プルトニウム 名称

プルトニウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 06:13 UTC 版)

名称

原子番号92のウラン、93のネプツニウムがそれぞれ太陽系惑星天王星海王星に因んで命名されていたため、これに倣って当時海王星の次の惑星と考えられていた冥王星 pluto から命名された。発見者のグレン・シーボーグは冗談で元素記号に Pu を選んだ。子供が臭いときに叫ぶPee-Yoo!を連想するからだが[3]、特に問題にならずに周期表に採用された。

表記ゆれ

プルトニュウム[4][5]など。

概要

ウラン鉱石中にわずかに含まれていることが知られる以前は、完全な人工元素と考えられていた。超ウラン元素で、放射性元素である。プルトニウム239プルトニウム241その他いくつかの同位体が存在している。半減期はプルトニウム239の場合約2万4000年(α崩壊による)。比重は19.8で、金属プルトニウムは、ニッケルに似た銀白色の光沢を持つ大変重い金属である(結晶構造は単斜晶)。融点は639.5 °C沸点は3230 °C(沸点は若干異なる実験値あり)。硝酸濃硫酸には酸化被膜ができ、溶けない。塩酸希硫酸などには溶ける。原子価は+3〜+6価(+4価が最も安定)。金属プルトニウムは、特に粉末状態において自然発火することがある。塊の状態でも、湿気を含む大気中では自然発火することがあり、過去のプルトニウム事故の多くが、この自然発火の結果とされている。プルトニウムとその化合物は人体にとって非常に有害とされたが、化学的な毒性は他の一般的な重金属と同程度である[6]。またプルトニウムは放射性崩壊によってα線を放出するため、ヒトを含む動物の体内、特にに蓄積されると強い発癌性を示すとされている。

原子炉において、ウラン238中性子を捕獲してウラン239となり、それがβ崩壊してネプツニウム239になり、さらにそれがβ崩壊してプルトニウム239ができる(原子炉内では他のプルトニウム同位体も多数できる)。ウラン238は天然に存在するのでネプツニウム239とプルトニウム239は極微量ながら天然にも存在する。また半減期が約8000万年とプルトニウム同位体の中では最も長いプルトニウム244も極微量ながら天然に存在する。なお、プルトニウム239およびプルトニウム240とそれらの放射壊変物の飛沫の吸引は 世界保健機関(WHO)の下部機関IARCにより「発癌性がある」(Type1)と勧告されている。

プルトニウムは主に核兵器の原料や、プルサーマル原子力発電におけるMOX燃料として使用される。人工衛星の電源として原子力電池として使用されたこともある。核不拡散と、核テロリズム原子力事故防止のため、プルトニウムの所在は国際機関や各国政府により厳しく監視・管理されている。日本は2020年末時点で、英仏への再処理委託により生じた分を含めて国内に約8.9トン、海外に約37.2トン、合計で約46.1トンのプルトニウム(うち核分裂性は約30.5トン)を保有している[7]

特性

金属プルトニウムは銀白色であるが、酸化されると黄褐色となる。金属プルトニウムは温度が上がると収縮する。また、結晶構造の対称性が低いため、時間経過と共に脆くなる。

水溶液中では以下の5種類の酸化数を取りうる。

プルトニウム塩は様々な色を示す。
註:プルトニウム塩水溶液の色は、酸化数だけでなく配位する陰イオンの種類にも依存する。
  • +III価 () - 青紫色
  • +IV価 () - 黄褐色
  • +V価 () - ピンク色と考えられている。+V価のイオンは溶液中では不安定で、不均化する。さらにその に酸化し、自身は になる。このためプルトニウム塩の水溶液は時間が経過すると の混合物に変化する傾向がある。
  • +VI価 () - ピンク・オレンジ色
  • +VII価 () - 暗赤色のイオンであり、極端な酸化性雰囲気でのみ生成する。

