素整域・素体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/02/07 06:08 UTC 版)
R を任意の単位的環とする。単位的環 R の(単位的環としての)部分環は必ず単位元 1R を含む。したがって、1R の生成する環は全ての部分環に含まれ、R の最小の部分環となる。ここで、写像 φ R : Z → R ; n ↦ n 1 R {\displaystyle \varphi _{R}\colon \mathbb {Z} \to R;\,n\mapsto n\,1_{R}} φ R ( 0 ) = 0 R , φ R ( m ) = − ( n 1 R ) {\displaystyle \varphi _{R}(0)=0_{R},\quad \varphi _{R}(m)=-(n\,1_{R})} と定めることによって定義する。このとき、φR は環の準同型を定め、像 φR(Z) = { n 1R | n ∈ Z } は単位元 1R の生成する単位的環に一致する。一方、準同型 φR の核 Ker(φR) = { n ∈ Z | n 1R = 0 } は Z のイデアルを成すが、Z はユークリッド整域ゆえ、Ker(φR) は単項イデアル mZ(ただし m ≧ 0)で、m は R の標数 char(R) に一致する。以上より、環の準同型定理により R において 1R の生成する単位的環は m = char(R) を法とする剰余環 Z / m Z に同型である。 さらに単位的環 R が整域であるとき、φR(Z) は整域を成す。これを整域 R の素整域と呼ぶ。像が整域であることから、この準同型 φR の核は Z の素イデアルで、したがって {0} または素数 p の生成する単項イデアル (p) = p Z の形に書ける。ゆえに、いずれの整域についてもその標数は 0 か素数に限られる。 素体(そたい、prime field)は自分自身以外に部分体を持たない体のことである。体は整域であるから、上で見たことから F が正標数 p の体ならば F は必ず Z / p Z に同型なる素整域を含む。一方、Z / p Z は体であるので、正標数の体の素整域はそれ自身が素体となる。F の標数が 0 の場合には、有理整数環 Z が F に含まれるが、F が体であることから有理数体 Q(に同型な体)が F に含まれる。よって Q は標数 0 の素体である。ゆえに、素体は Q および Z / p Z (p は素数)によって(同型の違いを除いて)すべて尽くされているということができる。また、ここから標数 0 の体は必ず Q を含むので無限体であり、有限体は必ず正標数を持つことも確認できる。 体 F に対し、max(char(F), 1) を characteristic exponent という。
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