開いた系の仕事(工業仕事)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/17 01:58 UTC 版)
「仕事 (熱力学)」の記事における「開いた系の仕事(工業仕事)」の解説
実際の多くの機器では、一方から気体が入って他方から出ていく。このような開いた系では、系に気体を出し入れする仕事が付加されるため、前記の絶対仕事がそのまま有効な仕事として取り出されるわけではない。 図 3 のようにピストンとシリンダーに弁を追加し、弁を介して気体を吸入・排出する開いた系を考える。 図 3 開いた系の仕事 図 4 p-V 線図上の工業仕事 この系は単位時間に下記の動作を1回行うものとする。 ピストンが上死点(隙間なし)の位置で吸気弁を開いて、圧力 p1 の吸気を体積 V1 だけ吸入する。 弁をすべて閉じて、熱 Q を加えつつピストンを動かし、体積を V1 から V2 まで膨張させる。このとき圧力は p1 から p2 に変化する。 ピストンを止めて排気弁を開き、圧力 p2 のまま、ピストンで上死点まで押してすべての気体を排気する。 上の 1 ~ 3 の各動作の間に力学的平衡が保たれているとすると、動作 1 の間は圧力 p1 でピストンを V1 だけ押すので、気体がピストンにする仕事 W1 は図 4 の p-V 線図の面積 OC1AO となる。動作 2 の間の仕事 W2 は面積 A12BAとなり、動作 3 の間の仕事 W3 は面積 B2DOB となる。ただし動作 3 の間、ピストンに作用する力の向きとピストンの移動方向が逆であるから、 W3 は負の値である。したがってこれらの仕事は次式で表される: W 1 = p 1 V 1 , W 2 = ∫ 1 2 p d V , W 3 = − p 2 V 2 . {\displaystyle {\begin{aligned}W_{1}&=p_{1}V_{1},\\W_{2}&=\int _{1}^{2}pdV,\\W_{3}&=-p_{2}V_{2}.\end{aligned}}} 単位時間に系が外部へ行う仕事 W* はこれらの代数和 W ∗ = W 1 + W 2 + W 3 = ∫ 1 2 p d V + p 1 V 1 − p 2 V 2 = ∫ 1 2 p d V − ∫ 1 2 ( p d V + V d p ) = − ∫ 1 2 V d p {\displaystyle {\begin{aligned}W^{*}&=W_{1}+W_{2}+W_{3}=\int _{1}^{2}pdV+p_{1}V_{1}-p_{2}V_{2}=\int _{1}^{2}pdV-\int _{1}^{2}(pdV+Vdp)\\&=-\int _{1}^{2}Vdp\end{aligned}}} であるから、式(2)が得られる。 開いた系が外部へ行う仕事が工業仕事である。可逆変化のときの工業仕事 W* は、図 4 の曲線 12 の左方の面積 C12DC で表される。 非可逆変化を含めると、次式が成り立つ: W ∗ ≤ − ∫ p 1 p 2 V d p . {\displaystyle W^{*}\leq -\int _{p_{1}}^{p_{2}}Vdp.} (等号は可逆変化の場合)
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