力が挑戦したことで、井山-一力のタイトル戦回数が13回になり、記録更新された。
- ^ “井山棋聖、棋聖戦7連覇 歴代2位の記録達成:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年12月2日閲覧。
- ^ “碁界の新時代を担う令和三羽烏にインタビュー(NHKテキストビュー)”. Yahoo!ニュース. 2021年12月2日閲覧。
- ^ 万波奈穂が執筆するブログ「日本棋院埼玉県支部連合会」より
- ^ 2017年10月25日 朝日新聞
- ^ a b c 10億円獲得「井山裕太」 囲碁七冠の体力作りは「ビリーズブートキャンプ」? デイリー新潮
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- ^ 囲碁の井山裕太四冠が再婚 お相手は25歳の一般女性 朝日新聞デジタル 2019年7月25日。
- ^ タイトル50期、7大タイトル最多も更新 毎日新聞
- ^ 中央日報日本語版
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- ^ “渡辺明と井山裕太、名人対談 AIに「すごく息苦しい」:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年12月1日閲覧。
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- ^ “囲碁界の転換点だった碁聖戦 就位式で井山4冠明かす(オーヴォ)”. Yahoo!ニュース. 2021年12月2日閲覧。
- ^ “平成28年8月19日 井山裕太棋士に名誉市民称号を贈呈 | 東大阪市”. www.city.higashiosaka.lg.jp. 2021年12月2日閲覧。
- ^ “東大阪市囲碁フェスティバル | 東大阪市”. www.city.higashiosaka.lg.jp. 2021年12月2日閲覧。
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