色素体について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 14:06 UTC 版)
本種の色素体は青緑色であり構造的にもシアノバクテリア(藍藻類)に似ており、これはシアノバクテリアが細胞内共生したものがその起源と考えられている。類似の色素体を持つ例に灰色植物門があり、その色素体のことをチアネル、あるいはシアネレ (cyanelle) と呼ぶ。本種の色素体もこう呼ばれることもある。ただし本種のものの方が本来の姿に近く、たとえば両者の色素体は共に表面を包む2層の膜の間にペプチドグリカンの層と見られる構造が存在し、本種のそれは灰色植物のそれよりしっかりしていて、自由生活のシアノバクテリアのそれに近い。この種が属する有殻糸状根足虫類では、Zoochlorellaなどの共生藻類が見られるものもあるが、この種のような色素体を持つ例は他に知られてこなかった。 この色素体は16S rDNA を用いた分子系統の研究から、シアノバクテリアの中でも Synechococcus 属、および Prochococcus 属の系統に含まれることが判明した。これらはいわゆるピコプランクトンとして出現するものである。ちなみにFelix Eugen Fritsch (1876-1954) は本種発見の報を受け、その色素体を指して Synechococcus? と書いている由。 この共生が始まったのはこの色素体のゲノムの減少率からの推定で6000万年前とされており、本種の色素体は全て、この1回の共生に由来すると見られている。上述のように現在は色素体を持つ種がもう2種発見されているが、それらの色素体も本種のそれと単系統をなすとされている。
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