バラク・オバマの国籍陰謀論 虚偽の主張

バラク・オバマの国籍陰謀論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 23:16 UTC 版)

虚偽の主張

ケニア生まれ

オバマ大統領の適格性に反対する人達の一部が、彼はケニア生まれなので出生による米国市民ではないと主張している。オバマが米国外で生まれたか否かは、出生時に彼の米国市民権が無効になっていたかで論じられている。ロサンゼルス・タイムズ紙の政治評論家アンドリュー・マルコムは、オバマの母親はアメリカ市民だったので、オバマは生まれた場所に関係なく大統領に就任する資格があると主張し、オバマの母親が「バリー坊や(バラクオバマ)が生まれたとき火星にいたとしても、 彼は依然としてアメリカ人である。」と語った[82]。反対の見解はUCLA法学教授ユージン・ヴォロックによって流布され、仮にオバマが米国外で生まれたというシナリオなら、当時の法律[83]では少なくとも「14歳以降5年間」の米国滞在をオバマの母親に要求していたため、その3カ月前に生まれたオバマは出生による米国市民ではなくなるという[84]

オバマ父方の義祖母の事案

間違いだがよく広まった説として、オバマ父方の義祖母サラ・オバマがアナバプテストの司教ロン・マクレーに「自分はオバマがケニアで生まれた時に居合わせた」と長距離電話で語っており、その録音があるという[85]

マクラッチー英語版紙は、オバマの義祖母に関する話がどのように始まったかを説明した。このテープは会話の途中、彼女が「オバマはモンバサで生まれてません。彼はアメリカで生まれました」との趣旨を明言する箇所の手前で切られている。[中略]その後の受け答えでも「オバマはハワイ、ハワイです。彼女は、彼がハワイで生まれたと言っています」と、女性の話に続けて翻訳者が語っている[86]

2007年シカゴ・トリビューン紙のインタビューでサラ・オバマは論争解明の更なる光明を投げかけた。このインタビューで彼女は、バラク・オバマ・シニアとアン・ダナムが結婚してから6ヶ月後にバラク・オバマ2世が1961年8月4日に生まれたことを告知する手紙を、ケニアの自宅で受け取ったと述べた[87]

2012年6月にケニアの自宅で行われたインタビューで、サラ・オバマは「一部の人達は大統領がケニアで生まれたと信じたがっています。これらの人達ががあなたを悩ませたり、彼の出生証明書を要請したことはありますか?」と質問された。彼女の回答は「とにかく、バラク・オバマはケニア生まれではありません」だった[88]

偽造のケニア出生証明書

2009年8月2日、オーリー・テイツという女性がケニアの出生証明書なるものを公開して法廷文書に添付した上で、もしもこの証明書が本物であることが証明されれば、キーズ対ボーエン訴訟(この中で原告はオバマが出生による米国市民であると証明する文書を提示させる司法命令を要求した)における訴訟期間を大幅に短縮する筈だと自ら語った[89]。提出された法的文書には「出生届の認証謄本の未承認カラーコピー」との説明文が付記されていた[90][91]。この文書はほぼ即座に偽造であることが明らかとなった。それは「ケニア共和国」によって発行されたと称しているが、実際のところ文書に記されているような国家はオバマの誕生時にまだ存在していなかった(ケニアは1963年までイギリス植民地だった)のである[92][93]

その後、ケニアの出生証明書と提出されたものがオーストラリアの出生証明書を改竄したものであるとの証拠がオンライン系譜サイトで見つかり、明白となった[94][95]。ウェブサイトのWashington Independentは、偽造を請け負った者としてアノニマス・ブログ利用者を挙げ[96]、その主張を立証する4枚の写真を投稿した[97]

