2020年1月のイランによる在イラク米軍基地攻撃とは? わかりやすく解説

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2020年1月のイランによる在イラク米軍基地攻撃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/03 08:16 UTC 版)

殉教者ソレイマニ作戦

イラン軍のミサイル攻撃で破壊された米軍基地の施設。
戦争ソレイマニ司令官殺害に対する報復攻撃[1]
年月日2020年1月8日[2]
場所イラク西部のアル・アサード航空基地と同国北部のアルビールの基地[3]
結果:イランのミサイルが米軍基地の滑走路に着弾し、戦闘機を破壊。また別の基地でも着弾するが不発[4]
交戦勢力
イラン アメリカ合衆国
指導者・指揮官
アリー・ハーメネイー
ハサン・ロウハーニー
アリー・シャムハニ
ホセイン・サラミ
ドナルド・トランプ
マイク・ポンペオ
マーク・エスパー
ケネス・マッケンジー
戦力
ミサイル35発[5] およそ1500人[6]
損害
死傷者数等は不明[7] 64人負傷[8]
シリア内戦

2020年1月のイランによる在イラク米軍基地攻撃(2020ねん1がつのいらんによるざいいらくべいぐんきちこうげき、英語: January 2020 Iranian attack on American military bases in Iraq)は、2020年1月8日イラン・イスラム共和国イスラム革命防衛隊(IRGC)が、イラク共和国西部のアンバール県にありアメリカ軍が駐留するアル・アサード航空基地アルビールの空軍基地を対象として複数の弾道ミサイルを発射した攻撃である[9][10]。IRGCは30発以上のミサイルを発射したと発表し[11]アメリカ国防総省ペンタゴン)はアル・アサード航空基地とアルビール空軍基地の両方が攻撃されたことを確認した[12][13]。後に、1発の弾道ミサイルがアルビール国際空港に不発弾として着弾し、もう1発はアルビールの西約30キロメートル地点に着弾した。いずれの攻撃でも死傷者は出なかったとされた[14]が、同年1月下旬のアメリカ国防総省の発表によれば、軍事基地への攻撃でアメリカ兵64人が負傷。いずれも外傷性脳損傷脳震盪の診断を受けていたことが明らかになっている[15][16]

イスラム革命防衛隊は、この攻撃はアメリカ合衆国によるガーセム・ソレイマーニー暗殺に対する報復であると述べた[17]

国営の報道機関であるイラン学生通信英語版が報じるところによると、イランは「数十の地対地ミサイル」を航空基地目掛けて発射し、攻撃声明を発表した[18]。イラン学生通信は、この攻撃は「殉教者ソレイマニ作戦(Operation Martyr Soleimani)」と題された軍事作戦の始まりであり[19]、ミサイルの発射に使用された暗号略号は「Oh, Zahra」であったとも報じた。

アメリカ合衆国当局は、これらの弾道ミサイルがイラン国内からイラクの複数箇所を標的として発射されたことを確認した[18]。着弾直後の犠牲者は報告されていない。

イラン国営テレビは、在イラク米軍基地を攻撃する際中だと主張する動画を公開した[20]

背景

ロイター通信は、2019年12月3日にアル・アサード航空基地に5発のミサイルが着弾したものの、負傷者は出なかったと報道していた[21]。一方、2020年1月3日の同通信社の記事によると、「防衛政策筋」と「付近の町の地元当局者」らは、去年12月の報道は虚偽であると話した[22]

反響

オバマ政権の元メンバーであるフィル・カーターは、「イラクのアメリカ軍基地に対する短距離ミサイル攻撃」は自身の政権入り当時は「よくあること (commonplace)」であったと述べた。彼はさらに次のように述べた: 「確かに、サドル市からの短距離ミサイル発射とイランからの中距離ミサイル発射はかなり違うと認められますが、ここは戦術的な忍耐力で冷静さを保ちましょう」[23]

連邦航空局は、アメリカ合衆国の民間航空会社がイラク、イラン、ペルシャ湾オマーン湾の上空での運航を禁止するノータムを発効した[9][24]

オーストラリアスコット・モリソン首相は、 オーストラリア国防軍司令官のアンガス・キャンベルに、イラクのオーストラリア軍と外交官を「守るために必要なあらゆる行動をとる」ように命じた[9]

