バラク・オバマの国籍陰謀論 選挙資格の訴訟

バラク・オバマの国籍陰謀論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 23:16 UTC 版)

選挙資格の訴訟

数多くの個人やグループが、オバマにはアメリカ合衆国大統領へ立候補あるいは就任する資格がないことの確認を求めたり、市民権に関連する追加書類の開示を強制することを求めて州または連邦政府を相手取り訴訟を起こした[236]。 2008年12月中旬までに、ノースカロライナ州[237]、オハイオ州[238]、ペンシルベニア州[239]、ハワイ州[240]、コネチカット州[241]、ニュージャージー州、テキサス州およびワシントン州[240][242]などの州で、オバマ適格性に異議を唱える訴訟が少なくとも17件提起されたが、いずれの訴訟においても裁判所は原告の請求を棄却している。

このような市民訴訟 (citizen suitにおける大きな障害は、大統領候補者または大統領選挙人であったアラン・キーズ英語版を除いて、原告が当事者適格を欠いていることにある。 ペンシルベニア州東部地区連邦地方裁判所のR・バークレー・サリック (Richard Barclay Surrick判事は、ある訴訟を棄却した際に当事者適格の重要性について次のように説明した。判事は、当事者適格性を要件とする主な目的の一つは、裁判所が「損害があまりにも曖昧な」問題には判断を下さないようにすることであると指摘している。 これは、個人的な損害を受けていないが選挙結果に不満を持つ有権者が「人々が記憶している中でもっとも過酷な予備選挙において過剰ともいえる身元調査を受け、何千何百万人もの人々が投票した候補者を無効にすることで、民主主義のプロセスを脱線させようとしている」大統領選挙の場合、特に当てはまるものである[243]

ジョセフ・ファラーは、ワールド・ネット・デイリーの出版物を通じて、オバマは「すべての疑問の答えとなる州の出生証明書の公表を阻止するために数十万ドルと推定される額を支出することを決めた」と述べた[244]。 ファラーのワールド・ネット・デイリーは、オバマが大統領選でパーキンス・クイ英語版法律事務所に支払った額に基づき、主張する支出額を170万ドルに引き上げた。しかし、マザー・ジョーンズ英語版誌が指摘しているようにオバマ陣営が弁護士を雇ったのは大統領選後の業務縮小と選挙資金規制法の要件を満たすため必要にかられてであり[245]、訴訟でオバマ大統領を代理する弁護士のうち少なくとも1人は 無給(プロボノ)で働いていると述べている[246]。またマザー・ジョーンズ誌がインタビューした他の弁護士は、「バーサー」訴訟は簡単に勝てるので、金銭的には「極めて最小限」のコストで解決できたと述べている[245]

バーグ対オバマ

2008年8月21日、ペンシルベニア州弁護士、民主党員で[247]、元州検事総長代理のフィリップ・J・バーグ英語版は、オバマはハワイではなくケニア生まれであるため、ケニア市民あるいは幼少期に住んでいたインドネシアの市民であるとして提訴し[248][249][250]、オバマのウェブサイトで公開されている「出生証明書(Certification of Live Birth)」は偽造されたものであると主張した[251]。2008年10月、連邦地方裁判所R・バークレー・サリック判事は、バーグには訴訟を提起する資格がなく、主張のために資格を得ようとする試みは「軽薄かつ議論に値しない」として訴状を却下した[247][252]

バーグは第3巡回区控訴裁判所英語版を通して合衆国最高裁判所に裁量上訴令状(移送令状)を求める請願書(Petition for writ of certiorari)を提出した。2008年12月10日、最高裁は12月15日に予定されていた選挙人団による大統領を決める投票の差し止め請求を却下した[253]。2008年12月15日にバーグ陣営は差し止め請求を再提出したが[254]、2日後、最高裁判事アンソニー・ケネディはコメントもなく訴えを退けた[250]。バーグは前回却下された裁量上訴令状請求を2008年12月18日にアントニン・スカリア判事宛に再度提出し[254]、最高裁は1月12日これを却下した。スカリア判事に宛てられ、裁判所に付託された停止申し立ても2009年1月21日に略式で却下された[254]

2009年11月12日、第3巡回区控訴裁判所はバーグには訴えを起こす資格がないとする連邦地裁の判決への支持を表明した[255]

