イーサネット 機器及びケーブル

イーサネット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/30 20:12 UTC 版)

機器及びケーブル

イーサネットを構成するための機器及びケーブルについて説明する。

ネットギア社のスイッチングハブ

機器

イーサネットの中継を行う機器は、その接続構成や役割によって4つに大別される。

リピータ
物理層をサポートする機器。物理信号を中継・再生し、ネットワークを延長する。
リピータハブ(ダムハブ、カスケードハブ、ハブとも)
物理層をサポートする機器。リピータを多ポート化したもの。複数の端末と接続し物理信号の中継・再生を行う。
ブリッジ
データリンク層をサポートする機器。イーサネットフレームをMACアドレスに基づいて中継する。中継機能がソフトウェア処理されるものを主に指すことがある。
スイッチングハブ(レイヤー2スイッチ、LANスイッチ、スイッチ、ハブとも)
データリンク層をサポートする機器。ブリッジを多ポート化したもの、またはリピータハブにブリッジの機能を持たせたもの。複数の端末と接続しイーサネットフレームをMACアドレスに基づいて中継する。中継機能がハードウェア処理されるものを主に指すことがある。最も代表的なイーサネットのネットワーク機器。

ケーブル

イーサネットの接続に用いられる伝送媒体として、以下のものがある。

10Gbps通信用のダイレクトアタッチケーブル

同軸ケーブル

導線を筒状の導体で覆ったケーブル。ケーブルの両端に信号の反射防止のために終端抵抗(ターミネーター)が必要である。

初期イーサネットである10BASE510BASE2では、共に50Ωインピーダンスの同軸ケーブルが使用された。10BASE5は直径10mmの通称Thick Ethernetケーブル(またはイエローケーブル)を使用[41]している。後発の10BASE2ではRG-58英語版タイプの通称Thin Ethernetケーブルを使用し、直径5mmに改善されている[42]10BROAD36ではRF接続による通信路としてケーブルテレビで用いられる75Ωインピーダンスの同軸ケーブルが用いられた。

10GBASE-CX4100GBASE-CR4では、データセンター内の高速短距離用途で2芯同軸ケーブル(Twinaxケーブル)[43]が用いられ、主にダイレクトアタッチケーブルの着脱モジュールとして実装されている。

光ファイバーケーブル。SMFは黄色、MMFは橙色の被覆を用いる。

光ファイバーケーブル

光信号を伝送するケーブル。多くは送受信号用に2本を用いるが、異なる2つの波長信号を1ケーブル内で同時に送受する方式もある。

短距離用にマルチモードファイバー(MMF)、長距離用にシングルモードファイバー(SMF)を使用する。

  • MMF: 芯線(コア)が太いもの。曲げに強く、伝送損失が大きい。安価。
  • SMF: 芯線(コア)が細いもの。曲げに弱く、伝送損失が小さい。高価。

10BASE-F100BASE-FX1000BASE-SX/LX10GBASE-SR/LR/ER100GBASE-Rなどで使われる。イーサネットの光ファイバー通信におけるケーブルは、おおむねファイバーチャネルSONET/SDHで用いられている技術を踏襲し、以下のようにISO 11801で仕様が規定されているものを用いる[44]。1kmあたりの減衰量や帯域幅などの信号特性によってカテゴリに分類されており、特にMMFは通信速度向上に伴い上位のケーブル仕様が要求される。

ファイバーケーブル規格一覧
モード カテゴリ コア/クラッド径
[μm]
減衰量
[dB/km]
全モード帯域幅
(850nm波長)
イーサネットでの主な利用 備考
MMF OM1 62.5/125 3.5 200 MHz・km 100BASE-FX: 2km
1000BASE-SX: 275m
10GBASE-SR: 26m
25G以上は非対応
OM2 50/125 3.5 500 MHz・km 100BASE-FX: 2km
1000BASE-SX/LX: 550m
10GBASE-SR: 82m
25G以上は非対応
OM3 50/125 3.0 1500 MHz・km 10GBASE-SR: 300m
100GBASE-SR2/SR4: 75m
100GBASE-SR10: 100m
OM4 50/125 3.0 3500 MHz・km 10GBASE-SR: 400m
100GBASE-SR2/SR4: 100m
100GBASE-SR10: 150m
400GBASE-SR4.2: 100m
OM5 50/125 3.5 4700 MHz・km 400GBASE-SR4.2: 150m
SMF OS1 9/125 1.0 - 100BASE-FX: 20km
1000BASE-LX: 5km
10GBASE-LR: 10km
10GBASE-ER: 40km
100GBASE-LR4: 10km
100GBASE-ER4: 40km
OS2 9/125 0.4 -
ノートパソコンに接続されたイーサネット用のツイストペアケーブル。
一般的なイーサネット用の接続ポート(RJ-45

