ホテル・ビクトリア (トロント) 改修とリノベーション

ホテル・ビクトリア (トロント)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/02 15:01 UTC 版)

改修とリノベーション

ホテル・ビクトリアへの改称と最初の改修

ホテル・ビクトリアとヤング・ストリートの地下鉄建設現場。

開業以来、ホテル・モソップは、長年の間、利益を上げ続け、有名なカナダの実業界の大物エドワード・プランケット・テイラーから相当額の投資を受けていた。ホテル・モソップは地域社会の重要な部分となっており、1918年スペインかぜ大流行し、病院が患者たちを収容しきれなくなったときには、緊急の病院として使用され、これに対しトロント市当局から賞賛された。

1920年代になると、ホテル・モソップは財政上の困難に直面するようになった。この状況は、オンタリオ禁酒法英語版によって、当地でビール醸造所の株式を保有していたテイラーがホテル営業の免許を保持することができなくなるなど、飲酒に対する法的規制によって状況は一層悪化することになった。その結果、1927年にはホテルは休業に追い込まれ、ジョージとマシューのエリオット兄弟 (brothers George and Matthew Elliot) に売却された。相当な金額をかけて全面的に改修され、リノベーションがおこなわれたホテルを、エリオット兄弟は「ホテル・ビクトリア」として再開した。

以降、ホテルの経営状況は改善し、第二次世界大戦が勃発すると、トロントを席巻した愛国的感情にホテル・ビクトリアも加わって、戦費調達に協力する「チャーチル・クラブ (Churchill Club)」を設立した。戦後は、帰還した兵士の多くがホテル・ビクトリアを訪れ、このホテルはトロントでも最もよく知られたランドマークのひとつとなった。

ホテル・ビクトリアの宣伝用マッチブック英語版

1970年代の改修

1950年代から1960年代にかけて、大きな規模での改修はおこなわれず、ホテル・ビクトリアの収益性は徐々に損なわれ、挙句には「葉巻を咥えた山師たち、夜の女たち、ビール好きのベイ・ストリート (Bay Street) の株式仲買人たち」が集う場所として知られるに至った[5]1960年代末には、ホテルが負っていた負債も相当な金額に上っていた。

1971年、地元の不動産開発業者ポール・フェラン (Paul Phelan) がこの負債を引き受け、1万ドルでホテルを買収した[6]。フェランは200万ドル以上を投じてリノベーションをおこない、「ニューヨークやヨーロッパで再興されつつあった類のブティックホテル (a boutique hotel of the kind that had been undergoing a resurgence in New York and Europe)」を作り上げた。フェランは自らリノベーションの細部にまで関わり、「壁に掲げるヴィクトリア朝の印刷物をロンドンで買い集め、2階のバーを帆船愛好家のための空間にし、ケン・キャメロン (Ken Cameron) にロビーの暖炉の上を飾る油彩画を発注した」。その結果、1970年代から1980年代の前半にかけて、ホテルは再び利益を上げるようになった[7]

1980年代の改修

1984年9月、新たに制定された当地の防火条例によって、ホテルは新しい機械や安全装置類の導入が必要になったが、これを機に、フェランは不動産開発業者のチャールズ・ゴールドスミス (Charles Goldsmith) に250万ドルでホテルを売却した。

ゴールドスミスは、さらに250万ドルをかけてリノベーションをおこない、1年以上かかった工事を経て、1階正面の煉瓦壁をすべて撤去して構造的な鋼鉄とガラスのパネルに置き換え、ロビーに「アトリウム効果 (atrium effect)」をもたらすなどした。もともとあった大理石の壁や柱は修復され、もともとあった漆喰による天井のコーニス状の装飾は、職人が蝋で型を取って正確に形を複製して修理した。

ホテルは1986年3月に再開業し、高級ブティックホテルとして、1980年代から1990年代を通して成功を収めた。

1997年以降

1997年、ホテル・ビクトリアはシルバー・ホテル・グループ (Silver Hotel Group) によって買収された[8]2011年、ホテルのロビーや客室は全面的にリノベーションされた。開業当初からの大理石の柱や頂部の装飾的な繰形(モールディング)などは保存された。