マーティン対ハワイ州知事リングル

2008年10月17日、アンディ・マーティン英語版がハワイ州巡回裁判所に訴訟を起こした[103]。このアンディ・マーティンは、かつて第11巡回区控訴裁判所から「長年アメリカの司法制度を乱悪用してきた悪名高く執念深い訴権乱用の訴訟家」で、訴訟を「彼の敵に対する残酷で効果的な武器として」使用していると断言された人物であった[256]

マーティンは訴状で州政府に対し、オバマ上院議員の出生証明書全文(long form)の写しを公開するよう求めた[103]。ネット上でオバマ陣営が公開した出生証明書の抄本(short form)には出生地はハワイ、ホノルルであることが記載されているが[103]、マーティンは「事実に基づいて正確さを追求し徹底的な調査を行う」ため、「ウェブサイト上に掲載された」証明書ではなく、州からオバマの出生証明書の写しを入手する必要があると主張した。ハワイの法律では、記録の関係者、または配偶者、両親、子孫、または共通の祖先を持つ人、またはその代理を務める人だけが、生体記録の写しを取得することができるとされている。

裁判所は、マーティンは「当該記録に関する直接かつ具体的な利益」を欠いているとして訴えを却下し[257]、他人の出生に関する文書を取得する法的地位も欠いていることを指摘した[258]

ドノフリオ対ウェルズ

2008年10月、ニュージャージー州の弁護士レオ・ドノフリオ(Leo Donofrio)が、オバマと共和党大統領候補ジョン・マケインおよび社会主義労働者党大統領候補ロジャー・カレーロ英語版の大統領適格性を問う訴訟を起こした(相手方はニュージャージー州総務長官ニナ・ミッチェル・ウェルズ英語版[63]。ドナフリオは、オバマはアメリカとイギリスの二重国籍であり、マケインはパナマ運河地帯生まれ、カレーロはニカラグア国籍を未だ保持しており、3名とも大統領には不適格だと主張した[112]

なおドナフリオは他の者とは違いオバマはハワイの外で生まれたとは主張していない[259]。またオバマがアメリカ国籍を保持していることも争ってはおらず、「出生による合衆国市民」かどうかを問うたのみである[260]

本件はクラレンス・トーマス判事によって最高裁に付託されたが、訴状が届いた2008年12月8日、最高裁はコメントすることもなく審理を拒否した[112]

ロトノウスキ対バイサウィッツ

2008年10月31日、コネチカット州グリニッジ在住の健康食品店オーナー、コート・ロトノウスキが、コネチカット州州務長官スーザン・バイサウィッツ英語版を相手取りコネチカット州最高裁判所英語版に大統領候補オバマのハワイの出生証明書の真偽を問う裁判を起こした。訴えは却下された[261]

ロトノウスキは11月25日、連邦最高裁に上訴し[262]、オバマの父親が英国市民権を持つことから次期大統領は大統領に就任する資格がないと訴えた。先に訴訟が却下されていたレオ・ドノフリオもロトノウスキを支援した[263]。 大統領就任差し止め請求は2008年12月15日に裁判所からのコメントなしで却下された[262][264]

裁判経験が豊富で最高裁判決に詳しい弁護士のトーマス・ゴールドスタイン英語版は次のように述べている。「もしここ(アメリカ合衆国)で生まれたなら、出生による合衆国市民(natural born citizen)であるというのが法の考え方です。そしてオバマの母親もそうですが合衆国市民が親であるなら、なおさらそうでしょう。」[264]

キーズ対ボーエン

保守活動家アラン・キーズ英語版アメリカ独立党書記長マーカム・ロビンソン(Markham Robinson)およびカリフォルニア州選挙人候補者は、2008年11月14日、オバマが出生による合衆国市民 (natural born citizenであることを示した文書の提出を求める訴訟を起こした[265][266][267][268]。 キーズはインタビューで、本件は憲法に定められた要件の修正を求めたものではないと述べ[269]、オバマの父方の義理の祖母は「バラク・オバマが出生による合衆国市民で大統領になる資格があるか疑いをもっている」と述べていると主張した[119][270][271]

