長翅型と短翅型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 15:42 UTC 版)
昆虫において、より広い分類群に見られるのが、生育条件に応じて翅の長いものと短いものが出現する例である。これを翅多型という。カメムシ目に例が多く、アメンボ類・ナベブタムシ・ウンカなどに多くの例がある。短翅型ではなく無翅型を生じるものもある。アブラムシ類では、翅の有無に加えて生殖の様態(単為生殖か有性生殖か)がリンクする場合もある。コオロギ類のカマドコオロギやマダラスズ、コウチュウ類のマメゾウムシなどにも同様の翅多型が知られている。 これらの昆虫では、長翅型の個体がバッタのように集団行動をとることはないが、いずれも短翅型は同一の場所に止まって繁殖するのに対し、長翅型は移動性が高く、新しい繁殖場所を探しに出掛けるものと考えられる。このような現象も広い意味では相変異に含まれる。 多くの例では集団の個体群密度が高くなると長翅型が出現し、遠距離を飛んで新たな繁殖場所を開発するものと考えられている。長翅型が新たな場所に定着すると、そこで繁殖が始まり、生まれてくる個体は短翅型になる。 その他、コオロギ類の場合、短日条件下ではどんな条件でも長翅型が発生せず、長翅型は長日条件でしか発生しないことが知られている。つまり、移動相は春から夏に出現して、この時期に生息域を広めるような活動をする、ということである。これは、相変異が季節的変異と重なる一面を持つことを意味しており、興味深い事例である。実際に、ガには季節的な変異の中で、翅の発達の程度が変化して、ある時期には翅が縮んで飛べない個体を生じるヒメモンシロドクガのような例もある。 なお、飛蝗の例とは異なり、これらの昆虫で長翅型が生まれる場合でも、同時に短翅型も生まれ、両者が混在するのが普通である。
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