大暗斑とは? わかりやすく解説

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大暗斑

(GDS-89 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/04 00:55 UTC 版)

ボイジャー2号で撮影された大暗斑

大暗斑(だいあんはん 大黒斑 だいこくはん、英語: Great Dark SpotGDS-89)とは、海王星において見られた暗い楕円形の部分である。木星大赤斑と類似しているが、これは力学的なではなく、地球オゾンホールのような大気成分の薄い場所であったと考えられている。

観測史

発見

大暗斑はNASAボイジャー2号1989年5月24日の観測で発見[1]されたと、ボイジャー2号最接近時のテレビ特集で報道されている。その後ボイジャー2号の海王星フライバイの際に詳細に調査され、大きさは木星の斑と同程度で、南半球に位置していた。風速は最大で2400km/hであり、海王星でもっとも速い風が観測された。大暗斑はフライバイの間変形し続け、様々な写真が撮影された。

消滅と再出現

ハッブル宇宙望遠鏡によって1994年に観測したところ、大暗斑は消滅し、類似の斑が、1994年と1996年、北半球に相次いで出現した。この暗斑も消1990年代末に消滅した。この後、しばらく発見データはないが、ハッブル宇宙望遠鏡による観測が行われてない時期に当たるため、この間にも発生していた可能性はある[2]。2015年に新たな暗斑「SDS-2015」が南半球に出現した。しかし、2017年の観測で、この暗斑も消滅しつつあるのが確認され[3]、2018年に消滅した[4]。同年、北半球に暗斑「NDS-2018」が出現した[5]。しかし、2021~2年にかけ、急速に消滅しつつある様子が観測されている[6]

物理的性質

暗斑がなぜ現れるのかなどその起源、周囲のへの影響、最終的にどのように消滅するのか[7]、またこの現象が海王星では常態なのか異様なのかなど、不明な点が多い。

正体について、一説に海王星の表面よりも下側で生じた硫化水素の雲が原因だとも考えられている。約5気圧の深さで生じた硫化水素の雲が光 を吸収することで暗く見えている、という[8]。また、それ自体の反射率は高いのだが、周囲の大気中の粒子に比べるとわずかに暗く見えるのだという。海王星の大きなジェット気流は赤道で吹く西向きのものと、北極と南極の周囲で吹く東向きのものという3つしかないようで、そのため渦は(木星の大赤斑とは異なり)どこにでも移動できる。暗斑は海王星圏外から見て反時計回りに回転している[3]。暗斑の上空には、地球の巻雲に相当するメタンと氷の雲が集中している[7]

暗斑は海王星の深層部で発生し、高度が上昇することで黒いシミの様に浮かび上がるが、その前兆として、周囲の雲活動が活発になることが分かっている[5][4]

前述の通り、大暗斑ほど大きくはない小ぶりな暗斑はボイジャー2号の撮影以来何個も見つかっており、出現と消滅を繰り返している。そのため、木星の大赤斑のように持続的な現象ではなく、数年で誕生と消滅を繰り返す大気現象だと推定されている[5][9]

観測された暗斑のリスト

ボイジャー2号の初観測以来、発見された暗斑は6個。暗斑の名称は、ハッブル宇宙望遠鏡による観測開始以降、発見場所(北半球はN、南半球はS)と、暗斑(Dark Spot)のイニシャル「DS」、発見年を組み合わせたものが使用されている。例えば「NDS-2018」は「2018年に発見された北半球の暗黒点」を意味する[4]