カリフォルニア州最高裁判所判事マイケル・P・ケニー(Michael P. Kenny)は、キーズの職務執行令状(writ of mandate)請願に対する州務長官デブラ・ボーエン英語版とオバマによる異議申し立てを、訴状の修正許可を出さずに認め、さらにオバマの召喚令状を無効にする申し立ても認めた。またキーズには当該記録を受け取る権利がないとの判断が示され、訴えは無効とされた[272][273]カリフォルニア州控訴裁判所英語版は2010年10月25日、カリフォルニア州最高裁判決を支持する旨を表明した[274]

アンケニー対インディアナ州知事

2008年12月、スティーブ・アンケニー(Steve Ankeny)とビル・クルース(Bill Kruse)は、インディアナ州知事に対してバラク・オバマとジョー・バイデンを Chief Electors〔ママ〕に任命するための一般投票を禁止する「特別禁止令状の申立(Petition for Extraordinary Writ of Prohibition)」を提出した。2009年3月16日の審理で、知事の棄却申し立てが認められた。原告はインディアナ州控訴裁判所に上訴し、控訴裁は2009年11月12日にこの判決を支持した。[275]

控訴審判決は、オバマの父親が米国市民権を持っていないことがオバマの大統領資格に影響を与えたかという問題に対して「憲法第2条第1項第4項の文言とウォン・キム・アーク裁判で示されたガイダンスに基づき、我々は、米国国境内で生まれた人は、両親の市民権に関係なく、第2条第1項の目的のため『出生による合衆国市民』であると結論づける」と述べている[276]

カーシュナー対オバマ

2009年1月、チャールズ・カーシュナー(Charles Kerchner)他原告の代理人弁護士マリオ・アプッツォ(Mario Apuzzo)は、オバマは大統領に不適格であり、議会はその確認を怠ったとして、オバマおよびアメリカ合衆国議会ディック・チェイニー上院議長、ナンシー・ペロシ下院議長を提訴した。ニュージャージー州連邦地方裁判所は、原告は法律上の利益を有しないとして訴えを却下した。2010年7月3日、第3巡回区控訴裁判所は「バーグ対オバマ」を引用して却下判決を支持し、アプッツォに軽薄な訴訟を起こしたことに対する制裁を免れる理由があればそれを示すよう命じた[277]。その後のアプッツォの審問要求は却下されたが、理由を示せとの命令は取り消された[278][279]。2010年11月29日、米国最高裁はコメントなしで審理を拒否した[280]

バーレット対オバマ

2009年1月20日の午後、弁護士(兼歯科医)オーリー・テイツはウィリー・ドレイク英語版らを原告としてオバマを連邦裁判所に提訴した(「Alan Keyes et al v. Barack H. Obama et al」)[281]。2009年7月13日、裁判長が再訴可能として訴えを棄却したところ[282]、翌7月14日、テイツはアラン・キーズ、ウィリー・ドレイク、シンシア・デイヴィス英語版、ゲイル・ライトフット(Gail Lightfoot)他、地方政治家や軍人らを原告として再訴した(Captain Pamela Barnett v. Barack Hussein Obama[283]。テイツは、オバマは大統領就任資格がないとする確認判決と大統領としての行動や指名を無効にする差止命令を求めた[284]

その後、原告のマーカム・ロビンソンとウィリー・ドレイクは、弁護士オーリー・テイツが弁護士代理人書類への署名を拒否し、代わりに2人の原告からの解任を申請したとしてテイツの解任を試みた。2009年9月8日、デイビット・O・カーター英語版判事は、ロビンソンとドレイクを原告から解任する申請を棄却、United States Justice Foundationのゲーリー・クリープ(Gary Kreep)を代理弁護人とする申出を認め、アーサー・ナカザト(Arthur Nakazato)判事の解任を拒否し、2010年1月26日を公判期日とした[285]

2009年10月5日の審理でカーター判事は、被告の棄却申立を検討したが「まだ検討すべき事項がある」として判決を先送りした[286]。2009年10月7日、カーター判事はこれまで暫定的に予定されていた略式判決申立と公判日程を確定する議事録命令を発表し[287]、2009年10月29日に訴えを棄却した[288]。2011年12月22日、第9巡回区控訴裁判所は原告には大統領就任資格を訴える当事者資格が無いとして、棄却判決を支持した[289][290]。2012年6月11日、最高裁はコメントなしで審理を拒否した[291]

