ヤマボウシ 形態・生態

ヤマボウシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/11 08:50 UTC 版)

形態・生態

落葉広葉樹小高木から中高木[19][9]。通常高さ5 - 10メートル (m) [7]、幹の直径50センチメートル (cm) 程度までの小高木だが、稀に高さ15 m、直径70 cmに達する[12]。株立ちと1本立ちのものある[19]。成木の幹は灰褐色で、不規則に剥がれて濃淡のある斑模様になる[10]。樹皮の剥がれた痕は、うすい赤色に見える[14]。若木では樹皮の表面はほぼ滑らかで皮目がある[10]。枝は横に張り出す[12]。小枝は幹よりもやや暗い褐色で、細くてほぼ無毛である[20]

対生し、卵状楕円形で葉先は尖り、長さ4 - 12 cm、幅4 - 7 cmある[20][7]。葉縁は全縁でやや波打つ[20][17]。葉の表面は濃緑色、裏面は白味を帯び、両面とも軟毛が生える[20]葉脈は特に裏面ではっきりと目立ち、主脈から4 - 5本の側脈が弧を描いて延びる[20]。秋になると紅葉し、条件によって赤色、黄色、橙色、紫褐色とさまざまな色に染まる[4]。単純に色が染まる紅葉ではなく、葉脈部分以外は紫褐色などの色を帯びることもある[4]。葉が重なって日が当たらない部分は、黄色くなる[18]

花期は5 - 7月[16]。開花は近縁のハナミズキ(アメリカヤマボウシ)よりも遅く、葉が完全に開いてから、枝の先に上向きにまとまって多数の白い装飾花(実際は総苞)が上向きに咲く[20][6]。白色の花弁のように見える大きくて目立つ総包片が4枚(2対)あり、総苞片の中心に花序があり、淡黄緑色で小さい目立たないが、球状になって20個から40個ほど密集している[21][22][9]。花形は、ハナミズキに非常によく似ている[16]。総苞片の先端に窪みがあるのがハナミズキで、先端がとがるのがヤマボウシなので見分け点になる[14]。総苞片は長さ3 - 6 cmで[7]、形がさまざまあり、丸形から細身で4枚重ねがほとんどないものまである[14]。花付きが良く、満開時は花の重みで枝がしなる[19]。それぞれの小さい花が受粉して、果実をつくる[20][14]。落下前になるころには、白い総苞片は全体が紅色がかってくる[15]

果期は9 - 10月[14]果実集合果で、直径1 - 3 cmの球形、秋に赤く熟して、粘核性で甘味があり食用になる[14][9]。集合果はサッカーボールのように、皮を貼り合わせたように球形を作り、その1枚ごとに花柱の痕跡が残っている[14]種子は、大きさ約3ミリメートル (mm) の乳白色で、1果に8粒入っている[9]。ハナミズキの果実は集合果にならず、個々の果実が分離している。

落葉するころには冬芽ができている[4]。枝の先端に頂芽(葉芽)が1個つき、小枝に側芽が対生する[10]。花芽は長さ5 - 7 mmの球状で先端が尾状にとがり暗褐色[6][10]。葉芽は毛が多く、細長い円錐形で先端がとがり暗褐色、ともに芽鱗2枚に包まれている[6][10]。芽鱗はふつう、比較的早い段階で途中半分から切れてしまう[6]。花芽は混芽で、つけ根に葉柄基部がよく残る[10]。葉痕はV字形から三角形で、維管束痕が3個ある[10]


  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cornus kousa Buerger ex Hance subsp. kousa ヤマボウシ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年1月2日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Dendrobenthamia japonica (Siebold et Zucc.) Hutch. ヤマボウシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月2日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Benthamidia japonica (Siebold et Zucc.) H.Hara ヤマボウシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月2日閲覧。
  4. ^ a b c d e 亀田龍吉 2014, p. 56.
  5. ^ 井上辰雄 監修、日本難訓難語編集委員会 編『日本難訓難語大辞典』遊子館、2007年1月。ISBN 4-946525-74-2 [要ページ番号]
  6. ^ a b c d e 菱山忠三郎 1997, p. 30.
  7. ^ a b c d e 西田尚道監修 志村隆・平野勝男編 2009, p. 197.
  8. ^ a b 高橋秀男ほか 2012, p. 645.
  9. ^ a b c d e f g 山﨑誠子 2019, p. 192.
  10. ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 85.
  11. ^ a b c 辻井達一 1995, p. 268.
  12. ^ a b c 辻井達一 1995, p. 269.
  13. ^ 高橋秀男ほか 2012, pp. 642, 644.
  14. ^ a b c d e f g h i 田中潔 2011, p. 136.
  15. ^ a b c 辻井達一 1995, p. 271.
  16. ^ a b c d e f g 山﨑誠子 2019, p. 193.
  17. ^ a b c d e 平野隆久監修 1997, p. 258.
  18. ^ a b 林将之 2008, p. 67.
  19. ^ a b c d e f 正木覚 2012, p. 108.
  20. ^ a b c d e f g h 辻井達一 1995, p. 270.
  21. ^ 菱山忠三郎 1997, p. 31.
  22. ^ 長谷川哲雄 2014, p. 79.


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