厩舎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/07/09 16:58 UTC 版)
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厩舎(きゅうしゃ、英語:StableあるいはBarn)には複数の意味があり、
歴史
世界最古の厩舎は、古代エジプトの王ラムセス2世が建設した、ペル・ラムセスで発見されたもので、17,000 m2、460頭を飼育するものだった[1]。
欧米の馬関係の用語
ヨーロッパ、特に西ヨーロッパのイギリス、ドイツ、フランス、オランダなどでは、馬は、上流階級、富裕層などが、一般の乗馬、趣味のため、また家族の一員(ペットの一種)として飼っており、郊外などに行けば無数(きわめて多数)の厩舎が存在している。競馬とは無関係のものが圧倒的に多い。
種類
次のような種類がある。
- livery stable(預託厩舎) ─ 一般の人が個人で所有している馬(愛馬)を預け、世話をしてもらう施設であり、毎月管理費を払ってプロに馬の世話を任せ、週末に自分が乗りに行く。
- 乗馬学校・乗馬クラブの厩舎(Riding School(Riding Centre) Stable)─ 欧米には子供から大人まで(水泳やテニスなどと同様に)"習い事"感覚で通う学校(クラブ)がきわめて多数あり、その学校にも馬を飼う(馬が暮らす)ための厩舎がある。
- Stud / Breeding Farm(生産牧場・繁殖厩舎) ─ 馬場馬術(Dressage)や障害馬術(Show Jumping)など、(欧米ではオリンピック競技だけでなく乗馬競技が盛んで)乗馬競技専用の血統を育てるための厩舎。また乗馬人口が多く、乗馬学校も多いので馬の需要が大きく、馬の繁殖も大きなビジネスとなっており繁殖のための厩舎も多い。
- 王族や貴族が所有する私的な厩舎 ─ ヨーロッパの王族や貴族は、地位や財力を示すため、軍事のため、趣味のため(キツネ狩りや乗馬)のため、馬に乗ることが古代や中世からからの習慣や "たしなみ"となっており、また自分で所有する馬車を動かすためにも馬を飼う必要があり、現在でも、王室は王室の厩舎を所有していることが多い。貴族(や"元貴族"の血筋の人々)も、現在でも、邸宅の敷地内に私的に厩舎も所有していることがある。
- 地主や富裕層が所有する私的厩舎 ─ 王族や貴族ほどの歴史は持たなくても、地主や、過去数十年でビジネスに成功し財力を蓄えた富裕層なども、広大な敷地を手に入れた場合、貴族の伝統を模倣して馬を飼いたがる人も多く、私的に厩舎を持つことがある。
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ベルギーの画家en:Jan Stobbaerts(1838-1914)が描いた厩舎内部の油絵
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イギリスの、とある厩舎
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イギリスの、とある厩舎
厩舎の施設
厩舎の多くは通常、次のような施設を備える。
- 個室(英語 :Stall / Loose Box) ─ 馬が1頭ずつ暮らすための個室。ヨーロッパでは、馬が中で自由に方向転換したり横になって眠れるよう、最低でも 3.5メートル ✕ 3.5メートル必要だと考えられており、理想的には4メートル ✕ 4メートル以上あると良いとされている。床は現代ではコンクリート製が多いが、その上に厚いゴムマットを敷き、さらにその上に藁(わら)やウッドチップ(木屑)を敷き詰め、馬の脚や関節への負担を軽減し、快適な空間を提供する。馬は個室で、立ったまま眠ることも、(安心すると)横になって、短時間、爆睡することもある。
- ハーフドア(Dutch Door)─ 個室ドアの上部が開閉式になっていたり開放されており、馬が通路に顔を出して周囲を観察したり、近づいた人と接触できるようになっていることが一般的である
- 自動給水器─ 馬が鼻先でレバーを押すといつでも新鮮な水が出る装置
- 馬のケアのための空間
