極限集合とは? わかりやすく解説

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極限集合

(Limit set から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/28 10:05 UTC 版)

力学系における極限集合(きょくげんしゅうごう、: Limit set )は、軌道集積点集合である。時間正方向についてのω 極限集合と時間負方向についてのα 極限集合があり、これらを総称して極限集合という。位相力学系の基礎を築いたジョージ・デビット・バーコフによって定義・導入された。

定義

力学系理論の主要な興味の一つは、時間が正の無限大あるいは負の無限大における軌道の極限的な振る舞いにある[1]。極限集合は、そのような振る舞いを扱うために用意する概念の一つである[1][2]

極限集合には、後述するように、時間正方向に対して定義する ω 極限集合と、時間負方向に対して定義する α 極限集合がある。これらω 極限集合とα 極限集合を、まとめて極限集合と呼ぶ[3]

極限集合はジョージ・デビット・バーコフによって定義・導入された[4]。バーコフは、アンリ・ポアンカレの影響を受けて現代的な力学系理論の基礎を築いた人物の一人で、特に位相的概念を導入して位相力学系の基礎を築いた[4]。極限集合は、そのような中で力学系へ導入された位相的概念の一つである[4]

連続系

連続力学系(流れ)における ω 極限点 yω 極限集合 ω(x0) の例[5]

微分方程式系で定義される連続力学系の場合、極限集合は次のように定義される。相空間Rm とし、相空間上の点を x とすれば、

x0平衡点および不動点だとすれば、その極限集合 ω(x0) および α(x0) は x0 自身だけである[3][13]x0周期軌道上の点であれば、ω(x0) および α(x0) は、その周期軌道である[25]。また、周期軌道 γx0γω(x0) あるいは α(x0) に含まれるとき、γリミットサイクルと呼ばれる[26]

3次元相空間の極限集合は極めて複雑になることもあるが、2次元相空間(相平面)の極限集合はそれと比較して簡単なものに限られる[27]f を相平面上(R2 または S2)の滑らかなベクトル場とし、ある x0 から始まる前方軌道が有界であるとする。また、f の平衡点は全て孤立点であるか、有限個であるとする。ポアンカレ・ベンディクソンの定理より、このときの ω(x0) は以下の3種類のいずれかである[28][29]

出典

  1. ^ a b 松葉 2011, p. 113.
  2. ^ a b c d ウィギンス 2013, p. 43.
  3. ^ a b c d Hirsch, Smale & Devaney 2007, p. 220.
  4. ^ a b c 青木・白岩 2013, p. 7.
  5. ^ ウィギンス 2013, p. 44.
  6. ^ ウィギンス 2013, p. 41.
  7. ^ a b c d Hirsch, Smale & Devaney 2007, p. 219.
  8. ^ a b 齋藤 2004, p. 50.
  9. ^ a b c d 白石 2014, p. 171.
  10. ^ ウィギンス 2013, pp. 43–44.
  11. ^ 松葉 2011, p. 115.
  12. ^ a b アリグッド, サウアー & ヨーク 2012, p. 147.
  13. ^ a b c d 白石 2014, p. 177.
  14. ^ a b 青木・白岩 2013, p. 64.
  15. ^ アリグッド, サウアー & ヨーク 2012, p. 155.
  16. ^ a b 郡 宏・森田 善久、2011、『生物リズムと力学系』初版、共立出版〈シリーズ・現象を解明する数学〉 ISBN 978-4-320-11000-7 p. 53
  17. ^ a b 白石 2014, p. 174.
  18. ^ a b 久保・矢野 2018, p. 166.
  19. ^ アリグッド, サウアー & ヨーク 2012, p. 156.
  20. ^ a b 今 隆助・竹内 康博、2018、『常微分方程式とロトカ・ヴォルテラ方程式』初版、共立出版 ISBN 978-4-320-11348-0 p. 160
  21. ^ 青木 統夫、1996、『力学系・カオス―非線形現象の幾何学的構成』初版、共立出版 ISBN 4-320-03340-X p. 51
  22. ^ a b 久保・矢野 2018, p. 167.
  23. ^ 齋藤 2004, p. 60.
  24. ^ 久保・矢野 2018, p. 168.
  25. ^ 白石 2014, pp. 171, 177.
  26. ^ Hirsch, Smale & Devaney 2007, p. 232.
  27. ^ Hirsch, Smale & Devaney 2007, p. 221.
  28. ^ アリグッド, サウアー & ヨーク 2012, pp. 152–153.
  29. ^ 齋藤 2004, pp. 118–125.

参照文献




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