ハワイ生まれではない

オバマのハワイ州の出生証明書が存在するにもかかわらず、とりわけ弁護士テリー・ラーキンは、外国生まれの子供を含め誰もがハワイの出生証明書を取得できるので、オバマのそうした証明書の所持は彼がハワイで生まれたことを証明するものではないと主張した[98]。しかし、これがオバマに適用された可能性があるとの示唆は、ハワイ州保健局の広報部長ジャニス・オクボによって次のように否定された「例えば、仮にあなたがバリ島で生まれた場合でもハワイ州から証明書を受け取ることは可能だが、そこにはあなたがバリ島生まれだと書かれています。あなたがホノルル生まれだ、と書かれている証明書を取得することはできません。同州には証明書に表記する事実の確認をする義務があるのです[99]」。この主張に反論するもう一つの事実として、外国生まれの子供がハワイの出生証明書を取得することを許可する法律はオバマが生まれてから20年後まで存在しておらず、一方オバマの公表した出生証明書は誕生4日後の1961年に出生情報が記録されたとあるため、彼がホノルルで生まれたことを自明に述べている[100]

さらに一部の人達は、出生証明書の情報は片親の証言に基づいているだけで問題ないと主張している[100]

2009年7月27日、フキノは「ハワイ州保健局のファイルに保管されているバイタルレコード原本を見て、バラク・フセイン・オバマ氏がハワイ州で出生した生粋のアメリカ国民であることを確かめました」と明言した[101] [102]

ハワイ州保健局広報官ジャニス・オオクボは、バイタルレコード公開に関する州の指針について「もしオバマ陣営の誰かが、オバマの代理人であることを確認できる何らかの書類をもって直接こちらにきて、オバマの記録を公開することを許可されるのでしたら、バイタルレコードを公開できます」と具体的に説明した[103]

カピオラニ婦人科・小児科医療センターの広報担当は、連邦プライバシー法を引用しつつ「たとえ他のあらゆる情報が、オバマはカピオラニ病院で生まれたと言っていたとしても」自分達の標準手続きではオバマがそこに生まれたことを肯定も否定もできないと発言した[27]

1961年8月13日のホノルル・アドバタイザー紙に掲載された、オバマの誕生告知

1961年、8月13日と14日にバラク・オバマの出生告知がホノルル・アドバタイザーと ホノルル・スターブレティンの両紙で掲載され、オバマ両親の自宅住所がホノルルにあるKalanianaole Highway6085だと記載されていた[27][31]。2008年11月9日、アドバタイザー紙はマイクロフィルム記録から当該欄のスクリーンショットを撮りウェブサイトに掲載した。この誕生欄は保険局から定期的に送られてくる情報を元に各新聞紙に掲載されるものであった[27]

2009年7月29日に発行された社説で、両方の新聞の人口動態統計表は主だった州立図書館のマイクロフィルムで利用可能であるとホノルル・スター・ブレティン紙は指摘し、「この赤ちゃんがいつか米国大統領に選出される道を切り開いておくつもりで、州の保健局とオバマの両親が共謀して新聞各紙に虚偽の情報を提供したとでもいうのだろうか?」と皮肉を込めて問いかけた[104]

米国市民権を失った

オバマは幼少期に暮らしていたインドネシアの市民権を取得した(そのため米国市民権は喪失かもしれない)ことが示唆されている[105]。オバマが既に米国市民ではない(又は二重国籍を保有する)ことを証明する試みとして、一部の人達は彼の1981年のパキスタン旅行が米国のパスポート保有者入国禁止と思われる時期に行われており、ということは彼は米国以外のパスポートを使用したに違いないと主張している。ただ実際にはそうした入国禁止が存在しなかった。1981年のニューヨーク・タイムズ記事や米国務省の旅行勧告が、米国パスポート保有者によるパキスタン旅行が当時合法であったことを明らかにしている[106][107]

2009年からエイプリルフールのデマメールがネット上で流布されるようになった。その虚偽の主張は、オバマがフルブライト奨学金を得るためバリー・ソエトロという名前で「インドネシアからの留学生」だと主張してオクシデンタル大学に応募したというものだった(同奨学金にインドネシア学部生向けは存在しない)[108]


  1. ^ ここでいうバイタルレコードとは出生記録に限ったものではなく、誕生から、結婚、離婚、それから死亡に至るまでの各ライフイベントの証明ができる、米政府当局下で保管している記録。日本の戸籍関連でいう全部事項証明データに近い。詳細は英語版en:Vital recordを参照。
  2. ^ 原文が"diffuse angry"で「怒りを発散させる」。英語にはこれと非常によく似た"difuse angry"(fが一つ少ない同音異義語)という表現もあり、こちらだと「怒りをなだめる」[192]





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