出典

  1. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds Archived 2012-01-12 at the Wayback Machine., in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  2. ^ BNL-NCS 51363, vol. II (1981), pages 835ff
  3. ^ Clark, David L.; Hobart, David E. (2000). "Reflections on the Legacy of a Legend: Glenn T. Seaborg, 1912–1999". Los Alamos Science 26: 56–61, on 57.
  4. ^ 高岡宏「スポーケンを包む自然背景―大地と水―」『Mukogawa literary review』第44号、武庫川女子大学英文学会、2008年、 25-40頁、 doi:10.14993/00001942ISSN 13409441NAID 120006940011
  5. ^ 西松裕一「資源・エネルギー問題試論」『Journal of MMIJ』第129巻第1号、資源・素材学会、2013年1月、 1-10頁、 doi:10.2473/journalofmmij.129.1ISSN 18816118NAID 10031141144
  6. ^ Q:プルトニウムが敷地内で検出されたようですが、大丈夫でしょうか? (PDF) 北海道大学工学研究院(2021年7月31日閲覧)
  7. ^ 「プルトニウム保有量46トンに 削減方針後、初めて増加」朝日新聞デジタル(2021年7月9日)2021年7月31日閲覧
  8. ^ a b アルゴンヌ国立研究所『Human Health Fact Sheet』2001年10月
  9. ^ The Chemistry of Actinide Elements Argonne National Laboratory
  10. ^ Söderlind, P. (2001-8). “Ambient pressure phase diagram of plutonium: A unified theory for α-Pu and δ-Pu” (英語). EPL (Europhysics Letters) 55 (4): 525. doi:10.1209/epl/i2001-00447-3. ISSN 0295-5075. http://iopscience.iop.org/article/10.1209/epl/i2001-00447-3/meta. 
  11. ^ Baker, Richard D.; Hecker, Siegfried S.; Harbur, Delbert R. (Winter–Spring 1983). “Plutonium: A Wartime Nightmare but a Metallurgist's Dream”. Los Alamos Science (Los Alamos National Laboratory): 148, 150–151. http://library.lanl.gov/cgi-bin/getfile?07-16.pdf. 
  12. ^ Moody, Kenton James; Hutcheon, Ian D.; Grant, Patrick M. (2005-02-28). Nuclear forensic analysis. CRC Press. p. 168. ISBN 978-0-8493-1513-8. https://books.google.co.jp/books?id=W3FnEOg8tS4C&pg=PA168&redir_esc=y&hl=ja 
  13. ^ Samuel, Glasstone; Leslie M., Redman (1972年6月). An Introduction to Nuclear Weapons. https://nige.files.wordpress.com/2009/10/glasstone-introduction-to-nuclear-weapons-72a.pdf 
  14. ^ 原子炉級プルトニウム”. ATOMICA. 2021年3月20日閲覧。
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  16. ^ 「使用済み核燃料から核兵器できる? 製造可能、米は実験成功」『日本経済新聞』2013年11月10日15面。実験成功は1962年、秘密解除は1977年7月。
  17. ^ 槌田敦「日本核武装によるアジア核戦争の恐怖」『核開発に反対する物理研究者の会通信』第42号(2006年12月)
  18. ^ a b National Academy of Sciences, Committee on International Security and Arms Control (1994). Management and Disposition of Excess Weapons Plutonium.
  19. ^ 松岡理『Plutonium』1993年1月第一号(原子燃料政策委員会発行)
  20. ^ 今中哲二「セラフィールド再処理工場からの放射能放出と白血病」原子力資料情報室通信』369号(2005年3月1日)
  21. ^ Lawrence Livermore National Laboratory (2006). Scientists resolve 60-year-old plutonium questions. Retrieved on 2006-06-06. http://www.sciencedaily.com/releases/2006/06/060607084030.htm
  22. ^ 長崎県原爆被爆者対策課発行『放射能Q&A
  23. ^ a b c プルトニウムの人体影響 : 高等学校 : あとみん-原子力・エネルギー教育支援情報提供サイト
  24. ^ 「相次ぐヨウ素やプルトニウム検出―我々の生活はどのぐらい危険か」ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』
  25. ^ a b 松岡理 「プルトニウム物語」
  26. ^ a b c プルトニウムの毒性と取扱い 原子力百科事典 ATOMICA
  27. ^ a b c 京都大学原子炉実験所 小出裕章:プルトニウムという放射能とその被曝の特徴 (PDF) (2006年7月15日)
  28. ^ a b プルトニウム - 丸善出版公式サイト内のPDFファイル。
  29. ^ 原子力安全委員会資料『原子力安全白書』
  30. ^ 20 years for liver and 50 years for skeleton アイダホ大学
  31. ^ 実効線量係数
  32. ^ 内部被ばくに関する線量換算係数 (財)原子力安全研究協会
  33. ^ プルトニウムの被ばく事故 - 原子力百科事典ATOMICA
  34. ^ あとみん (3)発がん性
  35. ^ 最小臨界量”. ATOMICA (2007年2月). 2021年3月20日閲覧。
  36. ^ Crooks, William J. (2002). Nuclear Criticality Safety Engineering Training Module 10 - Criticality Safety in Material Processing Operations, Part 1. Retrieved on 2006-02-15.
  37. ^ Matlack, George: A Plutonium Primer: An Introduction to Plutonium Chemistry and It's Radioactivity (LA-UR-02-6594)
  38. ^ Eileen Welsome, The Plutonium Files: America's Secret Medical Experiments in the Cold War、邦訳『プルトニウムファイル』上・下(翔泳社

注釈

  1. ^ 物性物理学における超臨界とは意味が異なることに注意。原子力工学では核分裂連鎖反応が時間とともに増加することを意味する。





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