2012年8月14日、テイツは新たな証拠を挙げてカーター判事に本件を再審するよう申請したが[292]、2012年8月31日、申立は却下された[293]

ホリスター対ソエトロ

2009年3月5日、退役空軍大佐グレゴリー・S・ホリスター(Gregory S. Hollister)の代理人弁護士フィリップ・バーグが、バラク・オバマ(訴状ではオバマがインドネシア小学校時代に使用した名前「バリー・ソエトロ」を使用)を相手取り訴訟を起こした。コロンビア特別区連邦地方裁判所 (United States District Court for the District of Columbiaは訴えを却下し、裁判長ジェームズ・ロバートソン英語版は、この訴訟は裁判所の時間の無駄であ、バーグともう一人の弁護士は「挑発者のエージェント」、地元の弁護士ジョン・ヘメンウェイ(John Hemenway)は「彼らの聖戦における歩兵」だとした。また「嫌がらせのような不適切な目的で」訴状を提出したことに対するペナルティとして、ヘメンウェイがオバマの弁護士費用を支払わなくてもよいとする理由がもしあれば示すようヘメンウェイに命じた[294]。 地裁は最終的にヘメンウェイを叱責し、コロンビア特別区巡回区控訴裁判所は訴訟の却下とヘメンウェイへの叱責を支持した[277]

クック対グッド

2009年2月1日、米陸軍予備役少佐ステファン・クック(Stefan F. Cook)は、オーリー・テイツにメールを送り、訴訟への参加を申し出た。5月8日、クックは2009年7月15日から1年間のアフガニスタン派遣志願を申請した[295]。軍は志願を受けて派遣当日軍に出頭するようクックに命令した[295]。だが7月8日、クックはテイツを弁護士とし、オバマは出生による合衆国市民ではなく米軍の最高指揮官としての資格に欠けるため派遣命令は無効であるとして、保全処分と良心的兵役拒否者の地位を求める訴えを起こした[296]。軍は直ちに派遣命令を取り消した。広報官は「現役復帰を志願した予備役軍人に対する派遣命令は、出頭期日前であれば取り消されることもある」とコメントした[295]。これにより、クックの訴訟は「ムート」であるとして7月16日棄却された[297][298]

ジョージア州中部地区連邦地方裁判所(en)に提起されたこの訴訟(「Stefan Frederick Cook v. Wanda L. Good」。Wand L. Goodは米陸軍人事部の大佐)において、クックは「この大統領の指揮下で米国外で軍事行動に従事するならば国際法に違反して行動することになる。...同時に、任務を忠実に遂行した場合は戦争犯罪人として起訴される可能性もある」と主張した[296]。なおアフガニスタンへの派遣を志願する前の4月、テイツがオバマの米市民権問題を提起した手紙に書かれたリスト(テイツによれば原告のリスト)にはクックの名前も含まれていた[299]。 クックがジョージア州で起こした訴訟には、他にも退役した陸軍少佐と予備役空軍中尉も原告団に加わった。クックへの派遣命令は取り消された後、政府広報官は「中央特殊作戦軍指揮官は、クック少佐には従軍を求めないことを決め、派遣命令を取り消した」と説明した[174]。 アメリカ中央軍広報官は、派遣命令取り消しはクックの主張を認めたものだとする話は誤りだと一蹴し、「クック少佐あるいは彼の弁護人による奇怪な主張は決して認められない。これ(命令取り消し)が大統領の適任性に関する嫌疑を認めるものだとする考えはまさに誤っている」と述べた[300]

提訴後テイツは、クックは職場が「異常な状況(nutty and crazy)」になったため勤めていた民間軍事関連会社を解雇されたと訴えた[301]

2009年7月16日、クックの訴訟はFOXニュースショーン・ハニティーの番組で大きく取り上げられた[295][302][303][304][305]

ハニティーは2番目のリポートで次のように述べている:

