ジャーナリスト 発祥

ジャーナリスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/12 02:51 UTC 版)

発祥

19世紀はじめごろはチャールズ・ディケンズのような、ジャーナルに記事を書く人を指していた。

これが転じて新聞やジャーナルの記事を書く人を指すようになった。ジャーナリストとは、新聞社テレビ局など報道機関に所属して取材活動を行う者もいれば、特定の報道機関に所属しないでフリーランスとして取材活動を行う者もいる。前者に関しては、報道機関に所属しているという点で、ジャーナリストとしての一定の資質や能力が推定される一方で、ジャーナリストとしての活動に関し、所属機関への忖度が懸念される。

定義

マスメディアに報道記事を寄稿する人のことを指す。ただし写真、動画を専門にメディアに提供する人や職業は通常、カメラマンと呼び、ジャーナリストとは呼ばれない。また報道以外へ寄稿する人もジャーナリストとは呼ばれない。類似の活動として野次馬があるが、ジャーナリストとの違いは報道記事として寄稿しないこと、本人の興味に影響されることである。

欧米諸国では大学ないし大学院におけるジャーナリズム教育が盛んに行われていて、オンブズマン制度が浸透しており、政府機関が記者会見に参加するためのメディアパスを発行する基準が存在している。フリーのジャーナリストは新聞社、まれに専門出版社でジャーナリズムの実務経験を積んだ後で転身するケースがほとんどである。

いっぽうで日本の法律においては「ジャーナリスト」と自称する際の特別な基準は存在していないが、日本自動車ジャーナリスト協会のように業界独自の基準を定めている場合もある。ジャーナリストとなるために教育システムや制度は整備されていない。このため教育は報道機関の社員教育、経験者に教えてもらう、独学で覚えるなどを行う必要がある。だれでも「ジャーナリスト」と自称することが可能であり、ジャーナリストとしての資質や実績がまったくない者が「ジャーナリスト」と自称しても法的に詐称にはならない。また、より専門的な分野を得意としていることを示すために、「**ジャーナリスト[注釈 1]」を自称することもある。ただし日本における「ジャーナリスト」は文章を採用するメディアが取捨選択する過程で自然淘汰されることに任せている状態であり、資質や能力に問題がある者がジャーナリストにふさわしくないとして強制的に排除されるシステムは存在しない。そのため、文章作成を初めとする能力、資質、倫理観などが欠如している者でも何らかのメディアに寄稿さえしていれば「ジャーナリスト」と自称してもまちがいとまでは言えないが、ジャーナリストと呼ぶに値するかの点では議論の対象になる[注釈 2]

ジャーナリストは事実に対する現状や意義、展望を報道する専門家であるとされるが[2]、記事の内容がジャーナリストの倫理観や政治的態度に左右され、ジャーナリスト自身の経済的基盤、個人的利害関係に大きく影響を受けるケースもある[注釈 3]。特定の団体に所属していないジャーナリストのなかには「フリージャーナリスト」と自称する者も多いが、出稿媒体や取材対象、ジャーナリストの取材対象及びその隣接分野を研究している研究者との利害関係がないことを示すものではない。日本では政治活動家が「ジャーナリスト」と自称する例が少なくないが、ジャーナリストと政治活動家との活動領域は非常に密接に重なりあうこともある。

ジャーナリストとして社会的に高い評価を受けるには、報道の正確性・客観性のみならず、報道対象の選定も重要となる。たとえば犯罪や社会的不祥事とはまったく無関係の無名の私人について報道したところで、いかに内容が正確であっても単なるプライバシーの侵害にしかならない。適切な報道対象の選定を行う能力、正確かつ客観的な報道を行う能力を兼ね備えなければジャーナリストとして評価を受けることはできないのである。ジャーナリストにはジャーナリズムに対して使命感があると言われているが、一般的な職業と同様にトップダウンによる指示やその報道にニーズがあるかで取材内容を決めている。

社会的評価を受けているジャーナリストの書いた記事や報道(ジャーナリズム)は影響が大きい。フリージャーナリストの草分けである黒田清のように「ジャーナリズムの基本は伝えることではなく弱者の訴えを代弁すること」を信念とする者もいるように、日本独自に発展したジャーナリズム観も生まれている。また「ジャーナリズムとは権力者が報じられたくない事を報じること。それ以外のものは広報に過ぎない」という箴言も存在する。

ニュース雑誌の巻頭を飾るような記事を、雑誌社に売り込むことを仕事にしているフリージャーナリストのことを「トップ屋」と呼ぶ。

ゴシップ誌に代表される芸能人の結婚・離婚などのスキャンダル情報を主に扱うジャーナリズムは、イエロージャーナリズムと呼ばれる。イエロージャーナリズムをジャーナリズムに含めるべきかどうかはつねに論争となる点ではあるが、報道価値の点からみると、社会的には評価されない傾向にある。

また、ジャーナリストは他の職業と比較すると非常に身の危険がともない殉職する者も少なくない。特に、戦場ジャーナリストは、紛争地を取材中に死亡したり、負傷したりする者も少なくない。ジャーナリストに危険が及ぶのは紛争地の取材だけではなく、戦後の日本においても公式には自殺や事故死などとして処理されるが極めて不審な死を遂げたジャーナリストもいる。日本平和学会は特定秘密保護法により、特にフリージャーナリストは同法に違反した容疑で逮捕される可能性が高まると主張している[5][6]

分業制

ジャーナリストのなかでも、特に記事執筆のために必要なデータ収集を専門とする人間を「データマン」、そしてデータマンの集めてきたデータを元に記事を執筆する人間を「アンカーマン」と呼ぶ。

いわばデータマンはアンカーマンのアシスタント的な役割を果たしており、多くのジャーナリストはまずデータマンとして経歴をスタートし、経験を積んだ上でアンカーマンとなるのが一般的である。テレビのニュース番組司会者ニュースキャスター)のことを「アンカーマン」と呼ぶのは、この用法が転じたものである。司会者としてのアンカーマンの役割は実際のアンカーマンではなく、その役割は別に存在する。また、司会者としてのアンカーマンの下積みはデータマンではなく、ニュースキャスターである。


注釈

  1. ^ 例:国際ジャーナリスト、軍事ジャーナリスト、経済ジャーナリスト、教育ジャーナリスト、芸能ジャーナリスト、中東ジャーナリスト、皇室ジャーナリスト。
  2. ^ 『ジャーナリズムの原則』の著者でニューヨーク・タイムズのワシントン支局長を務めたビル・コヴァッチは、真実を追求する作業を行わない者はジャーナリストとは呼べないと指摘している[1]
  3. ^ アメリカではジャーナリストの取材対象からの独立が強く求められていて、記者が社会運動にかかわることは固く禁じられている[3][4]

出典







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