タンゴ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 01:16 UTC 版)
歌唱
タンゴの歌詞のスペイン語
タンゴの曲の多くには、スペイン語(リオプラテンセ・スペイン語)の歌詞がついているが、"La última curda" (最後の酔い) の "curda"(酔い) のようにブエノスアイレス地方の俗語である ルンファルド (lunfardo) がよく用いられる。日本の西和辞典で引きづらいこともしばしばである。
また、vos (あんた,túに相当する) およびそれに相当するという南米の言い回しボセオ(voseo) が出てくることもある。
- ¡Volvé! - 戻ってきて!
- ¡Ya sé, no me digás! ¡Tenés razón! - 分かったから、俺に言うなよ!その通りだ! …… 意訳「最後の酔い」から
ボセオについては、日本の西和辞典では、具体的な活用形ですらも取り上げられているとはいえない状態である。英語の voseo や、その他のサイトで調べるしかない。
ひとつのタンゴに、違った複数の歌詞がつけられる
『ラ・クンパルシータ』のように、ひとつのタンゴの曲に、違った複数の歌詞が付けられることがある。
よく知られた例 『ラ・クンパルシータ』『エル・チョクロ』『フェリシア』
作詞者に敬意が示されている
タンゴの歌詞について、『カミニート』(Camnito) の ガビノ・コリア・ペニャロサ Gabino Coria Peñaloza や、 『スール』(Sur) の オメロ・マンシ Homero Manzi のように、作者に敬意が表される場合も少なくない。歌詞が文学的なタンゴは歌がつけられた演奏になる傾向にある。地名・招聘した人物への敬意が示されていることもある(輝ける東京)。
またラ・ファン・ダリエンソやコロール・タンゴのような先人の発明を継承した「後継楽団」が多いのもタンゴの特徴で、メンバー紹介には誰から後継を行ったのかが丁寧に書かれていることがある。
歌詞なし演奏も当たり前
歌詞なしで演奏されることも、ごく普通である。『フェリシア』や『パリのカナロ』のように、歌詞なし演奏がほとんどの曲もある。
また『レスポンソ』や『とろ火で』のように歌詞がつけられていない場合もある。
スペイン語以外の歌詞がつけられているタンゴ
原曲にスペイン語の歌詞がつけられているタンゴに、別の言語の歌詞がつけられる場合もある。『エル・チョクロ』(El choclo)は英語の歌詞がつけられ『キッス・オブ・ファイア』(Kiss of Fire )としてアメリカで歌われヒットした。
日本では、菅原洋一が第31回NHK紅白歌合戦で『ラ・クンパルシータ』を日本語の歌詞で歌った。冴木杏奈が着物姿で『カミニート』を歌っている映像が YouTube で、アップロードされている。淡谷のり子も日本語の歌詞で『ラ・クンパルシータ』や『ジーラ・ジーラ』を歌っていた。
原語がスペイン語でない歌が、タンゴとして演奏される場合もある。たとえばシャンソンの『小雨降る径』("Il pleut sur la route")や『恋心』("L'amour, c'est pour rien" )がタンゴとして演奏される場合もある。ファン・ダリエンソ楽団はサービスと称してスペイン語で原曲を歌わせ、そのまま日本語の訳詞で歌わせる、ということも行わせた。
ファンサービスとしてファン・ダリエンソ楽団は「スペイン語の歌詞の音楽は日本語でも歌えます!」と主張して、(強引に)翻訳された歌詞を専属歌手に歌わせ、その録音が残っている。[3]
メドレー
複数の作品のサビを数曲ほど接合させる例(トロイロ)もある。これは先人への敬意が込められる。このような形態では歌手は歌わない。
ラテン音楽の規則と近代和声法の規則のせめぎあいや禁則の頻発
ラテン音楽は原則的にスリーコード(つまりトニック(I)、サブドミナント(IV)、ドミナント(V, VII))のみで進む鉄則があるため、これを破ろうとする者は「前衛」「異端」と呼ばれていた。
四声和声法では「主旋律がアルペジオのような動きをするのはやめましょう」というのが鉄則だが、古典タンゴの代表作『フェリシア』のように、最初からメロディーがアルペジョで動くことも普通に行われる。さらに、アルフレド・デ・アンジェリス楽団はベースや中声部のバンドネオンがアルペジョで動くこともある珍しい集団である。
