破鏡の嘆
- 夫婦の離縁する事である。其の故事来歴は、昔し或る夫婦があつたが、或る用事の為めに夫は遠く旅立つた。暫く別居しなければならなかつたので、妻は夫の門出を送る際に、常に用ひ慣れた鏡を破つて其の半を贈り「君遠く外遊し給ふに及んで離別の悲しみに堪えず、夫は家に居まさず、今日よりは誰の為めに化粧をなさんや、鏡を破つて君を送る、之れ妾が衷心なり」と云つた。併し変り易きは女心と秋の空で、後に間もなく妻は夫の不在中に他人と私通した。〓に於て妻の持つてゐた鏡の破片は鵲と化し、遠く飛んで夫の面前に至り、悲しく鳴いたと云ふ事である。是は余事ではあるが、鏡の裏に鵲の形を附するは之から起つたと云ふ。そして其の夫が旅から帰つた際妻が鏡の半片を失つたのを知つて、其の不信をせめ、遂に離縁を決行した。離縁は自業自得の妻の身の嘆きだと伝へられてゐる。学生間、特に女学生間では、正式の夫婦でなくて、単なる失恋にも此の「破鏡の嘆」を用ゐて居る。
分類 女学生
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