イナズマンF 概要

イナズマンF

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/15 08:54 UTC 版)

概要

本作品は 『イナズマン』の第3・4クールに相当する[1][2]。前作第24話・第25話(最終話)はファントム軍団との最終決戦であると同時に新たな敵・デスパー軍団の登場編でもあり、物語はそのまま『イナズマンF』へと続いた[注釈 1]

しかし、いわゆる「変身ヒーロー」が活躍する子供向け特撮アクションドラマが、作品の乱立によって衰退に向かいつつあった当時の状況下、『イナズマン』もスタッフの意気込みとは逆に低視聴率に苦しんだことから、本作品は『イナズマン』とは大きく方向性を変えている[3]

方向性変更の中心となったのは、東映側のサブプロデューサーだった加藤貢である[4]。これがプロデューサーとして最初の作品だった加藤は、低視聴率の原因やその打開策について、助監督の長石多可男をはじめとする若手スタッフとの間で意見を交換していた[5]。折りしも、チーフプロデューサーの平山亨は他の番組も抱えており、先任サブプロデューサー(実質的にはチーフ)だった井上雅央も第2クール終了後に他番組へ移動したため、平山は加藤に『イナズマン』を任せることにした。

加藤が最初に着手したのは、設定の変更である。既にイナズマンこと渡五郎のバックボーンであった「少年同盟」は、原作設定を活かし切ることなくフェイドアウトしていたが、本作品では、第2クールまでのレギュラーだった大木姉弟や丸目豪作ともども完全にカット[5](ただし初期エンディング画像で「少年同盟」は登場していた)。サナギマンや愛車・ライジンゴーの登場場面も極力減らした[5]。代わって、妻子を敵組織・デスパー軍団に拉致されているという設定を持つインターポール捜査官・荒井誠が五郎のサポーターとして登場。日活鈴木清順に悪役の素質を見出され、キャリアを積んでいた上野山功一が荒井役に起用された。こうしたヒロインも主人公の弟的存在の子供レギュラーも排除され、主人公と相棒の男性キャラクターを中心とした展開は前作の『イナズマン』の中盤以降で既に試みられており、五郎と豪作の2人だけしか登場しないエピソードが多く作られた。しかし、『イナズマン』のレギュラーヒロインだった大木サトコが削除されたことで五郎と荒井の2人を中心とした、ヒロインも子供もいない男臭い雰囲気になるのは加藤らスタッフも辛かったらしく、初期の時点で女性ゲストを頻繁に登場させるようになった。

スタッフ面でも、硬派のエピソードを数多く書いていた上原正三をメインライターに、新人監督ながらアーティスト志向が強く、 ATG ファンの加藤とはウマが合った塚田正煕[注釈 2]をメイン監督に据えるなど監督・脚本陣を大きく刷新した[3]。この結果、本作品は、強制収容所を思わせる実験都市・デスパー・シティを擁し、サイボーグによる独裁国家を企図するデスパーと、これに対峙し、デスパーの打倒とデスパー・シティ市民の解放を目指す五郎・荒井の「たった2人のレジスタンス」を軸とするドラマを前面に押し立てることになった。

新体制の下で、主演の伴直弥をはじめとするキャストや、加藤、上原、塚田を中心とするスタッフは「自分たちの作りたい・演じたいドラマ」作りに力を注いだ[5]。加藤貢は後に、「プロデューサーとして一年目で、ひょっとしたら生涯最高の作品を作ってしまったのかもしれません。鳥居恵子に出演交渉したときのような情熱は、今の自分にはもうありませんね」と述懐している[5]


注釈

  1. ^ 第25話の最後に「つづく」とある。
  2. ^ テレビマガジン特別編集『変身ヒーロー大全集』(講談社)における加藤貢の証言によると、塚田は音楽面にも造詣が深く第18話でレッドクインのテーマとして使われたピアノ曲「暗殺のバラード(シナリオでの表記)」や、第22話で白鳥ジュンが歌う楽曲は塚田のオリジナルスコアとのこと[5]
  3. ^ 本放送時には、少年同盟員が運転する「ナショナル自転車」のCFも放送されていた。
  4. ^ 準備稿サブタイトルは「さらばガイゼル!イナズマン最期の日
  5. ^ デスパー・シティでは読書が禁じられている。荒井と再会した際に読んでいた本は島崎藤村の『若菜集』。
  6. ^ 書籍『変身ヒーロー大全集』では、名称を合体ウデスパー(改良型)と記述している[13]
  7. ^ モチーフは刑具の「鉄の処女[16]
  8. ^ 準備稿の脚本ではウデスパーαにジープ上で撲殺されている。
  9. ^ カレンに敵意を露わにして物を投げつけ、手にけがを負わせる(結果としてカレンと五郎の出会いのきっかけを作る)市民の役で、エンディングテーマを唄う水木一郎がカメオ出演している。
  10. ^ 準備稿では自身を手当てしてくれた五郎に好意を抱き、その愛に殉じて最期を迎えるなど「悲劇のヒロイン」としての側面がより強調されていた。
  11. ^ 書籍『変身ヒーロー大全集』では、名称をデスパー戦闘員と記述している[10]
  12. ^ 造型もファントム兵士の頭部を改造したもの。
  13. ^ プロデューサー加藤貢の変名[22]
  14. ^ メロオケは、前作の第18話で本作品に先駆けて使用されていた。
  15. ^ このLPには前作『イナズマン』の歌も併せて収録されていた。
  16. ^ 本作品に少年同盟は登場しないが、歌詞は少年同盟がデスパーと戦うという内容になっている。
  17. ^ 書籍『全怪獣怪人 下巻』では、名称をドリルデスパー(2代目)と記載している[20]
  18. ^ 書籍『全怪獣怪人 下巻』では、名称をノコギリデスパー(2代目)と記載している[20]
  19. ^ 書籍『全怪獣怪人 下巻』では、名称をジェットデスパー(2代目)と記載している[20]
  20. ^ 書籍『全怪獣怪人 下巻』では、名称をハンマーデスパー(2代目)と記載している[20]
  21. ^ 書籍『全怪獣怪人 下巻』では、名称をスプレイデスパーと記載している[20]