モダンタンゴの時代に入ると近代和声の影響を徐々に受けて減ったが、それでもバンドネオンセクションは依然として平行進行が好まれる。またファン・ダリエンソ楽団の『Sentimento Gaucho』に至ってはメロディーとベースがサビで有名な連続8度を行うなど、西洋楽器を使いつつ西洋音楽の規則では説明のつかないことが頻発する。(なお和声法や対位法の規則を守らない、という現象は、バッハやベートーヴェンのようなクラシック音楽の名作においてすら、頻繁に発生している。)
楽曲を編曲しなおす楽団も数多く、オスバルド・プグリエーセ楽団やエドゥアルド・ロビーラはバンドネオンの左手や弦楽セクションを用いて対位法的な趣味を前面に打ち出しており、近代和声や対位法の規則を(途中から、それなりに)意識したようである。タンゴ黎明期から黄金期にかけての作品が和声法と対位法を守っていないわけだが、一体どこまでがミスでどこからが意図的なのかについては明らかにされていない。
タンゴは、器楽では楽に演奏できても声楽では歌唱が厳しいメロディーラインが多く、歌手は「アルペジョにはいると加速または減速がはいる」独特の修練を必要とする。
注釈
- ^ それらのスポットは現在の「出会い系サイト」と同様の機能を持つものであった。フランシスコ・ロムートのデビュー曲「El 606」が性病の薬からとられていることは有名であり、彼はこの曲の作曲当時13歳である。
- ^ オスヴァルド・プグリエーセ楽団も「アルゼンチンポピュラー音楽フェスティバル」と題されたイヴェントに出演しており、その意味では「ポピュラー音楽」にも分類できる。なお、タンゴにはクラシックを正式に修めた音楽学校卒業者が多数関与している。だがタンゴのヴァリアシオンの連続はクラシック音楽の難易度をはるかに超えていて、クラシック音楽とも同一ではない。
- ^ 「continental」という英語は、continent(=大陸)から派生した語であり、あくまで「大陸の」という意味である。Oxford Dictionary[1]などを参照。
- ^ ソシアルダンス
- ^ Balázs GyenisのDJによるArgentine Tango Radio Budapestはその典型例。
- ^ 3.3.2の拍で進行するタンゴはピアソラにより有名だが、伝統的にはこれらはタンゴのイディオムではない。
- ^ Alma, corazón y vida-Roberto Goyeneche y Angel Diazなど。
- ^ サブハーモニクスではなく、弓圧を強めたピッチレスのノイズ。
- ^ トロイロが使っている。
- ^ プグリエーセが使っている。
- ^ 1960年代以降プグリエーセが多用している。
- ^ ヴァイオリン(3人以上)、バンドネオン(3人以上)、ピアノ、コントラバスをふくむ「標準編成の楽団」の意。
- ^ ヴァイオリン、バンドネオン、ピアノ、コントラバス、ギター各1を含む「五重奏団」の意。
- ^ そもそも、タンゴはバンドネオンなしから始まった民俗音楽である。
- ^ トロンボーンを入れるTango No.9。
- ^ これで絶大な人気が出て、プロモーターは願ったりかなったりという時代が1966-67年ごろである。
- ^ この時期の民音タンゴシリーズに招聘されたコロール・タンゴなどの「巨匠の後継楽団」がオールドファンにも新規ファンにも好評であったことが原因とみられる。
出典
- ^ 世界大百科事典「タンゴ」
- ^ “EL 606”. todotango. todotango. 2022年4月25日閲覧。
- ^ 外部リンク
- ^ 外部リンク
- ^ 外部リンク
- ^ “Twenty-Three Tangos”. global.oup.com. global.oup.com. 2021年12月22日閲覧。
- ^ “本名の「タカフミ」の愛称で”. www.jvcmusic.co.jp. www.jvcmusic.co.jp. 2021年10月6日閲覧。
- ^ balazs's selection
タンゴと同じ種類の言葉
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