火曜日の放送で、オバマ大統領が米国市民であることを 証明していないという理由で派遣命令に異議を唱えた陸軍予備役の兵士、テファン・フレデリック・クック少佐についてお伝えしました。少佐は近日中にアフガニスタンに派遣される予定でしたが、その命令は取り消されました。彼の弁護士は「『命令は取り消しだ』とだけ言われました。何の説明もなく、理由もなく、ただ取り消されたました」と述べています。クック少佐と彼の弁護士はこれを軍側が大統領が生まれながらにして合法的な市民ではないことを認めたものだととらえ、結果を喜んで受け止めています。[303][304]

ハニティーは「バーサー」運動を広めたことで批判を受けた[304][305]。 ブログNews Hounds には次のような指摘もある:

FOXニュースの報道は、バラク・オバマは米国で生まれていないので違法な大統領であると主張し続ける、不合理で根拠のない陰謀論者「バーサー」たちに正当性を与えている。ショーン・ハニティーの、オバマは大統領になる資格がないという理由でアフガニスタンへの派兵に異議を唱えている兵士についての報道もそのひとつだ。ハニティーは、オバマの出生証明書が入手可能であることやバーサーの主張が徹底的に調べ上げられ完全に否定されていることをリポートの中で指摘していない。さらに昨夜(2009年7月15日)は、派遣命令の取り消しは少佐の主張が真実であることを示すものだと更に踏み込んだ報道をした。だがハニティーはこの兵士のペテンを示す重要な詳細については触れていない。グーグルで検索してみればすぐに見つかる、ジョージア・レジャー・インクワイアラー紙〔ママ〕の記事でもこの点は指摘されている。 クックは、5月8日にアフガニスタンでの任務を申請した。これはオバマが大統領に就任してからかなり後のことだ。そして約2ヶ月後の今になってオバマには大統領になる資格がないと主張している。そして「形式的」ともいえるこの「命令」を取り消すため、彼は行政手続きをとる代わりに連邦裁判所に訴えたのだ。
News Hounds,[304] citing The Ledger-Enquirer[295]

コロンバス・レジャー・インクワイアラー(en)紙でこの訴訟が報道されると、同紙は「書面による脅迫もあったが、1つの記事で過去最高のアクセス数」で、数百通の電子メールを受け取り50万人近くの新規読者を獲得したという。脅迫があったことから、クック訴訟が審理された裁判所周辺では警備が強化された、事件に関する新聞記者を保護するための予防措置がとられた。編集長のベン・ホールデンは次のように述べている。「彼らには正義感をもっているのを感じました - 宗教的とも言っていいような正義感を。彼らは今の大統領(オバマ)を憎んでいるんです」[306]

ローズ対マクドナルド

2009年9月、テイツは、米陸軍の軍医コニー・ローズ(Connie Rhodes)大尉の代理人として、ローズのイラク派遣を阻止するため派遣差止命令を求める訴訟を起こした(Rhodes v. MacDonald。相手方はフォート・べニング駐屯地指揮官トマス・マクドナルド)。テイツは、禁止命令の要求の中でオバマ大統領が違法に大統領を務めているためこの命令は違法であると主張した。9月16日、連邦判事クレイ・D・ランド(Clay D. Land 。クック対グッド事件の審理をした判事)はこの申し立てを却下し、軽薄なものであるとして非難した[307]

判決から数時間後、テイツはニュースサイト「トーキング・ポインツ・メモ英語版で、訴訟を審理することを拒否したランドの行為は反逆罪にあたる行為だと思うと述べた[308]。2日後、テイツは棄却命令の再審理を待つ間はローズの派遣を停止するよう申し立てを行った。テイツはランドに対する反逆罪疑惑の主張を繰り返し、ランドがオバマによる「独裁政治」の野望を幇助していたなど、数々の節度を欠いた発言を行った[309]。ランド判事は申し立てを軽薄なものとして却下し、テイツに対し司法手続きの乱用で1万ドルの罰金を科されない理由を提示するよう命じた[310]

数時間後、ローズの署名入りの手紙が提出された。その中には、テイツがローズの知らないうちに同意を得ずにこの申し立てを行ったこと、この事件の代理人弁護士としてテイツを解任するよう求めていること、そして(テイツの)非難されるべき非専門的な行為をカリフォルニア州弁護士会に告訴する予定である」と書かれていた[311]。2009年9月26日、テイツは却下されたローズの訴訟は今や処罰の対象となる準刑事事件となったため「弁護士と依頼人の間の秘密情報」を法廷で漏らす可能性があることからローズの弁護人を辞退したいと裁判所に申し立てを行った[312]

