聖人と制作依頼主
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 21:05 UTC 版)
洗礼者ヨハネも福音記者ヨハネも、それぞれの名前が刻まれた石の台座の上に立っている。祭司ザカリア(ルネットに描かれている預言者ザカリヤとは無関係)の息子の洗礼者ヨハネは、左腕に子羊を抱えてヨドクスのほうへと目を向けており、掲げられた右手で子羊を指している。このしぐさは洗礼者ヨハネが唱えた「見よ、神の子羊」という文句を意味している。福音記者ヨハネは聖杯を手にしている。これは杯から毒を飲まされた福音記者ヨハネが何事もなく生還したという伝承に基づくもので、中世美術では福音記者ヨハネにはエンブレムとして杯がよく描かれていた。 制作依頼主のヨドクス夫妻は等身大で描かれており、その身体の大きさは聖人を超えている。このことはそれぞれの手の大きさを比較するとはっきりとわかる。ヨドクス夫妻は鮮やかな暖色の衣服を身につけており、生命感の希薄な単色の聖人たちとは好対照となっている。ファン・エイクは細心の写実表現で夫妻の姿を描いている。老いに苦しむ二人の姿が、依頼主に媚びることのない断固とした筆致で描写されており、ヨドクスの潤んだ瞳、皺のよった両手、禿頭、白くなった髭といった老化現象が詳細に表現されている。両手の膨れた静脈や爪も非常に詳細に描かれている。ヨドクス夫妻の肖像が描かれているパネルは『ヘントの祭壇画』で最後に完成したパネルだと考えられており、その完成時期は1431年か1432年初頭とされている。
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