タンゴ
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奏法
弦楽器の騒音的奏法[注 8]、ヴァイオリン群による集団グリッサンド[注 9]、バンドネオン本体への打撃、コントラバスのコルレーニョバトゥット[注 10]、ピアノとバンドネオンのトーンクラスター[注 11]が典型例だがピアノの内部奏法はタンゴ・アヴァンギャルドを除いて行われることがない。
演奏形態
アルゼンチン・タンゴ
バンドネオンが用いられることが特徴である。また、非常に鋭いスタカートでリズムを刻むにもかかわらず打楽器を欠く。オルケスタティピカ[注 12]に始まりキンテート[注 13]を通過し、現在はこの枠ではくくれない編成も多い。またバンドネオンなしのピアノと弦のみの演奏もある。ギターの伴奏と歌によるタンゴも、カルロス・ガルデルらが録音を残し高く評価されている。[注 14]アストル・ピアソラの作品のように、クラシック音楽の演奏家によりクラシック音楽のスタイルで演奏されるものもある。特に、1950年代後半頃からアコースティックギターなども使われるようになってきた。
少しでも伝統を外すと「タンゴのイメージに合わない」・「アルゼンチン・タンゴを騙っているだけ」という苦情が寄せられることも多く、ウルグアイとアルゼンチンですら激しい対立があることで有名だが、多種多様な実験が多くの聴衆に受け入れられてきたことも事実なのである。
ヨーロッパのタンゴ
楽器編成は通常のポピュラー音楽での管弦楽編成に近い。ムード音楽的演奏から、マランドのように歯切れの良いリズムを重視したアルゼンチンスタイルに近い演奏までさまざまである。一般的にはアコーディオンが用いられるため、バンドネオンの鋭いスタッカートではなく、オーケストラの分厚いくぐもったスタッカートが多い。
ヨーロッパのタンゴは日本では「コンチネンタル・タンゴ」という和製英語で呼ばれているが、正しい英語では「European Tango ヨーロピアン・タンゴ」と言い、ヨーロッパで大雑把にひとくくりにしたがる人がいても、実際には国ごとにそれなりに傾向は異なり、ジャーマン・タンゴ、ロシアン・タンゴ、フィニッシュ・タンゴ、フレンチ・タンゴ、チロリアン・タンゴ、ダッチ・タンゴ、デニッシュ・タンゴなど各国ごとのタンゴに細分化することも可能である。
北欧フィンランドのタンゴ(フィニッシュ・タンゴ)はどうかと言うと、フィンランドでは1910年代からタンゴ演奏が始まったため、日本より伝統が長い。アコーディオンが使われる。「短調にこだわり哀調を帯びさせる」ことが必須になっており、朗らかさは無く、その点で南欧のタンゴとは異なっている。現在はアストル・ピアソラ国際演奏コンクールの優勝者も輩出するなど、演奏の質の高さには定評がある。毎年必ず行われるTangomarkkinatが有名。
アメリカン・タンゴ
小編成が圧倒的に多い。アルゼンチン・タンゴの中になかった楽器[注 15]も積極的に取り入れられており、なおかつコンチネンタル・タンゴのような妥協を行わない点が特徴。
ジャパニーズ・タンゴ
かつてはオルケスタ・ティピカ・東京、坂本政一とオルケスタ・ティピカ・ポルテニヤのようなオルケスタ・ティピカを組織するのが一般的であったが、1970年代の低迷期に入ってからは小編成が有力となった。アルフレッド・ハウゼ楽団のようなコンチネンタル・タンゴの人気も日本ではかなりある。1990年代は日本でもアストル・ピアソラが人気を博したこともあり、ピアソラ・スタイルを表面的に模倣した楽団も見られた。1970年から毎年必ず行われる民音タンゴ・シリーズが有名で、同シリーズは2019年時点で50回を重ねている。
1979年のジャパニーズ・タンゴとは「法被を着てバンドネオンを弾き、着物を着て歌を歌い、LPジャケットには富士山が描かれる」といったステレオタイプなもの[注 16]を指していた。2010年代は、このようなスタイルを日本人がとることは最早ない。
日本は1940年代に戦争の影響で音楽活動が制限されたために、「1940年代こそアルゼンチン・タンゴの全盛期であった」とする現地民と意見が食い違うタンゴ・ファンは今もなお1910-30年代生まれの日本人に多い。日本人にとってのタンゴの黄金期は1920年代末期を完璧に演じきったオルケスタ・ティピカ・ヴィクトルで知られる1927年前後、日本のタンゴ楽団の活動と活発なAM放送による啓蒙で知られる1954年前後、そしてインターネットによる新たなファン獲得に成功した2010年代[注 17]を印象に残る日本にとっての黄金期と捉える人物が多い。
