バラク・オバマの国籍陰謀論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 23:16 UTC 版)
背景
オバマの生い立ち
オバマの大統領資格について疑義を表明したり、彼の生い立ちに関する事実を受け入れない人々は、俗に「バーサーズ(birthers)」と呼ばれる。これはアメリカ同時多発テロ事件陰謀説を信じる人々が「トゥルーサーズ(truthers)」と渾名されたことに呼応したもので[24][25][26]、 こうした陰謀論を信ずる人々は、オバマの生い立ちについての次のような事実のうち、少なくとも一部を否定している。:
バラク・オバマは1961年8月4日、ハワイ州ホノルルにあるカピオラニ産婦人科病院(現:カピオラニ婦人科・小児科医療センター(en))で誕生した[27][28][29][30]。オバマの母はアメリカ合衆国カンザス州ウィチタ出身[31]のアン・ダナム[32]、 父バラク・オバマ・シニアは、イギリス保護領ケニア植民地ニャンザ州ニャンゴマ・コゲロ村出身のルオ族で、当時ハワイ大学に通っていた。オバマの誕生は地元紙ホノルル・アドバタイザーでは1961年8月13日付の誕生欄、ホノルル・スター・ブレティン紙では8月14日の誕生欄にそれぞれ掲載されている[27][31]。オバマ・シニアの入国管理記録にもバラク・オバマがハワイで生まれたことが明記されている[33]。オバマの高校時代の先生のひとりはオバマの母親と知り合いで、オバマが生まれた日のことを聞いたことを覚えている[32]。
オバマの両親は1964年に離婚した。オバマは1966年から1967年までホノルルのノエラニ小学校(Noelani Elementary School)付属幼稚園に通った[27][34]。 1967年、オバマの母はインドネシア人学生でハワイ大学に通っていたロロ・ソエトロと再婚し[27]、一家はジャカルタへと移住[35]、オバマは同地でまずCatholic St. Francis of Assisi Schoolに通い、その後メンテン地区にあるインドネシアのエリート公立校 (State Elementary School Menteng 01) に入学した。インドネシアでの少年時代オバマは「バリー(Barry)」と呼ばれ、ときに義父の姓により「バリー・ソエトロ」、また実父の姓から「バリー・オバマ」などと呼ばれた[36][37][38]。1971年、10歳のときにオバマはホノルルに戻り、母方の祖父母マデリンとスタンレー(en)と暮らし始め、以降オバマは米国に居住し続けている。
主張の発端
2008年3月初旬から、オバマがケニアで生まれてから飛行機でハワイに来たという噂が(これでオバマは大統領職不適格になるだろうとの示唆も含めて)保守系のウェブサイトで広がった[39]。同年4月、ヒラリー・クリントンの一部支持者間で同内容の匿名チェーンメールが出回り[40] 、この話を焚きつけたことで解雇された選挙運動ボランティアもいた[41][42]。これらを含む多数のチェーンメールが、その後の大統領選挙中にオバマの祖先、宗教、出生証明書に関する虚偽の噂を流布していった[43][44]。
2008年6月9日、保守系の雑誌ナショナル・レビューオンラインのジム・ジェラティが、オバマは出生証明書を公表してはどうだろうかと提案した[45][46]。ジェラティは、出生証明書を公開することでネット上に流布している幾つかの誤った噂、例えば「オバマのミドルネームは元々フセインではなくムハンマド」「母がつけたファーストネームはバラクではなくバリー」「バラク・オバマ・シニアは彼の実父ではない、ゆえにバラク・オバマは出生による米国市民ではない」[46][47]などが虚偽だと証明できると述べた。
2008年8月、ペンシルベニア州民主党委員会の元会員フィリップ・J・バーグは「オバマはケニアのモンバサで生まれた」と主張してオバマに訴訟を起こしたが失敗に終わった[48][49]。
2008年10月、米公共ラジオ局の記事が「ケニア生まれのバラク・オバマ上院議員」に言及した[50]。また同月、オバマが「ケニア生まれ」であることをAP通信が報じた、と主張する匿名メールが出回った[51]。この主張はケニアの現地紙 (The Standard (Kenya)) に5年前に登場したAP通信の話に基づいていた[51][52]。噂検証サイトのスノープスは、オバマをケニア生まれとかファーストネームの綴りが違うと書いている見出しや導入部はケニアの新聞によって付け足されたものであることを暴き、AP通信発行の記事や同時期にAP通信記事を取り上げた他紙には一切見当たらなかったことが判明した[51][53]。
- ^ ここでいうバイタルレコードとは出生記録に限ったものではなく、誕生から、結婚、離婚、それから死亡に至るまでの各ライフイベントの証明ができる、米政府当局下で保管している記録。日本の戸籍関連でいう全部事項証明データに近い。詳細は英語版en:Vital recordを参照。
- ^ 原文が"diffuse angry"で「怒りを発散させる」。英語にはこれと非常によく似た"difuse angry"(fが一つ少ない同音異義語)という表現もあり、こちらだと「怒りをなだめる」[192]。
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