負荷試験装置
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/22 09:00 UTC 版)
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負荷試験装置(ふかしけんそうち、英: load bank、ダミーロードとも)は、実際の運用負荷(実負荷)を接続することなく、電力源をテストするために電気負荷をシミュレートする電気試験装置の一種である。[1][2]
発電機は、災害時の非常用電源や建設現場の動力源として重要な役割を担っている。これらの設備が、いざという時に必要な電力を安定して供給できるかを確認するには、実際に電気を消費させて性能をテストする必要がある。負荷試験装置は、建物内の実際の設備(照明やエレベーターなど)を動かす代わりに、それらと同等の電気エネルギーを消費することで、安全かつ計画的に試験を行うために使用される。
試験、調整、校正、または検証の手順において、負荷試験装置は発電機、バッテリー、サーボアンプ、太陽光発電などの電力源の出力などの出力端に接続される。本装置は、実負荷と同様の電気的特性を電力源に与えつつ、消費されるべき電力を熱として散逸させる。 電力は通常、装置内の高耐久な抵抗器(抵抗加熱素子)のバンクによって熱に変換され、強制空冷または水冷式の冷却システムによって排出される。
装置には通常、電圧計や電流計などの計測器、負荷制御装置、過負荷保護装置が備わっている。施設に恒久的に設置される固定式のほか、非常用発電機の点検などに用いられる可搬式(ポータブル型)も存在する。これらは、重要な電力システムにおける実社会の需要を再現・検証するために不可欠な付属設備である。[2] また、風力タービンなどの断続的な再生可能エネルギー源の運用中に、電力系統が吸収できない余剰電力を逃がすためにも使用される。[3]
用途
負荷試験装置は、主に以下のような用途で用いられる。
- タービンおよびエンジンディーゼル発電機の工場試験
- 低負荷運転が続くディーゼルエンジンにおけるウェットスタッキング(不完全燃焼成分の堆積)の防止・解消
- 非常用エンジン発電機の定期的な試運転
- バッテリーおよび無停電電源装置(UPS)の放電テスト
- 地上電源テスト
- 常用電源用途における負荷の最適化
- 発電機ピストンリング上のカーボン堆積の除去
- 負荷遮断テスト
- データセンターの電力および空調能力のテスト
負荷試験装置の種類
代表的なタイプとして、抵抗型、誘導型、容量型の3種がある。交流(AC)回路において、誘導負荷と容量負荷は「リアクタンス」を生じさせる。リアクタンスはインピーダンスの虚数成分であり、電流によって素子内に生じる電場または磁場の蓄積に起因する。容量性リアクタンスは1/(2⋅π⋅f⋅C)に等しく、誘導性リアクタンスは2⋅π⋅f⋅Lに等しい。リアクタンスの単位はオームである。誘導性リアクタンスは電流の変化に抵抗し、電流を電圧より遅らせる(遅れ力率)。一方、容量性リアクタンスは電圧の変化に抵抗し、電流を電圧より進める(進み力率)。
抵抗型
最も一般的なタイプであり、発電機と原動機の両方に等価な負荷を提供する。負荷試験装置が消費するキロワット(kW)と同等の負荷が、発電機を通じて原動機に課される。その結果、燃料エネルギーが熱として系外へ排出される。動作の結果として、冷却材からの廃熱、排気および発電機の損失、ならびに補助装置によって追加のエネルギーも消費される。
負荷はグリッド抵抗器などの抵抗素子によって生成され、発生した熱はファンによる強制換気または自然対流、あるいは水冷によって放散される。
実社会における白熱電球や電気ヒーターなどの抵抗負荷、およびモーターや変圧器の抵抗成分(力率1の成分)をシミュレートする。多くはファン冷却を備えたワイヤー抵抗式で、可搬性に優れるためオンサイトでの試験に適している。建物内に組み込まれることもあるが、まれである。[4]
特殊なケースとして、水抵抗器(液体加減抵抗器)が用いられることもある。これは水に塩やソーダを混ぜて導電率を調整し、電極の浸漬深さを変えることで負荷を調整する仕組みの抵抗器である。構造が単純で即席に製作可能なため、設備が乏しい遠隔地などで利用される。 また、鉛蓄電池のテストでは、カーボンパイル(炭素積層)式が用いられ、エンジン始動時の重負荷を精密に再現できる[5]。
誘導型
誘導負荷は鉄心リアクトル素子で構成され、通常は抵抗型と組み合わせて「遅れ力率」の負荷を作り出す。
一般的に、誘導負荷は対応する抵抗負荷の75%程度の容量で定格化される。例えば、100 kWの抵抗負荷に対し75 kVAの誘導負荷を組み合わせることで、力率0.8の負荷を実現する。これは、モーター、変圧器、照明器具などが混在する一般的な商業負荷のシミュレーションに用いられる。これにより、電圧調整器や開閉装置、導体などの性能評価を含めた、システム全体の包括的なテストが可能となる[4]
