運動系伝導路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/16 03:35 UTC 版)
上位運動ニューロンによる入力は、大脳皮質および脳幹の神経核から来る。軟質骨上位運動ニューロンは骨髄脊髄路と呼ばれる。ブロードマンの脳地図の4野(一次運動野)、6野(運動前野)、1-3野(体性感覚野)および5野(頭頂葉体性感覚連合野)に始まり、内包の膝および後脚を通って大脳脚、橋から延髄の錐体に至る。ここで運動ニューロンの軸索のうち約85%が対側に交叉し、脊髄の外側皮質脊髄路を下行する。残りの約15%のニューロンは同側の前皮質脊髄路を下行する。その名と異なって、中心前回(一次運動野)第V層のベッツ細胞(巨大錐体細胞)に始まる上位運動ニューロンは数の上では少数であり、ヒト以外の霊長類では60%以上の上位運動ニューロンが運動前野から起始していることが明らかになっている。 脳幹からは4つの運動伝導路が上位運動ニューロンを出している。赤核脊髄路(中脳の赤核より)、前庭脊髄路(橋延髄境界にある外側前庭核より)、視蓋脊髄路(中脳の上丘より)、網様体脊髄路(橋および延髄の網様体からそれぞれ)の4つである。赤核脊髄路は側索(皮質脊髄路のすぐ前方)を、その他の運動路は前索を下行する。 下位運動ニューロンの機能は、外側皮質脊髄路および前皮質脊髄路の二つで異なっている。外側皮質脊髄路の上位運動ニューロンの軸索は、脊髄前角のうち背外側 (DL) 下位運動ニューロンとシナプスを形成する。DLニューロンは四肢遠位の巧緻運動を支配する。四肢に関係するので、DLニューロンは脊髄のうち頸膨大および腰膨大の灰白質にのみ存在する。外側皮質脊髄路は延髄錐体で交叉した後は、脊髄では交叉しない。 一方前皮質脊髄路の上位運動ニューロンは、大脳皮質と同側の脊髄前索を下行し、その軸索は同側の脊髄前角のうち腹内側 (VM) 下位運動ニューロンとシナプスを形成するか、あるいは白前交連で対側に交叉した後、その高位の髄節内にあるVM下位運動ニューロンとシナプスを形成する。脳幹に始まる赤核脊髄路、視蓋脊髄路および前庭脊髄路の上位運動ニューロンも同側の脊髄前索を下行するが、これらのニューロンは交叉を行わず、同側の脊髄前角にあるVMニューロンとシナプスを形成する。VM下位運動ニューロンは、体幹の大きな姿勢筋(脊柱起立筋など)を支配する。VM下位運動ニューロンはDLニューロンと異なり、脊髄のすべての高位の前角内に見られる。
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