複数スレイター行列式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/09 09:15 UTC 版)
「スレイター行列式」の記事における「複数スレイター行列式」の解説
スレイター行列式は、パウリの排他原理を全て満たしているが、その逆は成り立たない。すなわちパウリの排他原理を満たす関数は、スレイター行列式のみではないのである。 とはいっても、それらの関数は、スレイター行列式と大きくは違わない。単に複数のスレイター行列式の線形結合を取ったものなだけである。分子軌道を N 個から増やし、次のように表される。 Φ ( x 1 , ⋯ , x N ) = ∑ i c i ‖ χ i 1 ⋯ χ i N ‖ {\displaystyle \Phi (x_{1},\dotsb ,x_{N})=\sum _{\boldsymbol {i}}c_{\boldsymbol {i}}\Vert \chi _{i_{1}}\dotsb \chi _{i_{N}}\Vert } これを複数スレイター行列式と呼び、パウリの排他原理はすべて、この形式を用いて展開できる。ただし任意の波動関数を表すためには、これらは完全系を成す必要がある。 量子化学におけるハートリー-フォック法は、分子軌道を1つのスレイター行列式で表す。しかし電子相関を正確に取り込む場合は、複数スレイター行列式を用いなければならず、そのような方法を配置間相互作用 (configuration interaction、 CI) 法という。しかし、厳密な波動関数を求めるには、無限個の分子軌道と無限個のスレイター行列式が必要になる。 また線形結合だけでなく非線形な結合も含めると、CI法と同じ数のスレイター行列式で打ち切っても、よりも多くの電子相関を取り込むことができる。このような方法を結合クラスター(coupled cluster、 CC)法と呼ぶ。 1つのスレイター行列式よりも当然、複数スレイター行列式の方が表現力が大きく、計算精度は高くなる。しかし、その代償として、考慮しなければならないスレイター行列式の数は、精度を上げるにつれ極端に大きくなるため、計算コストの面から、あまり多くするわけにはいかないのが現状である。
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