2009年10月13日、クレイ・ランド判事は「弁護士オーリー・テイツは(中略)連邦民事訴訟規則英語版第11条違反による非行に対する制裁(en)として、この命令の日から30日以内に、ジョージア州中部地区書記官事務所(Middle District of Georgia Clerk's Office)を通じて、アメリカ合衆国に2万ドルを支払え」と言い渡し、理由を次のように述べた。:

当裁判所は、訴訟代理人の行為は故意であり、単に過失があっただけではないものと判断した。それは訴訟代理人の側の不誠実さを示すものである。弁護士である訴訟代理人は、知識があり、規則に従い裁判所を尊重する義務を負っていた。訴訟代理人の行動パターンは、過失によって法律の規定に違反したものでていないことを決定的に証明している。訴訟代理人は故意に民事訴訟規則第11条に違反していた。裁判所の理由開示命令に対するその反応は、その傲慢さに息を呑むほどで、妄想の域にまで達しており、自らの不正行為について何の反省も後悔もしていない。それどころか、法廷に対する根拠のない攻撃を続けてもいる。[313]

テイツは判決を受けて、ランド判事は「抑圧的な」オバマ政権の「体制に逆らうのを恐れ」ており、制裁は彼女を「脅迫」しようとするものだと反論、制裁を不服として上訴すると述べた[314]。2010年3月15日、第11巡回区控訴裁判所(en)は制裁を認め、テイツに制裁金2万ドルの支払いを命じた[315]。7月8日、テイツは最高裁に上訴したが、7月15日、クラレンス・トーマス判事は本件への介入を拒否した。7月20日、テイツは審理拒否判決に記載された署名が本当にトーマス判事の署名であるかを確認したいとして嘆願書を提出し、さらにサミュエル・アリート判事にも嘆願書を提出した[316]。アリートが本件を全判事に付託したところ、8月16日、全判事が介入を拒否し、テイツに対する制裁判決を支持する判断を下したことが発表された[317]

「市民大陪審」による起訴の企て

ジョージア州の活動家カール・スウェンソン(Carl Swensson)が率いる一部の運動家は、オバマ大統領を起訴するために「市民大陪審 (citizen grand jury)」なるものを開いて「最終的にはオバマ大統領の出生証明書の背後に隠れた陰謀」を暴こうとした[318]。 なお本来の「大陪審」は「何人も、大陪審による告発または正式起訴によるのでなければ、死刑を科しうる罪その他の破廉恥罪につき公訴を提起されることは無い[319]。」という修正第五条の規定に基づいて開かれるものである。

活動家グループは「起訴状」のコピーを連邦議会職員に配ることはできたが[320]、裁判所は「市民大陪審」を好意的に見ることはなかった。 2009年6月、172人の運動家からなる団体が、自らを「スーパーアメリカン大陪審 "Super American Grand Jury"」と宣言し、オバマを反逆罪で告発することを投票で決め、 オバマは米国市民ではないと非難した[321]。 コロンビア特別区連邦地方裁判所のロイス・ランバース英語版裁判長は、7月2日、「起訴状」を却下し次のように言い渡した。「訴訟規則上も、米国の法令上も、本法廷が(「起訴状」を)受理する権限はない。この「起訴状」なるものを作成した人々は、大陪審を務めるために本法廷に召集されたわけではなく、また、本地区から公正かつ無作為に選出されたわけでもない。こうしたグループによって発行された自称「起訴状」あるいは「告発状」は、いかなる場合でも合衆国の憲法および法律の下では効力を持たない[322]


  1. ^ ここでいうバイタルレコードとは出生記録に限ったものではなく、誕生から、結婚、離婚、それから死亡に至るまでの各ライフイベントの証明ができる、米政府当局下で保管している記録。日本の戸籍関連でいう全部事項証明データに近い。詳細は英語版en:Vital recordを参照。
  2. ^ 原文が"diffuse angry"で「怒りを発散させる」。英語にはこれと非常によく似た"difuse angry"(fが一つ少ない同音異義語)という表現もあり、こちらだと「怒りをなだめる」[192]





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