置換神学
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置換神学(ちかんしんがく、英: Supersessionism, replacement theology, fulfillment theology)は、新約聖書解釈の一つで、選民としてのユダヤ人の使命が終わり、「新しいイスラエル」がキリスト教会になったとする説である。交替主義神学[1]とも訳される。一般的にキリスト教会の指導者は置換神学を否定している[2]。
置換神学の根拠とされる聖句は、『ガラテヤの信徒への手紙』3章6-9節、3章29節、『ローマの信徒への手紙』2章28節・29節、4章13節、『マタイによる福音書』21章43節である。聖書の語句で「イスラエル」と出てくる箇所を「ユダヤ人」と見なさずに霊的にのみ解釈する。キリスト教、キリスト教会を「真のイスラエル」とする[3]。
しかし、神によるイスラエルの民への召命が取り消されることはないということが聖書から明らかなので、この考えは否定されるようになった[4]。21世紀になると古代教父を重視するカトリック教会も置換神学を否定した[5][6]。このことはパウロが書いた『ローマの信徒への手紙』11章(25-29節)で明確に述べられている[2]。パウロは「私もイスラエル人で、アブラハムの子孫」であり、断じて「神に退けられた」民ではないと言明し(『ローマの信徒への手紙』11章1節)[7]、「神の選びについて言えば、先祖たちのお陰で愛されています。神の賜物と招きは取り消されることがないからです」(『ローマの信徒への手紙』11章28-29節)と書いている[8]。
一般に、キリスト教会の指導者は置換神学を否定し[2]、多くの神学校や大学でも置換神学は誤りであると教えているが、アメリカ合衆国では以前として多くの人が置換神学を信じている[1]。
脚注
- ^ a b チャールズワース (2012)、180頁。Charlesworth (2008), 該当頁.
- ^ a b c チャールズワース (2012)、78頁。Charlesworth (2008), 該当頁.
- ^ BFP編集部「置換神学とは?」『ティーチングレター』B.F.P.Japan(ブリッジス・フォー・ピース)、2002年9月。
- ^ ダニエル・ジャスター『聖書が教えるイスラエルの役割』石井秀和 訳、ゴスペル・ライト出版、2022年、19頁。ISBN 4990516664。
- ^ 「ユダヤ人は救われるのか?- カトリックの立場 カトリック教会の置換神学放棄」『ロゴス・ミニストリーのブログ』。
- ^ "Vatican: Jews don't need Christ to be saved", Israel National News, 2015年12月10日。
- ^ チャールズワース (2012)、180頁を参照。
- ^ チャールズワース (2012)、78頁を参照。
参考文献
- Charlesworth, James H. (2008). The Historical Jesus. Essential Guides. Nashville, TN: Abingdon Press. ISBN 978-0687021673
- J・H・チャールズワース『これだけは知っておきたい 史的イエス』中野実 訳、教文館、2012年。 ISBN 9784764266988。
- 中川健一『エルサレムの平和のために祈れ - 続ユダヤ入門』ハーベスト・タイム・ミニストリーズ出版部、1993年。doi:10.11501/13282387。
関連項目
- 反ユダヤ主義
- 反ユダヤ主義の歴史
- キリスト教と反ユダヤ主義
- 初期キリスト教の反ユダヤ主義
- 二契約神学(ユダヤ教とキリスト教を別個の存在として尊重する考え方)
- タフリーフ
置換神学
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詳細は「置換神学」を参照 イスラエルの回復を霊的にのみとらえる説である。イエス・キリストを殺したユダヤ人が神に棄てられ、キリスト教会が新しいイスラエルとしてユダヤ人にとってかわったとする神学もある。 12世紀にクレルヴォーのベルナルドゥスは、ヨハネによる福音書8:44を根拠として、ユダヤ人の父は悪魔であり、ユダヤ人は悪魔の子であるとした。 16世紀のローマ教皇パウルス4世の大勅書Cum nimis absurdumは、イエス・キリストを殺したユダヤ人は、永遠に神に非難される奴隷だとしている。ローマ教皇インノケンティウス3世は、イエス・キリストを殺し奴隷となったユダヤ人が永久に地上をさまようとした。
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