演奏解釈
タンゴでは、作曲者の作ったメロディーは大切にされるものの、演奏する楽団の編曲により、新たな旋律や副旋律がつけられたり、変奏 variación がつけられたりすることが当然のようになっている。
たとえば、『ラ・クンパルシータ』は、ヘラルド・マトス・ロドリゲスの作曲したメロディーの他に、ロベルト・フィルポが付け加えた中間部が好評を呼び、著名度が高いタンゴとなった。
タンゴについては、やはり演奏する楽団の編曲の良し悪しが、聴いている聴衆の満足度につながるものとされる。これはバッハのコラール編曲と事情が似ており、コラール原曲より付された対旋律のほうが有名、といった古事を継承している。
なお、楽譜からはずれる即興演奏は、避けられる方向であったが、アストル・ピアソラのように即興演奏を好むタンゴ演奏家もいる。ピアソラは徹底的に「書き譜」を売ることで顰蹙を買ったが、タンゴ楽団の譜面には自分たちの芸風を示したメモは一切書かないのが本当は主流で、伝統的にはすべて演奏様式は口承である。
アストル・ピアソラやそれ以降の楽団のモダンタンゴの解釈については、古くからのタンゴ愛好家で違和感を覚えるような声が多くあった。これは、ジャズやジプシー楽団から引き抜かれた人物が独自の癖を披露したからである。その一方で、そのモダンタンゴに感銘を覚えるタイプのタンゴ愛好家も増えてきている。21世紀に入ると、古典またはアルカイックタンゴ専門の楽団も出現している。
注釈
- ^ それらのスポットは現在の「出会い系サイト」と同様の機能を持つものであった。フランシスコ・ロムートのデビュー曲「El 606」が性病の薬からとられていることは有名であり、彼はこの曲の作曲当時13歳である。
- ^ オスヴァルド・プグリエーセ楽団も「アルゼンチンポピュラー音楽フェスティバル」と題されたイヴェントに出演しており、その意味では「ポピュラー音楽」にも分類できる。なお、タンゴにはクラシックを正式に修めた音楽学校卒業者が多数関与している。だがタンゴのヴァリアシオンの連続はクラシック音楽の難易度をはるかに超えていて、クラシック音楽とも同一ではない。
- ^ 「continental」という英語は、continent(=大陸)から派生した語であり、あくまで「大陸の」という意味である。Oxford Dictionary[1]などを参照。
- ^ ソシアルダンス
- ^ Balázs GyenisのDJによるArgentine Tango Radio Budapestはその典型例。
- ^ 3.3.2の拍で進行するタンゴはピアソラにより有名だが、伝統的にはこれらはタンゴのイディオムではない。
- ^ Alma, corazón y vida-Roberto Goyeneche y Angel Diazなど。
- ^ サブハーモニクスではなく、弓圧を強めたピッチレスのノイズ。
- ^ トロイロが使っている。
- ^ プグリエーセが使っている。
- ^ 1960年代以降プグリエーセが多用している。
- ^ ヴァイオリン(3人以上)、バンドネオン(3人以上)、ピアノ、コントラバスをふくむ「標準編成の楽団」の意。
- ^ ヴァイオリン、バンドネオン、ピアノ、コントラバス、ギター各1を含む「五重奏団」の意。
- ^ そもそも、タンゴはバンドネオンなしから始まった民俗音楽である。
- ^ トロンボーンを入れるTango No.9。
- ^ これで絶大な人気が出て、プロモーターは願ったりかなったりという時代が1966-67年ごろである。
- ^ この時期の民音タンゴシリーズに招聘されたコロール・タンゴなどの「巨匠の後継楽団」がオールドファンにも新規ファンにも好評であったことが原因とみられる。
出典
- ^ 世界大百科事典「タンゴ」
- ^ “EL 606”. todotango. todotango. 2022年4月25日閲覧。
- ^ 外部リンク
- ^ 外部リンク
- ^ 外部リンク
- ^ “Twenty-Three Tangos”. global.oup.com. global.oup.com. 2021年12月22日閲覧。
- ^ “本名の「タカフミ」の愛称で”. www.jvcmusic.co.jp. www.jvcmusic.co.jp. 2021年10月6日閲覧。
- ^ balazs's selection
タンゴと同じ種類の言葉
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