ガル級潜水艦 ガル級潜水艦の概要

ガル級潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/12 14:15 UTC 版)

ガル級潜水艦
基本情報
種別 通常動力型潜水艦
建造所 ヴィッカース造船所
運用者  イスラエル海軍
就役期間 1976年 - 2002年
前級 S級T級
準同型艦 206型潜水艦
次級 ドルフィン級
要目
常備排水量 420トン
水中排水量 600トン
全長 45.0 m
4.7 m
吃水 3.7 m
機関方式 ディーゼル・エレクトリック方式
主機 ・MTU 12V493 TY60
 ディーゼルエンジン×2基
AEG発電機×1基
・電動機×1基
推進器 スクリュープロペラ×1軸
出力 1,200 bhp / 1,800 shp
速力 水上11ノット / 水中17ノット
兵装 533mm魚雷発射管×8門
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来歴

イスラエル海軍では、まず第二次中東戦争後の1958年にイギリス海軍中古のS級潜水艦2隻を導入して、潜水艦の運用に着手した。また19678年にはT級潜水艦3隻も取得されたものの、このうちの「ダカール」が回航中に消息不明になるという悲劇に見舞われた[1]

しかしこれらの艦はいずれも第2次世界大戦世代であり、更新が必要とされていた。このことから、1972年4月、ヴィッカース造船所 (Vickers Shipbuilding and Engineering社に対し、潜水艦3隻が発注された。これによって建造されたのが本級である[1]。なお、西ドイツの設計を採用したにもかかわらずイギリスの会社で建造されたのは、アラブ世界との関係に配慮したためとされている[5]

設計

本級はリューベック社のガブラー教授による設計を採用しており、西ドイツ海軍の206型潜水艦の準同型艦にあたる。ドイツ本国版とは一部の諸元が異なるほか、司令塔の形状にも差異があり、また熱帯での運用に対応した[1]

船型は涙滴型を採用している。構造様式は単殻式とされており、また重量軽減のため耐圧横隔壁は省かれた[1]。なお206型では、耐圧殻構造材として、新開発の非磁性高張力鋼が採用されていた[6]。機関にディーゼル・エレクトリック方式を採用したのは206型と同様で[7]、MTU 12V493 TY60ディーゼルエンジン2基を原動機として、AEG製発電機と組み合わせる方式とされている[1]

西ドイツ海軍の潜水艦は沿岸防衛任務を主眼としており、行動範囲や兵装搭載量は比較的限定的である一方、小型の艦型を採用してターゲット・ストレングス(TS)を削減するとともに水中放射雑音の低減も図り、敵ASWに対する被探知防止を重視していた[6]。これは本級にも引き継がれており、地中海の多彩な環境においては非常に探知されにくくなった。ただし行動範囲の狭さは、イスラエル海軍にとっては不満点となった[1]

装備

武器システムはイギリス製のものとなっている。魚雷発射管8門は艦首に配置されており、いずれもスイムアウト式を採用した。予備弾2発も搭載されている。ただし使用されるMk.37魚雷の鈍足さはイスラエル海軍にとっては不満点となった。その後、1987年から1988年にかけて、発展型のNT37Eへと更新された。また1983年には、ハープーンの運用にも対応している[1][2]

有線誘導魚雷を制御するTIOS武器管制システムはパッシブソナー・システムと連接されている。このソナー・システムはオペレータ1人で操作可能であり、必要であればアクティブでの運用も可能である[1]

本級で特徴的な装備として、哨戒ヘリコプターへの対策として、隠顕式のブローパイプ英語版艦対空ミサイルの搭載が予定されていたが、これは実現しなかった[1]


注釈

  1. ^ 直接的には、同国海軍のS級潜水艦「タニン」(旧英「スプリンガー」)の艦長として第三次中東戦争に従軍し[4]1968年から71年までイスラエル海軍潜水艦部隊の司令官を務め、その後本級の開発プロジェクトを統括することとなった海軍士官アブラハム (アイヴァン)・ドロールの息子"ガル"の名前に由来する。
  2. ^ "タニン"は日本語版のイザヤ書では"竜"などと訳されている事が多い。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j Gardiner 1996, pp. 191–192.
  2. ^ a b Sharpe 1989, p. 288.
  3. ^ globalsecurity.org (2011年). “Gal submarine”. 2019年1月20日閲覧。
  4. ^ submarines.dotan.net S-CLASS
  5. ^ 野木 1998.
  6. ^ a b 水上 1998.
  7. ^ Gardiner 1996, pp. 146–147.
  8. ^ חדשות - צבא וביטחון nrg - ...בחיל הים שקלו לקרוא לצוללת”. Nrg.co.il. 2011年12月18日閲覧。


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