容量型
容量型負荷試験装置(キャパシタバンク)は、進み力率の負荷を生成する。誘導負荷とは逆に、システムに無効電力を供給する特性を持つ。 電気通信、コンピュータ、UPS(無停電電源装置)業界における特定の電子負荷や非線形負荷のシミュレーションに用いられる。また、誘導性負荷が支配的な系において、力率を1に近づける(力率改善)ための試験にも利用される。
抵抗・リアクタンス(複合)型
抵抗素子とインダクタ(およびキャパシタ)を一つの筐体に統合した装置である。これらを独立して切り替えることで、抵抗のみ、誘導のみ、あるいは任意の遅れ・進み力率でのテストが可能になる。複合型はキロボルトアンペア(kVA)で定格化され、発電機セットを定格kVAの100%でテストする際に必須となる。特に、以下の用途で重要視される。[2]
- タービンや回転型UPS、大規模発電機の定格力率(一般に0.8)での試験。
- 電力会社の変電所保護システム(距離リレーや方向性リレー等)の統合テスト。
- ソーラーインバーターの単独運転防止機能の検証。
複合型を用いることで、単一の装置で実環境に近い複雑な電力需要を再現できる[6]
電子負荷試験装置
完全にプログラミング可能な空冷または水冷式の装置であり、ソリッドステート素子を用いて負荷をシミュレートする。一定の電力や電流を維持する精密な制御が可能であり、電源ユニットの回路設計や精密機器のテストに多用される。
鉄道
電気式ディーゼル機関車において、発電ブレーキ用の抵抗器をエンジン発電機のテスト用負荷として流用する場合がある。
また、電気鉄道では、引退した電気機関車を改造してモバイル負荷試験装置とし、架線や変電設備の給電能力をテストするために運用することがある。[7]
日本における法的背景
消防法では、病院や大規模な特定防火対象物に設置される消防用設備に対し、非常電源としての防災用自家発電装置の附置を義務付けている。これに伴い、1年ごとの「総合点検」において運転性能を確認する「負荷運転」が定められているが、建物の実設備に負荷をかけることが困難な場合には、負荷試験装置を用いた疑似負荷によって定格出力を確認する手法が取られる。
また電気事業法では、電気工作物の安全確保と適切な維持運用を規制しており、設置時や保安規程に基づく自主点検の際、電圧や周波数の変動特性が許容範囲内にあるかを検証するために負荷試験が実施される。
これらの法令が求める「技術上の基準」の詳細は、日本内燃力発電設備協会(NEGA)や日本電機工業会(JEM)の規格によって規定されている。具体的には連続運転性能や電圧・周波数の変動率などの判定値が細かく定められており、それらを正確に遂行するための不可欠な手段として負荷試験装置が活用されている。
関連項目
- ダミーロード
- 発電コスト
- ディーゼル・エレクトリック方式
- 電動発電機
- 三相交流
- 回生ブレーキ
参考文献
- ^ “A closer look at load banks”. Resources. Wattco, Inc. website (2020年). 2020年6月13日閲覧。
- ^ a b c “Load Bank Basics” (英語). Avtron Power Solutions. 2023年3月6日閲覧。
- ^ “Importance of load banks in the changing energy industry”. Resources. Wattco, Inc. website (2020年). 2020年6月13日閲覧。
- ^ a b “Simplex: What is a Load Bank”. comrent.com. 2017年11月22日閲覧。
- ^ Ken Pickerill, Today's Technician: Automotive Engine Performance Classroom Manual and Shop Manual , Nelson Education, 2009, ISBN 1111782385, page 51
- ^ “Avtron Load Banks White Paper - Application of Resistive/Reactive Load Banks for kVA Testing”. 2026年2月22日閲覧。
- ^ Bayer, Gareth (2021-09-13). “Locos of the RTC (Part 2b)”. Rail Express (Horncastle) (305): 78–79. ISSN 1362-234X.
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