- 飼料室(フィードルーム、英語:Feed Room)─ 馬の食事に必要なエンバクやムズリ、その他健康のためのサプリメントの調合のための部屋。ネズミの侵入を防ぐ構造にすることが一般的。
- 馬具置場(英語 :Tack Room)─ 鞍(サドル)、頭絡(ブリドル)、手綱、馬着(ブランケット)などの馬具を保管する部屋。革製品が多く、カビを防ぐためにエアコンが効いていることも多く、馬のオーナーや乗り手らの社交ラウンジ(談笑場)を兼ねていることも多く、ソファが置かれたりコーヒーメーカーが置かれることも多い。
- 周囲の運動エリア ─ 建物のそばに、馬が運動をするための、柵で囲われた馬場が設けられることが一般的。(すべての厩舎が備えるわけではないが)周囲に広大な放牧地がある場合は、馬の格好のストレス解消の場所となる。
日本の競馬用語
日本の競馬界(や競馬ファンの界隈)では、競走馬と調教師の管理関係を表す際に多く用いられ、例えば「競走馬Aの管理調教師はB」という表現の代わりに「競走馬AはB厩舎所属」という表現が用いられる。馬小屋そのものを指す場合は、馬房という言葉が使われる事が多い。
「厩」が常用漢字に含まれていないため、「きゅう舎」と表記されることがある。
厩舎設置場所の種類
内厩制
日本の中央競馬においては、厩舎は美浦トレーニングセンター、栗東トレーニングセンター内にある。厩舎には日本中央競馬会(JRA)から前年の厩舎の成績により最大30、最小12の管理馬房が与えられる(いわゆる「メリットシステム制」)[2]。地方競馬においては別にトレーニングセンターを設けそこに厩舎を置く場合もあるが多くは競馬場に併設されている。これらは内厩制と呼ばれ、中央・地方とも厩舎地区への部外者の入場は厳しく制限されており、人間・車両の出入口も限定されさらにゲートや警備員詰所が設置されている。
現在の日本競馬では基本的に内厩制での施設整備が進められ、このように厳重な警備が敷かれている。理由としては、競走の公正確保、すなわち競馬関係者が部外者から不正敗退行為を頼まれることを防止するため[3]と、感染力の高い馬インフルエンザや競走馬にとっては致命的な馬伝染性貧血のような家畜伝染病予防法で規定されている疾病が持ち込まれることを未然に防止するためである。
外厩制
内厩制に対して外厩制と呼ばれるものもあるが、日本の競馬で歴史的に見た場合には複数のシステム形態がある。
- 競馬場内の厩舎地区やトレーニングセンターではなく、競馬場周辺の私有地に厩舎が点在しているシステム。地方競馬の場合、競走馬は競馬場に徒歩や馬運車で通う。
- レースを自地区の馬のみで行わず、他地区の馬にも開放するシステム。いわゆる「交流競走」がこれにあたるが、全レースを対象にこれが行われている場合、「外厩制」と呼ぶことがある。
- 南関東公営競馬とホッカイドウ競馬で行われている、競馬場の厩舎に所属した競走馬について、一定の許認可を得た民間の牧場や調教施設で調教を行い、競走当日の競馬場に輸送して出走させる「認定厩舎制度」。
- 競馬場や主催者が運営するトレセン以外の場所にある主に民間のトレセンの事。3の認定厩舎制度と似ているが、4の場合は一旦競馬場や主催者が運営するトレセンにある厩舎に入厩せねばならず、外部のトレセンから直接競馬場に輸送してレースに向かうことは認められていない。
1.のパターンの外厩は地方競馬では古くから見られたもので、平成期に入っても川崎競馬場の一部厩舎や宇都宮競馬場や名古屋競馬場(弥富トレセン)などで見られたが、川崎の場合は小向トレセンへの集約、宇都宮の場合は競馬場自体の廃止、名古屋の場合は競馬場の移転によって現存していない。今では笠松競馬場(競馬場敷地外に厩舎があり、競馬場へは徒歩で通う[4])や兵庫県競馬の一部(西脇馬事公苑)や大井競馬場の一部(小林トレセン)などが外厩制を敷いている。これらのケースの「外厩」は、単に厩舎が競馬場内にあるか競馬場外にあるかという違いを指し、内厩との差異もそれほど見られない。
