アジサイ シーボルトとあじさいと牧野富太郎

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アジサイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/03 20:21 UTC 版)

シーボルトとあじさいと牧野富太郎

鎖国時代に長崎にオランダ商館員の一員として日本に渡来し、オランダ人と偽って出島に滞在し医療と博物学的研究に従事したドイツ人医師にして博物学者シーボルトは、オランダに帰還してから植物学者のツッカリニと共著で『日本植物誌』を著した際にアジサイ属 14 種を新種記載している。その中で花序全体が装飾花になる園芸品種のアジサイを Hydrangea otaksa Siebold et Zuccarini と命名している。しかしこれはすでにカール・ツンベルクによって記載されていた H. macrophylla (Thunberg) Seringe var. macrophyllaシノニム(同一種)とみなされ、植物学上有効名ではない。にもかかわらず、牧野富太郎が自著の各種植物図鑑において Hydrangea macrophylla Seringe var. otaksa Makino の学名を用い種の記載者が Seringe で変種の記載者が牧野自身であるとする事実と異なる処置を行っていることから、一部の植物学書であたかも H. otaksa が植物学的な有効名であるかのような誤解が広まってしまっている。

牧野は上記の植物学的に不可解な処置と矛盾する言動をまた、著書の中で行っている。シーボルトは自著の中で otaksa をアジサイが日本で「オタクサ」と呼ばれていると命名の由来を説明しているが、牧野は日本国内でこの呼称が確認できなかったことからシーボルトの愛妾の楠本滝(お滝さん)の名を潜ませたと推測し、美しい花に花柳界の女性の名をつけたとして強く非難している。そして自らも新種の笹に自らの妻の名から「スエコザサ」と名付けた。

牧野のこの推測によって「オタクサ」の名はシーボルトとお滝さんのロマンスをイメージさせて文人作家の創作意欲を刺激し、詩歌にこの名を詠み込むことなどが盛んに行われている。


注釈

  1. ^ 変種の一つとされる場合もある[8][9][10]
  2. ^ 現在は「生物多様性情報規格 (TDWG)」Biodiversity Information Standards (TDWG) と改称されている。
  3. ^ 味のある絵」「味な趣向」などの用法における味。
  4. ^ リトマス試験紙と逆なので注意されたい。
  5. ^ アントシアニンそのものも酸性度によって色が変化する[36]
  6. ^ 「狛犬」には南方系の「石獅子」だけでなく、北方系の「コマ(高麗)」の文化要素が混合している。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. f. normalis (E.H.Wilson) H.Hara ガクアジサイ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月24日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. f. macrophylla アジサイ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月24日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. f. hortensia (Lam.) Rehder セイヨウアジサイ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月24日閲覧。
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  9. ^ 若林三千男 著「アジサイ」、下中直人 編『世界大百科事典』(2009年改定新版)平凡社、2009年。 
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  11. ^ a b c d e f g h i 馬場篤 1996, p. 17.
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  54. ^ “新庄の“あじさいせんべい”忘れないよ 月末、「菓匠たかはし」90年の歴史に幕”. 山形新聞 (株式会社山形新聞社). (2021年2月2日). https://www.yamagata-np.jp/news/202102/02/kj_2021020200036.php 2021年2月4日閲覧。 


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