魔法円_(美術)とは? わかりやすく解説

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魔法円 (美術)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 02:01 UTC 版)

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『魔法円』
英語: The Magic Circle
作者ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
製作年1886年
種類カンバス油彩
寸法183 cm × 127 cm (72 in × 50 in)
所蔵テート・ブリテンロンドン

魔法円』(まほうえん、: Magic Circle)は、イギリスの画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス1886年に制作した絵画である。油彩ロンドンテート・ブリテンに所蔵されている。

この作品は、縦と横がともに1mを上回っていてしかもともに2mを下回っている。儀式的空間を作るために地面に燃えるような魔法円を描く魔女あるいは女性の魔法使いを描いている。

来歴

『魔法円』は1886年に王立美術アカデミーで展示され[1]、1884年の『神託伺い』(Consulting the Oracle)そして1885年の『聖エウラリア』(St. Eulalia)に続いて発表した、ウォーターハウスの超自然的なテーマを扱った3作目の絵画であった[2]。作品は展覧会で好意的に受入れられ[2]フランシス・レガット・チャントリーの遺贈した基金から同年、650ポンドでテート・ギャラリーによって購入された[3]。絵は批評家からも公衆からも両者から大きな成功を収めた。

主題と動機

ウィーン学団と関連づける具体的な論評は乏しく、後続の絵画にもそのヒントは存在しないうえ、内容は不明と斬って捨てる美術評論も存在する。

奇蹟魔法、および予言の力は、ウォーターハウスの美術において共通するテーマである。より明確に言えば、魔法使いとしての女性という観念は、オールダム・ギャラリー英語版の『オデュッセウスに杯を差し出すキルケ』(Circe Offering the Cup to Ulysees, 1891年)やマンチェスター市立美術館の『ヒュラスとニンフたち』(Hylas and the Nymphs, 1896年)のようなイメージに繰り返し現れているものである。彼の全作品もまた多くの中東的な題材を含んでいるが、彼においては実体験よりも、ジョン・フレデリック・ルイス(1805年-1876年)やローレンス・アルマ=タデマのような同時代の画家ないし芸術家の図像と動機ないし作品に依存している。これはウォーターハウスの初期作の1つであり、彼がエキゾチックなものに魅了されていることを反映している。

この絵のなかの女性は、魔力を、もしかすると予言の力を、授けられた、魔女あるいは女性聖職者であるように見える。彼女の服と全体的な外見は高度に折衷的であり、そしてその派生源はいくつかある。彼女は中東起源の女性の浅黒い肌をしている。彼女の髪形は初期アングロ=サクソン人のそれに似ている。彼女の服はペルシアあるいはギリシアの戦士の装飾が施されている。左手には自分とおよびヘカテーとを結びつける三日月の形のを持っている。また右手に持った杖で、彼女は自分の周囲に保護的な魔法円を描いている。円の外側では風景に草木は無く、不毛である。一団のミヤマガラスあるいはワタリガラスと一匹のカエル(すべてが悪の象徴でありそして魔法と連想づけられる)が締め出されている。しかしその境界内には花々と女性自身、美しい物がある。
絵画の意味ははっきりしないが、しかしその謎とエキゾチシズムは同時代の見る者の琴線に触れた。1886年に絵が王立美術アカデミーで展示されたとき、『マガジン・オヴ・アート』(Magazine of Art)の批評家はこのように書いた。「ウォーターハウス氏は、『魔法円』において、それでもやはり最高の状態にある。着想は独創的であり、そして結果は絵画的である」(ホブソン(Hobson)の37ページに引用される)[4]

図像的な背景

主たる登場人物はウォーターハウスに特徴的なスタイルでカンバスの中央に位置づけられた、孤独な女性像である。周囲の、環境はそれがまるで現実ではないかのように煙霧がかかっている。言い換えれば、後のその画家の作品との比較では、それぞれの絵具層の透明感の整合性は低く、結像せず、表面的でガラス質のようでありながらも快活という個性は埋没していて、その展望は霞んでいる。魔女が唯一の重要なイメージであることをことさらに保証するように、背景の人物らは綿密な調査ではじめて見分けることができる[5]

ウォーターハウスは作品内で採用された諸角度に細心の注意を払い、三角形の構図の使用によって人物が自分の周囲に描いている円のバランスを取った。彼女のまっすぐな片腕はによって延長され、彼女の直立している身体に対して45度で差し出されている。魔女の魔法の力は、彼女の決然たる表情によって、ワタリガラスカエルを円の外に締め出すことによって、そしての柱に対する支配力によって強調されている。それは外側に大きく波打ったり風によって影響されたりせずに、直線状態のままである。また生きている蛇ウロボロスが彼女の首に絡みついている。

ウォーターハウスの1916年の絵画『ミランダ』。個人蔵。

『魔法円』は図式においてはウォーターハウスが後に制作する絵画『ミランダ』(Miranda, 1916年)と、連続的で、酷似しているが、ミランダもまた魔法と結びつく女性である。魔女は『ミランダ』に似た服を着ており、彼女の顔もまた横顔でしか見ることができない。フレデリック・サンズ英語版による『メーデイア』(Medea, 1868年)や『モーガン・ル・フェイ』(Morgan le Fay, 1864年)のような女性の魔法使いの描写とは異なり、ウォーターハウスは魔女の顔を、悪意に対立するものとして、ひたむきで、好奇心をかきたてるようにした。

注釈

  1. ^ The Magic Circle at the Tate Collection.
  2. ^ a b Study for The Magic Circle at Christie's.
  3. ^ The Magic Circle at The Art and Life of John William Waterhouse.
  4. ^ from http://www.tate.org.uk/art/artworks/waterhouse-the-magic-circle-n01572/text-summary
  5. ^ Information at Tate's Magic Circle webpage.

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