深海サウンドチャネルとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 深海サウンドチャネルの意味・解説 

深海サウンドチャネル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/07 10:06 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
チャネル軸付近に音源を設定した場合のDSCの音線図

深海サウンドチャネル英語: deep sound channel, DSC)は、サウンドチャネル[注 1]のうち、音速が極小となる深度が水温躍層と深海等温層の境界によって形成されているもの。SOFARチャネル: SOFAR channel)とも称される[1][2]

音速プロファイル

ハワイ諸島北方の太平洋の音速プロファイル。DSCは深度750メートルに出現している。

海中での音速に影響を与える物理特性は、気微生物といった混入物を除けば、海水温塩濃度水圧という3つの基本量のみとされている。これを利用して、海中での音速は、深度を変数とする関数として定義でき、この音速-深度関数を音速プロファイルと称する。音速プロファイルは、下記のように、それぞれ異なる特性と成因をもついくつかの層に分けられる[3]

表面層(surface layer
海面直下に位置しているため、熱交換やの作用を受けやすく、音速は不安定である。で覆われたり風浪のある海域では、風や波により撹拌されて等温層を生じることがあり、これを混合層 (mixed layerと称する。
水温躍層thermal layer
音速の負の勾配(水温および音速が深度とともに減少)に特徴がある。季節による影響を受けやすい(場合によっては表層と一体化して消滅する)季節水温躍層と、わずかしか影響を受けない主水温躍層に分けられる。
深海等温層(deep isothermal layer
海水温は39 °F (4 °C)で一定であり、音速は圧力の影響を受けて、深度とともに増加する。

深海サウンドチャネル

上記のように、音速勾配(sound speed gradient)は主水温躍層では負の勾配、深海等温層では正の勾配をとることから、この境界で、音速が最小となる深度が存在する[3]。中緯度海域では深度4,000フィート (1,200 m)、北極海では海面付近に認められる。この音速極小点は、音線(音の伝播経路)に対して一種のレンズのように働くため、この層のなかで放射されたエネルギーはチャネル内に留まり、海面海底への反射による音響的損失を生じにくい。これを深海サウンドチャネルと称する。中程度の音響出力であっても、非常に長距離まで伝搬することができるという特性がある[1]

アメリカ海軍では、1940年代より海洋における音波伝搬の研究に着手し、音源の探知や位置極限に関する実験が行われた。深海サウンドチャネルは、この際にモーリス・ユーイング博士たちによって発見された。これを活用して、まず配備されたのがSOFAR(Sound Fixing and Ranging)システムであった。これは洋上で墜落した飛行士の捜索救難のためのシステムであり、着水した飛行士が爆発させた小さな爆弾 (Sofar bombの音をハイドロフォンで捉えて、三角測量によって飛行士を発見するというものであった[1]。そしてまもなく、このシステムは対潜戦に応用されるようになり、最終的にSOSUSとして結実することになる[4]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 中で深さとともに音速が変わってゆくとき、途中で音速の極小部をもつような海洋中の領域。この中で発せられたはチャネルの中に留まる傾向があり、伝搬損失が少ないため、遠くまで届きやすいという特性がある[1][2]

出典

  1. ^ a b c d Urick 2013, pp. 97-101.
  2. ^ a b 防衛庁 1978, p. 14.
  3. ^ a b Urick 2013, pp. 71-76.
  4. ^ 小林 2018.

参考文献

関連項目



このページでは「ウィキペディア」から深海サウンドチャネルを検索した結果を表示しています。
Weblioに収録されているすべての辞書から深海サウンドチャネルを検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
 全ての辞書から深海サウンドチャネル を検索

英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「深海サウンドチャネル」の関連用語

深海サウンドチャネルのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



深海サウンドチャネルのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの深海サウンドチャネル (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS