ネブラスカ州会議事堂 歴史

ネブラスカ州会議事堂

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/11 14:10 UTC 版)

歴史

議事堂委員(1919-35年)
委員名 所属・職位 在任期間
サミュエル・ロイ・マッケルビー 州知事、議長 1919-23年
チャールズ・W・ブライアン 州知事、議長 1923-25年、1931-35年
アダム・マクマレン 州知事、議長 1925-29年
アーサー・J・ウィーバー 州知事、議長 1929-31年
ジョージ・E・ジョンソン 州技師、事務官 1919-23年
ロバート・リロイ・コクラン 州技師、事務官 1923-35年
ウィリアム・E・ハーディー 市民代表(リンカーン) 1919-35年
ウォルター・W・ヘッド 市民代表(オマハ) 1919-35年
ウィリアム・H・トンプソン 市民代表(グランドアイランド 1919-35年

1919年2月20日、ネブラスカ州議会が下院第3法案を可決し、新しい庁舎の建設を監督するための議事堂委員会が設立された[20]。翌21日に委員会が組織され、州政府側からは州知事および州技師が入り、市民代表としてリンカーンのウィリアム・E・ハーディー、オマハのウォルター・W・ヘッド、グランドアイランドのウィリアム・H・トンプソンの3名が委員に任命された[21]。また、この法案によって、庁舎の建設費調達のために特別な資産税を課すことが定められたり、庁舎の建設費が500万ドルを超えないようにすることが宣言されたりもした[20]。しかし、庁舎の建設中に、州議会は課税期間を延長し、最終的には建設費の上限を1,000万ドルまで引き上げた。ネブラスカ州憲法は州の債務を制限しているため、ほとんどの州の事業は「進むにつれて支払う」という前提で資金を調達せざるを得ない[22]。この議事堂もその方式に則って建設費の調達が行われ、1935年に議事堂委員会が解散した時には、建設費の総額は9,800,449ドル7セントになっていた[23]

コンペ

委員会が発足してまず最初に行ったのは、オマハの建築家トーマス・ロジャース・キンボールを委員会のアドバイザーとして雇うことであった[24]アメリカ建築家協会の会長であったキンボールは、議事堂の設計にあたる建築家を決めるために2段階選考のコンペを行った。1次選考では、委員会はネブラスカの建築家を招き、リンカーンのエレリー・L・デイビス、オマハのジョン・ラテンサー・アンド・サンズ、およびジョン・マクドナルド・アンド・アラン・マクドナルドを選出し、2次選考に進ませた。2次選考はサンフランシスコのブリス・アンド・ファビル、ニューヨークのバートラム・グッドヒュー、ハロルド・バン・ビューレン・マゴニグル、マッキム・ミード・アンド・ホワイト、ジョン・ラッセウル・ポープ、トレイシー・アンド・スウォートワウト、フィラデルフィアのポール・クレット、およびザンツィンガー・ボリー・アンド・メダリー等、全米的にその名を知られた建築家を加えて行われた[25]

2代目庁舎周辺に議事堂建設作業用鉄道を引く労働者たち(1922年3月)

キンボールはこの時、議事堂の計画、様式、材質を指示せず、代わりに、彫刻家、画家、および造園家と協働で統合した設計を建築家にさせたい、という委員会の意向のみを明示する、斬新なコンペを行った[26]。最終的にはキンボールは、10人の参加者が議事堂委員会に設計を提出した後に審査員を選び、このコンペを組織した。提出された設計は番号で識別され、個別の密封された封筒には建築家の名前と計画番号が入っていた[27]。議事堂委員会が1人目の審査員ワディ・バトラー・ウッドを、参加者が2人目の審査員ジェームズ・ギャンブル・ロジャースを、そしてウッドとロジャースが3人目の審査員ウィリス・ポークを選出した[28]1920年6月26日、審査員は「4番」の設計を提出した建築家を、ネブラスカ州会議事堂の設計者に選んだ[29]

1920年7月1日、議事堂委員会はグッドヒューをこのコンペの勝者と発表した。

グッドヒューの設計

グッドヒューはネブラスカ州会議事堂を、概ね古典主義建築様式で設計し、「化粧張りのオーダーと変わり映えのしないローマ式ドームを持った、そんなありふれたものとは一線を画するものを造るよう促された」と感じたという[30]。グッドヒューは幾何学的な形式や階層的な配置といった古典主義建築の基本を踏襲しながらも、伝統的な柱やペディメント、ドームの使用を排した。古典主義建築の表現形式を抑えたのに加えて、グッドヒューはアッシリア建築、ビザンティン建築、および教会建築の要素を取り入れた。

グッドヒューは教会建築に秀でていた。グッドヒューはそれまでに、ニューヨークマンハッタンの聖バーソロミュー教会、同じくマンハッタンの執り成しの祈り教会や、陸軍士官学校内のウェストポイント士官候補生礼拝堂を設計していた。ネブラスカ州会議事堂の設計においても、グッドヒューは同様の教会建築の表現形式を取り入れ、上から見ると一辺133.2mの正方形で囲まれたギリシャ十字状で、4つの翼廊は中央ドーム下のロタンダから放射状に延び、その上には、平らな壁面と目立たない窓を持つ超高層ビルが大きな尖塔のようにそびえる、というものを計画した。

建設

1922年3月、議事堂委員会はリンカーンのバーリントン鉄道操車場から電化した鉄道支線を引いた[31]。州有のこの鉄道は7thストリートから14thストリートまでのHストリート沿いを通り、建設資材を容易に運搬するための手段となった。同年4月15日、州知事サミュエル・ロイ・マッケルビーは儀礼的に起工し、4期、10年にわたったこの庁舎の建設が始まった[32]。期に分けて建設を進めることで、旧庁舎の取り壊しよりも先に、新庁舎の建設を始めることができた。1924年に第1期工事が完了すると、州政府業務はこの新しい庁舎に移り、その後旧庁舎が取り壊された[33]。建設開始から2年後の1924年4月23日、グッドヒューが死去すると、弟子たちはこの庁舎の残りの部分を含む、着手中のプロジェクトを完成させるため、グッドヒュー・アソシエイツ(後のメイヤーズ・マレー・アンド・フィリップ)という建築事務所を設立した。1932年に庁舎が完成すると、議事堂委員会はリンカーンの造園家アーンスト・ハーミンハウスを雇い、敷地を設計させた[34]

1922-32年にわたったネブラスカ州会議事堂の建設において、1-4期それぞれで建設された範囲を示す図
ネブラスカ州会議事堂の建設(1922-32年)
建設内容
1 1922-24 起工後、旧庁舎内で州政府の業務を継続できるように、新庁舎の建設は旧庁舎をはさんで南北両側の部分から行われた。こうすることで、敷地外に別の建物を借りる必要も無くなり、州政府の資金も節約できた。1924年後期に第1期工事が完了すると、州政府は事務所を旧庁舎から新庁舎に移した。その後、翌1925年に、旧庁舎は取り壊された。
2 1925-28 ベース部分の東側、および北・東・南の各翼廊が完成した。また、ロタンダ上部の超高層ビル部分は、6階まで建設された。
3 1928-30 超高層ビル部分が完成した。1930年4月24日、頂部装飾の「種まき人」像が上げられていく様子を見ようと、庁舎西側周辺には何千人もの見物者が集まった[35]
4 1930-32 ベース部分の西側、および西翼廊が完成した。

統合芸術プログラム

メイヤーによるロタンダの床のモザイク

グッドヒューはニューヨークの彫刻家リー・ローリーおよび壁画家ヒルドレス・メイヤーを雇い、ネブラスカ州会議事堂の内外装の装飾を担当させた。ローリーは外装の浮き彫りの壁タイルと扶壁、および内装の柱頭、扉、暖炉周辺を、メイヤーは床の大理石のモザイクタイルおよびヴォールトセラミックタイルをそれぞれ担当した。

1922年1月20日、議事堂委員会はグッドヒューに、議事堂庁舎に刻まれる碑文を決めるために、ネブラスカ大学リンカーン校哲学部のハートリー・バー・アレクサンダー博士に相談するよう求めた[36]。碑文に加えて、外装の彫刻のテーマについても、アレクサンダーはグッドヒューおよびローリーと協働するようになった。1924年にグッドヒューが死去すると、アレクサンダーはこれから造られる部分が、既に確立した計画との一貫性がなくなるのではないかと危惧した。そこでアレクサンダーは1926年7月、すべてを包含する主題プログラム Nebraska State Capitol: Synopsis of Decorations and Inscriptions (ネブラスカ州会議事堂: 装飾および碑文の概要)を記した[37][38]。アレクサンダーによるこの概要は、その後造られた内外装の装飾のガイドとしての役目を果たし、アレクサンダーは主題コンサルタントという肩書きを得ることになった。


  1. ^ a b c d e f g h i Nebraska State Capitol. Emporis. 2017年5月5日閲覧.
  2. ^ NEBRASKA - Lancaster County. National Register of Historic Places. 2017年5月21日閲覧.
  3. ^ Listing of National Historic Landmarks by State: Nebraska. p.1. National Park Service. 2017年5月21日閲覧.
  4. ^ Capitol to be dressed in green. Lincoln Journal Star. 2014年4月4日. 2017年5月5日閲覧.
  5. ^ Louisiana State Capitol. Emporis. 2017年5月5日閲覧.
  6. ^ Hoak and Church, p.115
  7. ^ Chapter 27.56: Capitol Environs District. Lincoln Municipal Code. City of Lincoln. 2017年5月5日閲覧.
  8. ^ Tallest Buildings in Lincoln. Emporis. 2017年5月5日閲覧.
  9. ^ Woodmen Tower. Emporis. 2017年5月5日閲覧.
  10. ^ One First National Center. Emporis. 2017年5月5日閲覧.
  11. ^ Tallest Buildings in Nebraska. Emporis. 2017年5月5日閲覧.
  12. ^ Sandoz, Mari. Love Song to the Plains. p.151. Lincoln, Nebraska: University of Nebraska Press. Ed. Bison Book. 1966年. ISBN 0803251726.
  13. ^ Capitol Hill. Nebraska State Historical Society. 2017年5月8日閲覧.
  14. ^ Watkins, p.8.
  15. ^ InterLinc: Lincoln, Nebraska, USA and Lancaster County. City of Lincoln, Lancaster County. 2017年5月8日閲覧.
  16. ^ Watkins, p.27.
  17. ^ Watkins, p.193.
  18. ^ Watkins, p.209.
  19. ^ Hansen, Matt. Architectural Fragments of Nebraska's Second State Capitol. Brown Bag Lecture Series. Preservation Association of Lincoln. 2017年5月10日閲覧.
  20. ^ a b State of Nebraska. Laws, Resolutions and Memorials. pp.391-392. Lincoln, Nebraska: Darius M. Amsberry, Nebraska Secretary of State. 1919年.
  21. ^ "Named to Build New Capitol". p.A-Three. Lincoln,Nebraska: Evening State Journal. 1919年2月21日.
  22. ^ Article XIII, § 1, Constitution of the State of Nebraska. Lincoln, Nebraska: State of Nebraska. 2015年
  23. ^ McCready, p.461.
  24. ^ Nebraska Capitol Commission, p.3.
  25. ^ Johnson, George E. Program and Commission Statement. Nebraska State Capitol. Nebraska Capitol Commission, State of Nebraska. 2017年5月17日閲覧.
  26. ^ Concept and Advisor's Statement. Nebraska State Government. 2017年5月17日閲覧.
  27. ^ Copple, p.120.
  28. ^ McCready, pp.335–339.
  29. ^ Nebraska Capitol Commission, p.57.
  30. ^ Nebraska Capitol Commission, p.61.
  31. ^ "Progress on Track". Lincoln, Nebraska: The Lincoln Star. 1922年3月16日.
  32. ^ "French Hero A City Guest, Present at Breaking of Sod for New State Capitol". p.1. Lincoln, Nebraska Sunday State Journal. 1922年4月16日.
  33. ^ "Human Flies Climb Dome, Old Capitol Rapidly Being Wrecked". p.1. Evening State Journal. 1925年4月30日.
  34. ^ "Final Work on State Capitol". Lincoln, Nebraska: The Lincoln Star. 1933年11月29日.
  35. ^ Raising the Sower (1930). Nebraska State Historical Society. 1930年4月24日. 2017年5月20日閲覧.
  36. ^ Nebraska Capitol Commission, p.131.
  37. ^ McCready, pp.451-458.
    McCready は1974年に発表したこの記事の付録VおよびVIにおいて、アレクサンダーの Nebraska State Capitol: Synopsis of Decorations and Inscriptions の大部分を再版している。
  38. ^ Zabel, p.312.
  39. ^ Zabel, p.294.
  40. ^ McCready, p.454.
  41. ^ "Lee Lawrie, Sculptor for Nebraska Capitol, Give Final Approval of Work On Unannounced Visit to City". pp.1, 9. Lincoln, Nebraska: The Lincoln Star. 1934年11月20日.
  42. ^ McCready, p.451.
  43. ^ Zabel, pp.316-345.
  44. ^ Zabel, pp.346-354.
  45. ^ Zabel, pp.355-364.
  46. ^ Brawer, p.25.
  47. ^ Luebke, p.76.
  48. ^ Brawer, p.23.
  49. ^ McCready, p.454.
  50. ^ McCready, p.455.
  51. ^ Nebraska Hall of Fame Members. Nebraska State Historical Society. 2017年5月28日閲覧.
  52. ^ McCready, p.456.
  53. ^ Haller, Robert. Encyclopedia of the Great Plains. p.89. Ed. David Wishart. Lincoln, Nebraska: University of Nebraska Press. 2004年. ISBN 978-0803247871.
  54. ^ Nebraska Capitol Commission, p.609.
  55. ^ "Ninety-Fifth Legislature, Second Session". pp.527–529. Legislative Journal of the State of Nebraska Vol.2. Lincoln, Nebraska: State of Nebraska. 1998年.
  56. ^ "Sculptor Liked City, Came Back". p.1B. Lincoln, Nebraska: Sunday Journal and Star. 1961年3月5日.
  57. ^ Kinsler, Carolyn. Native American Influences in the Nebraska State Capitol. 未発表原稿. Ann Arbor, Michigan: University of Michigan. 1999年.
  58. ^ "Eighty-Eighth Legislature, Second Session". pp.872–873, 987. Legislative Journal of the State of Nebraska. Vol.2. Lincoln, Nebraska: State of Nebraska. 1984年.
  59. ^ Nebraska Capitol Commission, pp.476-478.
  60. ^ "Tack Talks on Capitol Murals". Lincoln, Nebraska: The Lincoln State Journal. 1927年11月22日.
  61. ^ Nebraska Capitol Commission, p.787.
  62. ^ State of Nebraska. Session Laws. p.110. Lincoln, Nebraska: Harry R. Swanson, Nebraska Secretary of State. 1933年.
  63. ^ State of Nebraska. Laws. p.848. Lincoln, Nebraska: James S. Pitlenger, Nebraska Secretary of State. 1951年.
  64. ^ Luebke, p.88.
  65. ^ a b "Unveil Lincoln Statue at Capitol Grounds". p.Eight-B. Lincoln, Nebraska: The Lincoln Daily News. 1912年9月2日.
  66. ^ "French, Most Famous American Sculptor, to Design Abraham Lincoln Statue". p.8. Lincoln, Nebraska: Nebraska State Journal. 1909年6月25日.
  67. ^ McCready, p.436.





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ネブラスカ州会議事堂」の関連用語

ネブラスカ州会議事堂のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ネブラスカ州会議事堂のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのネブラスカ州会議事堂 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS