翻案権との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 15:07 UTC 版)
日本の著作権法は、著作権の改変に関する権利として、著作者の人格的利益を保護するための同一性保持権のほか、著作権の支分権としての翻案権の制度を設けている(著作権法第27条)。 同一性保持権は、著作者の人格的利益を保護するための制度であるのに対し、翻案権は著作権者の財産的利益を保護するための制度であるという差異があり、両者は制度趣旨が異なるものである(ただし、両者の権利を一元的に理解する見解も存在する)。 翻案権の譲渡がされていない場合は、同一性保持権と翻案権は同一人に帰属するため、翻案権についてライセンス付与があった場合は、ライセンスの範囲内で同一性保持権は制約を受けると解される。 これに対し、翻案権が譲渡されている場合は、同一性保持権と翻案権は別人に帰属することになる。そのため、翻案権者と著作物の利用者との間で著作物の翻案に関するライセンス契約が締結され、そのライセンスに従い著作物の改変が行われた場合、著作者は同一性保持権を行使して改変を差し止めることができるのかが問題となる。 この点の問題の解決については色々な見解が唱えられており、翻案権譲渡の際に翻案に必然に伴う改変の限度で同一性保持権を行使しない黙示の同意を与えていると構成する見解、翻案に必要な限度での改変は著作権法20条2項4号にいう「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当するとする見解、翻案権と同一性保持権が別人に帰属する場合は著作者の名誉感情にかかわらない改変は同一性保持権を侵害しないと解する見解などがある。
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