2013年、ホテルの所有者は、階層をさらに8階分積み増して、高さを倍増させる増築の申請を市当局に提出した[9]。ホテルは、2017年6月にクワドリアル・プロパティ・グループ (QuadReal Property Group) に売却され、同社はブロック全体を再開発するマスタープランを立てた。シルバー・ホテル・グループは、引き続きこの物件のホテルとしての運営を続けている[10][11]

クワドリアルの計画では、ヤング・ストリート、ベイ・ストリート、ウェリントン・ストリート (Wellington Street)、アデレード・ストリート (Adelaide Street) で囲まれたブロック全体を解体ないし再開発しようとするものである[12]。この計画は、ヤング・ストリートに面した全ての建物を撤去し、ホテルのファサードだけを残すとしている。ホテルの玄関は、再開発された複合施設全体の入口として再利用される。複合施設の高層棟は64階建となる。複合施設の大部分はオフィス空間となるが、3階から8階までの一部は、ホテルとして利用される可能性がある。


  1. ^ Chris Bateman (2015年11月12日). “The five oldest hotels in Toronto”. Blog TO. https://www.blogto.com/city/2015/11/the_5_oldest_hotels_in_toronto/ 2018年4月25日閲覧. "Opened in 1909 as the Hotel Mossop, the 8-storey brick hotel was touted for its fireproof design." 
  2. ^ a b Toronto's New Fireproof Hostelry”. Construction Magazine. 2011年3月27日閲覧。
  3. ^ Past Presidents of Architecture Canada”. 2007年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年3月29日閲覧。
  4. ^ Roberts, Wayne (1976). “Artisans, Aristocrats and Handymen: Politics and Trade Unionism among Toronto Skilled Building Trades Workers, 1896-1914”. Labour 1: 92. http://www.lltjournal.ca/index.php/llt/article/viewFile/2317/2725 2011年3月27日閲覧。. 
  5. ^ “Old Vic makes second debut after a $3 million makeover”. Toronto Star. (1984-04-09). 
  6. ^ Brehl, Bob (September 1984). “'Fireproof' downtown hotel set to close”. The Toronto Star. 
  7. ^ Sadler, Joan (April–May 1986). “Hotel Victoria: a historical site just right for today”. Ontario Inkeeper. 
  8. ^ [1]
  9. ^ Craig White (2013年3月21日). “City Receives Application to Double Height of Hotel Victoria March 21, 2013”. Urban Toronto. オリジナルの2013年3月22日時点におけるアーカイブ。. https://www.webcitation.org/query?url=http%3A%2F%2Furbantoronto.ca%2Fnews%2F2013%2F03%2Fcity-receives-application-double-height-hotel-victoria&date=2013-03-22. "https://www.webcitation.org/query?url=http%3A%2F%2Furbantoronto.ca%2Fnews%2F2013%2F03%2Fcity-receives-application-double-height-hotel-victoria&date=2013-03-22" 
  10. ^ “QuadReal Property Group announces agreement to acquire 56 Yonge Street in Toronto”. Newswire (Vancouver, BC). (2017年6月2日). https://www.newswire.ca/news-releases/quadreal-property-group-announces-agreement-to-acquire-56-yonge-street-in-toronto-625957773.html 2018年4月25日閲覧. "QuadReal Property Group (QuadReal) announces that it has entered into an unconditional agreement to acquire 56 Yonge Street in Toronto, which is currently the site of the Hotel Victoria." 
  11. ^ DCN News (2017年6月16日). “QuadReal purchase adds to its Commerce Court block portfolio in Toronto”. Daily Commercial News. http://dailycommercialnews.com/en-US/Economic/News/2017/6/QuadReal-purchase-adds-to-its-Commerce-Court-block-portfolio-in-Toronto-1024770W/ 
  12. ^ Craig White (2017年12月21日). “QuadReal Proposes New 64-Storey Tower at Commerce Court”. Urban Toronto. http://urbantoronto.ca/news/2017/12/bcimcs-quadreal-plans-64-storey-commerce-court-3-tower 2018年4月25日閲覧. "Another part of the plan where heritage elements will be incorporated into the redevelopment is at 56 Yonge Street, a narrow 8-storey building known for the last many years as the Hotel Victoria. The heritage front will be kept, along with "a portion of the heritage to the depth of the first structural bay", while new structure would be built behind and above that. While hotel functions would be found on floors 3 through 8, the new levels above would be new office space." 


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