試験函数にデルタ函数を用いること
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 06:34 UTC 版)
「汎函数微分」の記事における「試験函数にデルタ函数を用いること」の解説
先の定義は任意の試験函数 f に対して満足される関係式に基づいて与えられたものだったから、試験函数を特別の函数に限ったとしてもその関係式が満たされるはずだが、しかし選んだ函数がディラックデルタのようなものであるとすれば、それは試験函数として有効なものではない。 定義は、汎函数微分が変動函数 φ(x) の小さな摂動に対して汎函数 F[φ(x)] の摂動がどの程度であるかを記述するものであることを言っているのであって、φ(x) における摂動が特定の形であることを規定するものではないけれども、x が定義される全区間の上で引き延ばすようなものでなければいけない。摂動の形をデルタ函数で与えられるものに限るということは、変動函数 φ(x) が決められた点 y においてのみ変化することを意味するのであり、この点を除いては φ(x) は変動しない。 物理学で、ある量(例えば、位置 r1 における電位 V)の、別の量(例えば、位置 r2 における電荷密度 ρ)を変化させた時の影響がどのようなものになるかを知りたいという場面はよくある。この与えられた位置における電位は電荷密度の函数、即ち特定の密度函数と空間内の点とが与えられればその点における電荷を意味する数値を密度函数を使って計算することができる。この数値が空間の全ての点を亙ってどのように変化するのかを知りたいのだから、電位を位置 r の函数として V ( r ) = F [ ρ ] = 1 4 π ϵ 0 ∫ ρ ( r ′ ) | r − r ′ | d r ′ {\displaystyle V({\boldsymbol {r}})=F[\rho ]={\frac {1}{4\pi \epsilon _{0}}}\int {\frac {\rho ({\boldsymbol {r}}')}{|{\boldsymbol {r}}-{\boldsymbol {r}}'|}}dr'} と扱う。つまり、各 r に対して、電位 V(r) というのは、ρ(r′) を引数とする汎函数なのである。汎函数微分の定義に照らして、 ⟨ δ F [ ρ ] δ ρ ( r ′ ) , f ( r ′ ) ⟩ = d d ε 1 4 π ϵ 0 ∫ ρ ( r ′ ) + ε f ( r ′ ) | r − r ′ | d r ′ | ε = 0 = 1 4 π ϵ 0 ∫ f ( r ′ ) | r − r ′ | d r ′ = ⟨ 1 4 π ϵ 0 | r − r ′ | , f ( r ′ ) ⟩ . {\displaystyle {\begin{aligned}\left\langle {\frac {\delta F[\rho ]}{\delta \rho ({\boldsymbol {r}}')}},f({\boldsymbol {r}}')\right\rangle &={\frac {d}{d\varepsilon }}\left.{\frac {1}{4\pi \epsilon _{0}}}\int {\frac {\rho ({\boldsymbol {r}}')+\varepsilon f({\boldsymbol {r}}')}{|{\boldsymbol {r}}-{\boldsymbol {r}}'|}}dr'\right|_{\varepsilon =0}\\&={\frac {1}{4\pi \epsilon _{0}}}\int {\frac {f({\boldsymbol {r}}')}{|{\boldsymbol {r}}-{\boldsymbol {r}}'|}}\mathrm {d} r'\\&=\left\langle {\frac {1}{4\pi \epsilon _{0}|{\boldsymbol {r}}-{\boldsymbol {r}}'|}},f({\boldsymbol {r}}')\right\rangle .\end{aligned}}} ゆえに δ V ( r ) δ ρ ( r ′ ) = 1 4 π ϵ 0 | r − r ′ | {\displaystyle {\frac {\delta V(r)}{\delta \rho (r')}}={\frac {1}{4\pi \epsilon _{0}|r-r'|}}} が成り立つ。いま、r = r1 および r′ = r2 における汎函数微分を評価することができるから、r1 における電位が、r2 における電荷密度の小さな変化の影響を受けてどのくらい変わるかを知ることができるが、一般には評価できない形の式のほうが恐らくは有用である。
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