出典

  1. ^ 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 110–111, 「イナズマンF」
  2. ^ a b 宇宙船SPECIAL 1998, p. 163
  3. ^ a b c d e 変身ヒーロー大全集 1995, p. 188, 「作品解説 イナズマンF」
  4. ^ 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 151、188.
  5. ^ a b c d e f 変身ヒーロー大全集 1995, p. 151, 「プロデューサー・インタビュー 永遠なる変身ヒーロー 若き情熱と感性の結晶 加藤貢」
  6. ^ 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 189–191, 「作品紹介/イナズマンF EPISODE GUIDE 全23話」.
  7. ^ ファンタスティックコレクションNo.48『イナズマンF』(朝日ソノラマ)p.35
  8. ^ 「スーパー戦隊制作の裏舞台 上原正三」『スーパー戦隊 Official Mook 20世紀』《1975 秘密戦隊ゴレンジャー》講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2018年3月24日、31頁。ISBN 978-4-06-509616-1 
  9. ^ 変身ヒーロー大全集 1995, p. 112.
  10. ^ a b c 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 114–115, 「恐怖のガイゼル総統とデスパー軍団」
  11. ^ 変身ヒーロー画集 2004, pp. 148、198.
  12. ^ a b 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 118–119, 「ロボット戦士 大逆襲!」
  13. ^ a b c d 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 120–121, 「戦慄の新参謀・サデスパーの挑戦!」
  14. ^ 変身ヒーロー画集 2004, p. 200.
  15. ^ 東映×石ノ森 2010, p. 25.
  16. ^ 変身ヒーロー画集 2004, p. 201.
  17. ^ 宇宙船SPECIAL 1998, p. 70.
  18. ^ 変身ヒーロー画集 2004, pp. 198、200.
  19. ^ 変身ヒーロー画集 2004, p. 198.
  20. ^ a b c d e f g 『全怪獣怪人』 下巻、勁文社、1990年11月30日、163頁。ISBN 4-7669-1209-8。C0676。 
  21. ^ イナズマン大全 2003, pp. 96–141.
  22. ^ 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 151、191.
  23. ^ a b 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 122–123, 「自由と平和の凱歌」
  24. ^ 変身ヒーロー大全集 1995, pp. 123、207.
  25. ^ 『イナズマン大全 イナズマン イナズマンFの世界』 岩佐陽一・編、2003年、双葉社、136⁻137頁。
  26. ^ 北海道新聞』1974年9月テレビ欄。
  27. ^ デーリー東北』1974年10月2日 - 10月30日付朝刊テレビ欄。
  28. ^ 河北新報』1974年8月6日 - 8月27日付朝刊テレビ欄。
  29. ^ 『河北新報』1974年8月25日付朝刊テレビ欄。
  30. ^ 『河北新報』1975年1月10日 - 1月31日付朝刊テレビ欄。
  31. ^ 福島民報』1974年4月12日 - 9月27日付朝刊テレビ欄。
  32. ^ 『福島民報』1974年4月8日 - 9月23日付朝刊テレビ欄。
  33. ^ 『福島民報』1974年9月4日 - 11月6日付朝刊テレビ欄。
  34. ^ 信濃毎日新聞』1974年9月テレビ欄。
  35. ^ 山梨日日新聞』1974年9月テレビ欄。
  36. ^ 静岡新聞』1974年9月テレビ欄。
  37. ^ 中日新聞』1974年9月テレビ欄。
  38. ^ 山陰中央新報』1974年11月テレビ欄。
  39. ^ 山陽新聞』1974年9月テレビ欄。
  40. ^ 中国新聞』1974年4月26日付朝刊テレビ欄。
  41. ^ a b 熊本日日新聞』1974年11月テレビ欄。
  42. ^ 宮崎日日新聞』1974年9月テレビ欄。
  43. ^ 「VisualRadar」『宇宙船』Vol.112(2004年5月号)、朝日ソノラマ、2004年5月1日、66頁、雑誌コード:01843-05。 
  44. ^ a b c d e f g 変身ヒーロー大全集 1995, p. 157, 「変身ヒーローコミック書誌」






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