これまでに見付かった暗斑
名称 発見時の直径
(km)
発見位置
(°)
発見年 出現年 消滅確認年 消滅年 発見者 出典
GDS-89(大暗斑) 13000 南緯27°(経度30°~45°、緯度8°~17°)[10] 1989年5月24日 1989年以前 1994年 1994年以前 ボイジャー2号 [1][2]
DS2(小暗斑 南緯54°[11] 1989年 1989年以前 1994年 1994年以前 ボイジャー2号 [2]
NSD-1994(NGDS32) NSD-2018とほぼ同じ[4] 北緯32° 1994年9月[12] 1994年以前 1996/8年、ないし2000年 1996/8年、ないし2000年 ハッブル宇宙望遠鏡 [2][10]
NSD-1996(NGDS15) 北緯15° 1996年3月 1996年3月 1997年6月 1997年 ハッブル宇宙望遠鏡 [10][2]
SDS-2015 5000[3] 南緯46°[4] 2015年9月 2013年~2015年の間 2018年9月9~10日[13] 2018年 ハッブル宇宙望遠鏡
NSD-2018 11000×5000 北緯23°(緯度約12°、経度約27°)[4] 2018年9月10日[4] 2018年 現存(2024年現在) 現存(2024年現在) ハッブル宇宙望遠鏡

外部リンク

脚注

  1. ^ a b 2018 年から 2020 年の海王星ストームの移動速度と規模の推定
  2. ^ a b c d e アンドリュー・I・シュー、マイケル・H・ウォン、エイミー・A・サイモン (2019-03-25). “Lifetimes and Occurrence Rates of Dark Vortices on Neptune from 25 Years of Hubble Space Telescope Images”. IOP science. https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ab0747&lang=en. 
  3. ^ a b c 海王星の嵐の縮小をHSTで追跡”. アストロアーツ. 2025年12月17日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g Simon, A. A.; Wong, M. H.; Hsu, A. I. (2019). “Formation of a New Great Dark Spot on Neptune in 2018” (英語). Geophysical Research Letters 46 (6): 3108–3113. doi:10.1029/2019GL081961. ISSN 1944-8007. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2019GL081961. 
  5. ^ a b c sorae編集部 (2019年2月25日). “海王星に再び”大暗斑”の姿を確認”. sorae. sorae. 2025年12月18日閲覧。
  6. ^ Wong, Michael; Sromovsky, Lawrence; Simon, Amy; Irwin, Patrick; Fry, Patrick; Morales-Juberias, Raúl; Sanchez-Lavega, Agustin; Legarreta, Jon et al. (2024-10). “The dissipation phase of dark spot NDS-2018 on Neptune” (英語). 56th Annual Meeting of the Division for Planetary Sciences 56: 210.03. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2024DPS....5621003W/abstract. 
  7. ^ a b 海王星に新たな暗斑が出現”. アストロアーツ. 2025年12月17日閲覧。
  8. ^ 彩恵りり (2023年9月13日). “史上初!海王星の「暗斑」を地上から観測成功 予想外の「輝斑」も発見”. sorae.info. 2025年12月17日閲覧。
  9. ^ 彩恵りり (2023年9月13日). “史上初!海王星の「暗斑」を地上から観測成功 予想外の「輝斑」も発見”. sorae.info. 2025年12月18日閲覧。
  10. ^ a b c Komerath, Narayanan M. (2023). “Neptune's Great Dark Spot | Research Starters”. EBSCO Research (EBSCO Information Services, Inc.). https://www.ebsco.com/research-starters/earth-and-atmospheric-sciences/neptunes-great-dark-spot. 
  11. ^ Neptune Full Disk - NASA Science” (英語) (1996年1月29日). 2026年2月4日閲覧。
  12. ^ HUBBLE FINDS NEW DARK SPOT ON NEPTUNE” (英語). H. Hammel (Massachusetts Institute of Technology) and NASA. 2026年1月22日閲覧。
  13. ^ Hsu, Andrew I.; Wong, Michael H.; Simon, Amy A. (2019-04). “Lifetimes and Occurrence Rates of Dark Vortices on Neptune from 25 Years of Hubble Space Telescope Images” (英語). The Astronomical Journal 157 (4): 152. doi:10.3847/1538-3881/ab0747. ISSN 0004-6256. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2019AJ....157..152H/abstract. 





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