ツイストペアケーブル

両端にオス型RJ-45コネクタのついたケーブル。一般に「LANケーブル」と呼ばれる。

銅線8本による4対の撚り対線よりついせんで構成され、平衡接続で100Ωの特性インピーダンスを持つ。終端抵抗(ターミネーター)は仕様上不要で、端子の振動の影響も仕様の範囲内であるため、8本のうち使わない端子がある場合でも何も接続する必要がない[注釈 3]圧接工具を使えば容易に任意の長さのケーブルにコネクタを接続することもできる。

ケーブルには配線構成によっていくつかの種類がある。

カテゴリによる分類
転送速度に応じた周波数特性を満たすケーブルがカテゴリとして分類されている。TIA/EIA-568およびISO/IEC 11801など複数の規格で横断的に仕様が規定されており、カテゴリ1, 2, 3, 4, 5, 5e, 6, 6A, 7, 7A, 8 の名称が広く用いられている[45][46]。「Cat.5」や「Cat.5e」などのカテゴリ略称が用いられる。
シールドの有無による分類
  • UTP (Unshielded twisted pair): ノイズシールドのないもの。
  • STP (Shielded twisted pair): ノイズシールドのあるもの。高い周波数特性を持っているが、機器にアース線を取り付けるなど接地の必要があり、既存のUTPを単純にSTPに置き換えることはできないことが多いため、特にカテゴリ6A以上を用いる場合は注意を要する。
ピン接続による分類
  • ストレートケーブル: 両端のコネクタが同じピン番号同士で接続されているもの。通常使うケーブル。
  • クロスケーブル: 両端コネクタの送受ピンが交差接続されているもの。旧型の機器などで、ハブを複数台カスケード接続する場合や、端末同士を1対1で接続する場合に用いられた。1000BASE-T以降ではほとんど場合、Auto MDI/MDI-Xと呼ばれる送受ピン自動判別機能が機器に備わっている[47]ため、クロスケーブルは必要がない。

参考文献

  1. ^ 「Ethernet」を含む商標には他社が登録しているものも存在する。
  2. ^ イーサネットなどの長い歴史を持つ技術分野では、8ビットのことをバイトとは言わずにオクテットと表現することがある。これは1バイトが必ずしも8ビットではないシステムがかつて存在した名残による。また、ジャンボフレームをサポートするネットワークを用いればより大きいサイズに分割することもできる。
  3. ^ ただし、オーディオ機器などのノイズやコネクタの振動の影響を受けやすい機器のためのターミネーター機器もある(『ACOUSTIC REVIVE RLT-1』など)

出典

  1. ^ Stallings, William,. Foundations of modern networking : SDN, NFV, QoE, IoT, and Cloud. Agboma, Florence,, Jelassi, Sofiene,. Indianapolis, Indiana. ISBN 978-0-13-417547-8. OCLC 927715441. https://www.worldcat.org/oclc/927715441 
  2. ^ Master of IP Network 第11回 読者調査結果 ~無線LAN/ギガビット・イーサネットの導入状況は?~”. @IT (2003年12月25日). 2024年1月1日閲覧。
  3. ^ IEEE 802.3-2022
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  26. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 8
  27. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 12.2, 15.1
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  29. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 11
  30. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 100
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  32. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 24.1.4.1
  33. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 40.1.3.1
  34. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 36.2.4
  35. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 74
  36. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 3.1.1
  37. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 4.2.3.2
  38. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 4.2.4
  39. ^ IEEE 802.1D-2004, Clause 6.6
  40. ^ IEEE 802.1Q-2022, Clause 8.6
  41. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 8.8.8.1
  42. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 10.5.1
  43. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 54.6, Clause 92
  44. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 38.3, 38.4, 52.14
  45. ^ ISO/IEC 11801-1:2017 - クラスA, B, C, D, E, EA, F, FA, I, II がそれぞれ Cat.1, 2, 3/4, 5(e), 6, 6A, 7, 7A, 8.1, 8.2 に相当する。
  46. ^ TIA/EIA-568-C.2-1 - Cat.3, 5e, 6, 6A, 8.1 が定義されている。
  47. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 40.4.4
  48. ^ IEEE 802.3-2018, Clause 1.2.3






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