関連記事

脚注

  1. ^ №168 イラン:革命防衛隊が「殉教者ソレイマーニー」作戦を開始”. 中東調査会 (2020年1月8日). 2023年1月26日閲覧。
  2. ^ イラン、米の反撃に警告 報復攻撃を「殉教者ソレイマニ作戦」と命名”. 産経新聞 (2020年1月8日). 2023年1月26日閲覧。
  3. ^ イランが米軍基地へミサイル発射「報復だ」”. 日本放送協会 (2020年1月8日). 2023年1月26日閲覧。
  4. ^ イラン、米軍駐留基地にミサイル攻撃 報復作戦を開始”. 朝日新聞 (2020年1月8日). 2023年1月26日閲覧。
  5. ^ №166 イラク:イランの革命防衛隊がアメリカ軍基地をミサイル攻撃”. 中東調査会 (2020年1月8日). 2023年1月26日閲覧。
  6. ^ イラン「米同盟に警告」 作戦名「殉教者ソレイマニ」”. 日本経済新聞 (2020年1月8日). 2023年1月26日閲覧。
  7. ^ イラン、米基地報復攻撃 イラクに弾道弾 死傷者不明”. 東京新聞 (2020年1月9日). 2023年1月26日閲覧。
  8. ^ 米兵の負傷者64人に、イランによる在イラク基地攻撃”. フランス通信社 (2020年2月1日). 2023年1月26日閲覧。
  9. ^ a b c Washington (earlier), Maanvi Singh Joan E. Greve in; Doherty, Ben; Butler, Ben; Safi, Michael; Safi, Michael; Borger, Julian (2020年1月8日). “Iran launches missiles at US forces in Iraq at al-Asad and Erbil – live updates” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/us-news/live/2020/jan/07/trump-news-today-live-impeachment-articles-iran-latest-updates-democrats 2020年1月8日閲覧。 
  10. ^ "イラク米軍基地にミサイル攻撃 イラン革命防衛隊が攻撃発表". 産経ニュース. 産業経済新聞社. 8 January 2020. 2021年4月25日閲覧
  11. ^ “Iran Fires Missiles at Two U.S. Bases in Iraq: Live Updates” (英語). The New York Times. (2020年1月8日). ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2020/01/07/world/middleeast/trump-iran.html 2020年1月8日閲覧。 
  12. ^ Borger, Julian; Wintour, Patrick (2020年1月8日). “Iran crisis: missiles launched against US airbases in Iraq”. The Guardian (London). ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/world/2020/jan/07/trump-iran-suleimani-threats-retaliation 2020年1月7日閲覧。 
  13. ^ Alkhshali. “Pentagon says Iran attacked two Iraqi bases housing US forces”. CNN. 2020年1月8日閲覧。
  14. ^ Alkhshali (2020年1月8日). “Two ballistic missiles hit Erbil, sources say”. cnn.com. CNN. 2020年1月8日閲覧。
  15. ^ イランの基地攻撃、米兵34人が脳損傷や脳振とう”. AFP (2010年1月25日). 2020年2月1日閲覧。
  16. ^ 米兵の負傷者64人に、イランによる在イラク基地攻撃”. AFP (2020年2月1日). 2020年2月1日閲覧。
  17. ^ Eqbali, Aresu; Malsin, Jared; Leary, Alex (7 January 2020), “Iran Fires Missiles at U.S. Forces in Iraq”, Wall Street Journal, https://www.wsj.com/articles/stampede-at-funeral-procession-for-iranian-commander-kills-35-11578390888 2020年1月7日閲覧。 
  18. ^ a b Iran launches missiles into US air bases in Iraq: US official” (英語). ABC News. 2020年1月7日閲覧。
  19. ^ Iran warns US not retaliate over missile attack in Iraq”. AP NEWS (2020年1月7日). 2020年1月7日閲覧。
  20. ^ Agency, Source: Fars News (2020年1月8日). “Iran releases footage of missile attack on US airbases in Iraq – video” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/global/video/2020/jan/08/iran-releases-footage-of-missile-attack-on-us-airbases-in-iraq-video 2020年1月8日閲覧。 
  21. ^ Rasheed, Ahmed; Hassan, Samar (2019年12月3日). “Rockets hit base hosting U.S. forces in western Iraq”. Reuters (Cairo). https://www.reuters.com/article/us-iraq-missiles-security-idUSKBN1Y7284 2020年1月7日閲覧。 
  22. ^ “Reports of attacks on U.S. military base in Iraq are false: two sources”. Reuters. (2020年1月3日). https://www.reuters.com/article/us-iraq-security-blast-brent-idUSKBN1Z220B 2020年1月7日閲覧。 
  23. ^ Cunningham, Erin; Taylor, Adam; Brice-Saddler, Michael (2020年1月7日). “Live updates: More than 12 Iranian missiles launched at two bases in Iraq, Pentagon confirms”. Washington Post. https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/iran-live-updates/2020/01/07/896c70a2-30d5-11ea-9313-6cba89b1b9fb_story.html 2020年1月7日閲覧。 
  24. ^ FAA (2020年1月7日). “#FAA Statement: #NOTAMs issued outlining flight restrictions that prohibit U.S. civil aviation operators from operating in the airspace over Iraq, Iran, and the waters of the Persian Gulf and the Gulf of Oman.pic.twitter.com/kJEbpPddp3” (英語). @FAANews. 2020年1月8日閲覧。



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