中央競馬では4のような美浦・栗東以外の民間の管理するトレーニングセンターのことを指し、古くはシンボリルドルフがレース出走後オーナー牧場で調整され、次のレースが迫ってからトレセンに入厩していたことで知られている。近年ではノーザンファーム天栄やノーザンファームしがらきに代表される外厩施設にてレース直前まで調整を続け、JRAの規定ギリギリであるレース1週前に美浦・栗東トレセンに入厩する「10日競馬」と呼ばれる調整法も多用されている。2016年のNHKマイルカップを制したメジャーエンブレム、翌年の同レースを制したアエロリット、2018年の三冠牝馬アーモンドアイや同年の菊花賞を制したフィエールマンらがノーザンファーム天栄で調整され、レースの直前に厩舎に戻る、前哨戦を使わないといった新しい調整法で活躍を見せた事で、中央競馬においても「外厩」の存在がレースに大きな影響を与えるファクターとして注目されるようになっている。ただし、地方競馬場で見られる各運営母体の管理する外厩と異なり、直接外厩からレースに向かうことは出来ないため、レース前には所属するトレセンの厩舎に入厩し、当週追い切り等も必ず所属厩舎で行われる。認定厩舎制度が行われている地方競馬でも、認定厩舎以外でのトレセンで調整を行う事例があり、そのような場合は中央競馬同様、一旦競馬場や主催者運営の厩舎に入厩した上でレースに出走させる。
民間の管理する「外厩」から厩舎を経ずに直接レースに出走することが可能な制度が3の「認定厩舎制度」である。認定厩舎に入厩した競走馬は各施設で調教を受け、施設から直接各競馬場のレースに輸送され、レース後も内厩に戻ることなく直接外厩に帰厩する。
2の外厩制は現在は南関地区や東海地区で行われている。高知福山でも一時期行われていたが、福山競馬場の廃止に伴い、現在では行われていない。
厩舎においては調教師の他、厩務員や調教助手が競走馬の管理にあたる。また、調教師と雇用関係を締結した騎手が所属している場合や、養成中の騎手候補生が実地研修を行う場合もある。
なお、国や地域によって内厩・外厩の制度はまちまちで、競馬場・調教場(トレーニングセンター)と厩舎の配置関係も異なる。
厩舎の開業
かつての中央競馬においては、厩舎を開業するためには調教師免許を取得するだけでなく、一定数の管理馬をあらかじめ確保する必要があった。現在ではトレーニングセンター全体の管理馬馬房数の空きに応じて免許取得者に順次開業が許可される。しかし、開業待ちの調教師の人数に対して定年などで引退する調教師の人数が少ない年もありこの様な時には馬房の空きが不足することがあり、その場合厩舎の開業を数年待たされるケースも発生している。
実例としては河内洋が調教師免許取得から開業まで通常1年のところ、開業を2年待たされたケースがある。
厩舎設置場所の一覧
内厩
外厩
- ノーザンファーム天栄
- 山元トレーニングセンター
- 吉澤ステーブルEAST
- KSトレーニングセンター
- 阿見トレーニングセンター
- 松風馬事センター
- ビッグレットファーム鉾田トレーニングセンター
- ミッドウェイファーム(ダーレー・茨城トレーニングセンター)
- 広瀬ステーブル
- 西山牧場阿見分場
- エスティファーム小見川(NEW ERA)
- ノーザンファームしがらき
- グリーンウッド・トレーニング
- 吉澤ステーブルWEST
- 淡路トレーニングセンター
- 宇治田原優駿ステーブル
- 大山ヒルズ
- 山岡トレーニングセンター
- 名張トレーニングセンター
- チャンピオンヒルズ
- 鈴鹿トレーニングセンター
脚注
- ↑ “Oldest horse stables” (英語). Guinness World Records. 2022年8月16日閲覧。
- ↑ メリットシステム制導入前は新規開業調教師は16~18馬房、それ以外は一律20馬房であった。
- ↑ JRAのトレーニングセンターの部外者立入制限のシステムは中央競馬史上最大の八百長である山岡事件の影響が大きいとされる。
- ↑ 笠松競馬場 その7 ~馬専用道①~
関連項目
外部リンク
厩舎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/05 21:08 UTC 版)
馬一覧 - 入厩させた競走馬の調教、餌カードの使用、出走登録・放牧などができる。→調教
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