バラク・オバマの国籍陰謀論 公式な応答

バラク・オバマの国籍陰謀論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 23:16 UTC 版)

公式な応答

オバマ大統領はハワイで生まれではないとする人々の間で共通しているのは、オバマ大統領が出生証明書の完全版(ロング・フォーム、long form)を公開すればすべての疑念は解決するだろうと主張していることだ。しかし政治評論家・コメンテーターらは、もしそれをしたらオバマ大統領にとって不利になるだろうと指摘している。第一に、なぜ文書を公開するのにこれほど時間がかかったのかという憶測を助長すること。第二に、政敵の要求に屈することは彼らに勝利を与えたこととなり、そうしたグループを奮起させる可能性があること。最後に、出生証明書とは関係のない他の個人的記録までも要求される可能性の扉を開くことになりえるためである[356]。こうした懸念にもかかわらず、オバマもオバマの報道官も、最終的にはこの問題に関する記者の質問に答えた。

報道官の応答

2009年5月27日の記者会見の最後、WorldNetDailyのリポーター、レスター・キンソルヴィング英語版がオバマの出生証明書について報道官に質問した。ホワイトハウスのロバート・ギブズ報道官は「インターネット上で閲覧可能です」と答えたが、キンソルヴィングは「いやいやいや、病院名と医師名が記載されているロング・フォームのことです」と更に質問した。ギブスは次のように答えた:

レスター、今されたような質問には色々な意味で驚き続けています。ハワイ州は、大統領のハワイ生誕についてハワイ州の印章付きのコピーを公開しました。ハワイ州が大統領の出生を証明したこととその出生証明書の存在とを疑い続ける人々が、、少なくとも40万人くらい?(笑)いることは知っていますが、その証書はネット上で閲覧可能です。なぜなら、私たちはその40万人の一人一人がダウンロードできるようにインターネット上にそれを置いたからです[357]

2009年7月27日の記者会見で、ラジオトークショーの司会者ビル・プレス英語版が、この問題を解決するために何か言えることはないかと質問したところ、ギブズは「ない。本当に何もない。」と述べ、なぜなら、オバマが既に証拠を提示しているにもかかわらず「つくり物の、でっち上げのナンセンス」の方を追いかける人々の「心を満たす方法は何もない」からだと述べた [358][359]

2009年8月6日、ギブズは「ハリウッドではこんな脚本は売れないだろう」としながら問題の論点をまとめ、「完全にどうかしているよ」とコメントした:

ある妊婦が、海外で子供を産むために家を出た。パスポートは持っていない …つまり共謀者がいる。… そして、そのどこの国の出生名簿にも存在していなかった子供を密輸してアメリカに連れ戻り、驚くべき先見の明を持ってハワイの新聞の出生欄にその名前をのせた。 こうしたことが密かに国境で行われていたのだ。全ては、そのバラク・オバマという名の子供が46年と半年後にアメリカ大統領選に立候補できるようにするために。[360]

バラク・オバマの対応

2010年8月29日、バラク・オバマはNBCのアンカーマンブライアン・ウィリアムズとのインタビューで、この問題を直接取り上げた。ウィリアムズは、アメリカ人の5分の1はオバマをアメリカ生まれでもキリスト教徒だとも思っていないと答えていることをどう思うか、オバマに質問した。オバマは「新しいメディアの時代には、誤った情報のネットワークが、常に量産され続ける。そういったメカニズム(mechanism)が存在する。」と答えた。そして「自分の時間のすべてを、頭に出生証明書を貼り付けたまま過ごすことはできない」と述べた[361]

オバマは、自身の出生証明書や国籍にまつわる陰謀論をジョークのネタにすることもあった。2010年のホワイトハウス記者協会主催の夕食会でオバマは、人生において、愛よりも見つけるのが難しく守るべき大切なものはほとんどないと述べた後、「そう、愛と、出生証明書だ」と付け加えた[362]。 2011年のグリディロン・ディナーでは、ブルース・スプリングスティーンの『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』にふれ「何回も(アメリカで)生まれるものもある(Some things just bear repeating)」とコメントした[363]。 アイルランドの聖人、聖パトリックの祝日である2011年3月17日、オバマは「先祖といえば、私自身の先祖についていくつかの論争が起きています。私が大統領になって2年が経ちましたが、私の出自についての噂話を売り歩くのに夢中になっている人が未だにいます。そこで今日はそんな噂を一掃したいと思います。私のひいひいひいおじいさんは実はアイルランド出身です。これは本当の話。正確にはモニーゴール英語版という村です。ああ、これを指摘し続けなければならないなんて信じられない[364]」。2012年1月17日、女優ベティ・ホワイトの90歳の誕生日を祝うテレビの記念番組にオバマは録画出演し、ホワイトに手紙を書いて、彼女の外見とバイタリテイからは彼女が90歳だとは信じられない、というより「信じない」ので出生証明書の閲覧を要求したいと冗談をいった[365]

2011年4月のジョージ・ステファノプロスとのインタビューで、オバマは次のように述べている。「この2年半の間に、共和党にとって短期的には政治上都合が良い方法で私を攻撃しようとする動きがあったと思いますが、実際の選挙戦ともなれば、これで問題を抱えるのは共和党の方だと思います。大多数の人々は大統領は大統領自身が言った通りハワイで生まれたと確信していますから。大統領選ともなれば意見が対立する問題もいくつかあります。例えば失業率をもっと早く下げるべきだとか、ガソリン価格についての計画を知らせるべきだとか。しかし陰謀論や、出生証明書は有権者は気に掛けません。だから、これは彼らにとって問題となるのだと思います [366]

2011年4月27日、オバマは出生証明書原本の公開から1時間後にホワイトハウスのプレスルームに現れ、陰謀論を「サーカスの余興や呼び込みの声」に例えながら[367]、次のように述べた。「我々が何を発表してもこの問題を収束させる気がない人々がいることは分かっています。しかし、私が語りかけたいのはアメリカ国民の大多数、そして報道関係者の皆様です。我々にはこうした愚かなことをしている時間はありません。やるべきことが他にあるのです。」 [150][367]

2011年後半、オバマの再選キャンペーンではオバマの写真(「Made in the USA」と書かれている)と出生証明書の画像がプリントされたマグカップが販売された。オバマ陣営は「大統領の出生証明書に関する陰謀論を完全になくす方法は本当にないので、それを笑い飛ばして、できるだけ多くの人がこのジョークに参加してもらうほうがいいと考えた」と述べている[368]


  1. ^ ここでいうバイタルレコードとは出生記録に限ったものではなく、誕生から、結婚、離婚、それから死亡に至るまでの各ライフイベントの証明ができる、米政府当局下で保管している記録。日本の戸籍関連でいう全部事項証明データに近い。詳細は英語版en:Vital recordを参照。
  2. ^ 原文が"diffuse angry"で「怒りを発散させる」。英語にはこれと非常によく似た"difuse angry"(fが一つ少ない同音異義語)という表現もあり、こちらだと「怒りをなだめる」[192]





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