ユーザーインターフェイススレッド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 17:12 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動歴史的経緯
GUIアプリケーションにおいて、応答性を維持するためには、基本的にフレームの描画およびユーザー応答(さまざまなユーザー入力に対するアクション)はできるかぎり高いフレームレートで処理しないといけない[1]。例えば60fps (frames per second) の場合、1フレームの処理を1/60秒=約16ミリ秒以内に完了する必要がある。しかし、たとえどれほどプロセッサの性能が向上したとしても、I/O処理や画像・動画のデコード、通信接続の確立など、完了までに長時間かかってしまう処理は必ず存在する。そういったものを含めて、すべての処理を1つのスレッドだけで実行すると、長時間かかる処理を実行している間はフレーム描画やユーザー応答の処理ができないため、UIの反応がなくなってしまう(ハングアップ、フリーズ)[2]。長時間かかる処理の途中に、フレーム描画やユーザー応答に関わるメッセージ処理をときどき挟みながら、長時間かかる処理を少しずつ進める、という方法もあるが[3][4][5]、スマートでないうえに適用限界がある。応答性の低下を防ぐためにマルチスレッド化が必要だが、それをどのようにしてソフトウェアの構造設計に持ち込むか、ということに関して、歴史的には1980年代から色々と議論があった。
例えば、JavaのAWTでは、1996年の最初の時点では、単純にスレッド間でデータ共有型のマルチスレッドになっていた。しかし、データ共有するには、ロックをかけないといけないが、親コンポーネントから子コンポーネントを呼んだり、コールバックで子から親を呼んだり、アプリケーションからGUIライブラリを呼んだり、GUIライブラリからアプリケーションをコールバックしたりと、双方向に呼び出すことが多く、異なるスレッド間で双方向に呼び合うときは、ロックの順番に注意を払う必要がある。これはソフトウェアが非常に複雑になる原因となってしまう。また、ロック順序のミスが引き起こすデッドロックは常にではなくたまに発生したりすることの多いバグ(時間的確率要因が関与する偶発性のあるバグ)であり、バグ取りが大変になるという問題があった[6]。
そこで、1997年のJavaのSwingからは、UIの操作は全てメインのUIスレッドであるイベントディスパッチスレッドから操作しなくてはならない、というルールを設けた。そして、2006年の Java 6 から、UIスレッドで重い処理をすることを避けるために、ワーカーデザインパターン(後述)を採用した javax.swing.SwingWorker
を搭載した。
現在[いつ?]では、多くのUIライブラリが、UIスレッドに操作を限定することと、ワーカーデザインパターンの組み合わせを採用している。
UIスレッドへの委譲
UIスレッドではないサブスレッドでの処理の進捗や完了を画面表示する場合などは、処理の途中でユーザーインターフェイス要素の操作が必要となる。そういった場面では、サブスレッドからUIスレッドに操作を依頼(委譲)することが、まず必要である。
Java
Javaの場合は、以下の方法で、UIスレッドに委譲できる。J2SE 1.3以降ではどちらもEventQueue
のメソッドが呼び出される実装となっている。
- 同期処理 -
SwingUtilities.invokeAndWait(Runnable)
,EventQueue.invokeAndWait(Runnable)
- 非同期処理 -
SwingUtilities.invokeLater(Runnable)
,EventQueue.invokeLater(Runnable)
同期処理は、処理が完了するまで待つ。
委譲される処理は、java.lang.Runnable
インターフェイスのrun()
メソッドの実装として記述する。
他のライブラリ
- .NET Framework/.NET Core
- Windows Forms:
System.Windows.Forms.Control.Invoke()
,System.Windows.Forms.Control.BeginInvoke()
- WPF:
System.Windows.Threading.Dispatcher.Invoke()
,System.Windows.Threading.Dispatcher.BeginInvoke()
- WPF 4.5:
System.Windows.Threading.Dispatcher.InvokeAsync()
- WPF 4.5:
- Windows Forms:
- Windowsランタイム/Windows UI Library:
Windows.UI.Core.CoreDispatcher.RunAsync()
[7][8] - Android:
Activity.runOnUiThread(Runnable)
,View.post(Runnable)
,View.postDelayed(Runnable, long)
[9]
.NETでは処理の委譲にデリゲートが使用されることが多い。
- ^ 必要となるフレームレートは、アプリケーションの用途やモニターのリフレッシュレートなどの環境によっても異なる。VRでは120fpsなど、さらに高いフレームレートが要求される。
- ^ Preventing Hangs in Windows Applications - Win32 apps | Microsoft Docs
- ^ Idle Loop Processing | Microsoft Docs
- ^ DoEvents function (Visual Basic for Applications) | Microsoft Docs
- ^ Application.DoEvents Method (System.Windows.Forms) | Microsoft Docs
- ^ Multithreaded toolkits: A failed dream?
- ^ WinRTにおける同期版の
CoreDispatcher.Invoke()
メソッドはWindows 8プレビュー版で実装されていたものの、最終的に製品版では削除された。 - ^ Fixing CoreDispatcher.Invoke – How to Invoke Method in UI Thread in Windows 8 Release Preview - Mikael Koskinen
- ^
Looper.getMainLooper()
で得たLooper
を使って作成したHandler
のpost(Runnable)
などを利用することもできる。 - ^ AsyncTask | Android Developers
- 1 ユーザーインターフェイススレッドとは
- 2 ユーザーインターフェイススレッドの概要
- 3 ワーカーデザインパターン
- 4 タイマー
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