プルトニウム 同素体

プルトニウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 06:13 UTC 版)

同素体

常圧下でもプルトニウムは6種の同素体を持ち、それぞれ結晶構造や密度が大きく異なる。密度は最大のα相と最小のδ相では25 %以上も違う。特に、δ相は負の熱膨張を起こすという特異的性質を持つ[10]

プルトニウムの同素体[11][12]
結晶構造 密度/(g/cm3) 安定な温度範囲
α 単斜晶(単純格子) 19.86 <115 °C
β 単斜晶(体心格子) 17.70 115 – 185 °C
γ 斜方晶(面心格子) 17.14 115 – 310 °C
δ 立方晶(面心格子) 15.92 310 – 452 °C
δ′ 正方晶(体心格子) 16.00 452 – 480 °C
ε 立方晶(体心格子) 16.51 480 – 640 °C

様々な同素体を持つということが、プルトニウムの機械加工を非常に難しいものにしている。加工時に加わる熱や圧力によって、相が非常に容易に変わってしまうからである。このような複雑な相変化をする原因は完全には解明されていない。最近の研究では、相変化の精密なコンピュータモデルが着目されている。

兵器への利用においては、相の安定性を増し加工性と取り扱いを容易にする目的で、他の金属と合金にして用いられる(数%のガリウムを加えるなど。「プルトニウムガリウム合金」参照)。核兵器においては、プルトニウムのコアを爆縮するための衝撃波も相変化の原因になる。この場合には通常のδ相からより密度の高いα相に変化するので、超臨界状態[注釈 1]を実現するのに大いに助けになる。


出典

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  2. ^ BNL-NCS 51363, vol. II (1981), pages 835ff
  3. ^ Clark, David L.; Hobart, David E. (2000). "Reflections on the Legacy of a Legend: Glenn T. Seaborg, 1912–1999". Los Alamos Science 26: 56–61, on 57.
  4. ^ 高岡宏「スポーケンを包む自然背景―大地と水―」『Mukogawa literary review』第44号、武庫川女子大学英文学会、2008年、 25-40頁、 doi:10.14993/00001942ISSN 13409441NAID 120006940011
  5. ^ 西松裕一「資源・エネルギー問題試論」『Journal of MMIJ』第129巻第1号、資源・素材学会、2013年1月、 1-10頁、 doi:10.2473/journalofmmij.129.1ISSN 18816118NAID 10031141144
  6. ^ Q:プルトニウムが敷地内で検出されたようですが、大丈夫でしょうか? (PDF) 北海道大学工学研究院(2021年7月31日閲覧)
  7. ^ 「プルトニウム保有量46トンに 削減方針後、初めて増加」朝日新聞デジタル(2021年7月9日)2021年7月31日閲覧
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  11. ^ Baker, Richard D.; Hecker, Siegfried S.; Harbur, Delbert R. (Winter–Spring 1983). “Plutonium: A Wartime Nightmare but a Metallurgist's Dream”. Los Alamos Science (Los Alamos National Laboratory): 148, 150–151. http://library.lanl.gov/cgi-bin/getfile?07-16.pdf. 
  12. ^ Moody, Kenton James; Hutcheon, Ian D.; Grant, Patrick M. (2005-02-28). Nuclear forensic analysis. CRC Press. p. 168. ISBN 978-0-8493-1513-8. https://books.google.co.jp/books?id=W3FnEOg8tS4C&pg=PA168&redir_esc=y&hl=ja 
  13. ^ Samuel, Glasstone; Leslie M., Redman (1972年6月). An Introduction to Nuclear Weapons. https://nige.files.wordpress.com/2009/10/glasstone-introduction-to-nuclear-weapons-72a.pdf 
  14. ^ 原子炉級プルトニウム”. ATOMICA. 2021年3月20日閲覧。
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  16. ^ 「使用済み核燃料から核兵器できる? 製造可能、米は実験成功」『日本経済新聞』2013年11月10日15面。実験成功は1962年、秘密解除は1977年7月。
  17. ^ 槌田敦「日本核武装によるアジア核戦争の恐怖」『核開発に反対する物理研究者の会通信』第42号(2006年12月)
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  19. ^ 松岡理『Plutonium』1993年1月第一号(原子燃料政策委員会発行)
  20. ^ 今中哲二「セラフィールド再処理工場からの放射能放出と白血病」原子力資料情報室通信』369号(2005年3月1日)
  21. ^ Lawrence Livermore National Laboratory (2006). Scientists resolve 60-year-old plutonium questions. Retrieved on 2006-06-06. http://www.sciencedaily.com/releases/2006/06/060607084030.htm
  22. ^ 長崎県原爆被爆者対策課発行『放射能Q&A
  23. ^ a b c プルトニウムの人体影響 : 高等学校 : あとみん-原子力・エネルギー教育支援情報提供サイト
  24. ^ 「相次ぐヨウ素やプルトニウム検出―我々の生活はどのぐらい危険か」ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』
  25. ^ a b 松岡理 「プルトニウム物語」
  26. ^ a b c プルトニウムの毒性と取扱い 原子力百科事典 ATOMICA
  27. ^ a b c 京都大学原子炉実験所 小出裕章:プルトニウムという放射能とその被曝の特徴 (PDF) (2006年7月15日)
  28. ^ a b プルトニウム - 丸善出版公式サイト内のPDFファイル。
  29. ^ 原子力安全委員会資料『原子力安全白書』
  30. ^ 20 years for liver and 50 years for skeleton アイダホ大学
  31. ^ 実効線量係数
  32. ^ 内部被ばくに関する線量換算係数 (財)原子力安全研究協会
  33. ^ プルトニウムの被ばく事故 - 原子力百科事典ATOMICA
  34. ^ あとみん (3)発がん性
  35. ^ 最小臨界量”. ATOMICA (2007年2月). 2021年3月20日閲覧。
  36. ^ Crooks, William J. (2002). Nuclear Criticality Safety Engineering Training Module 10 - Criticality Safety in Material Processing Operations, Part 1. Retrieved on 2006-02-15.
  37. ^ Matlack, George: A Plutonium Primer: An Introduction to Plutonium Chemistry and It's Radioactivity (LA-UR-02-6594)
  38. ^ Eileen Welsome, The Plutonium Files: America's Secret Medical Experiments in the Cold War、邦訳『プルトニウムファイル』上・下(翔泳社

注釈

  1. ^ 物性物理学における超臨界とは意味が異なることに注意。原子力工学では核分裂連鎖反応が時間とともに増加することを意味する。





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